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リヴェンジェンス・バレット

作者: 猫藤涼水

小説ではなく台本です。

 『リヴェンジェンス・バレット』



●登場人物

○淡島玲香(17)

 暗殺者。

○川崎洋一(22)

 暗殺者。



  洋一の足音。ガチャリとドアが開く。

  分解された銃を弄る玲香。


洋一「まだそんな銃使ってんのか」

玲香「お兄ちゃんの形見だから」

洋一「だからってガバとか時代錯誤にも程があんだろ。浩輔は弾切れで死んだんだぞ」

玲香「関係ない」

洋一「銭形警部じゃねえんだからさあ」

玲香「メタルフレームでもシングルカラムでもハンマーが邪魔でも関係ない。お兄ちゃんの銃だから私が使う」

洋一「そうかよ」


  コンビニ袋からガサガサと品物を取り出す洋一。座る洋一。


洋一「飯買ってきた」

玲香「辛いラーメン」

洋一「買ってきた」

玲香「ん」

洋一「学校は?」

玲香「JKとかやってらんない」

洋一「まあ俺みたいな殺し屋がとやかくは言えねえわな」

玲香「血の匂いする」

洋一「いや返り血浴びてねえから」

玲香「誰殺したの?」

洋一「ロリコン。被害者の父親から依頼された」

玲香「何発浴びせた?」

洋一「3発くらいじゃね」

玲香「足りない」

洋一「殺意たっか」

玲香「現実の幼女に手を出すゴミでしょ? M2で挽き肉にしても足りないじゃん」

洋一「ミニガンでもいいかもな」

玲香「あれ耳痛くなるから嫌い」

洋一「撃ったことねえだろ」

玲香「撃たなくてもわかる」

洋一「まあ聴覚障害出るらしいしな」

玲香「だからミニガンは嫌」

洋一「……その理屈で言うならM2も無理じゃね? .50BMGだぞ」

玲香「……あ、そっか」

洋一「つか腹減った。レンジ借りるぞ」

玲香「ん」


  コンビニ袋から弁当を取り出す洋一。立ち上がり、足音。レンジの開閉音とピッピッと操作する音。


玲香「お湯湧かして」

洋一「ああ」


  電子ケトルに水を注ぐ音。


玲香「仕事持ってきた?」

洋一「いや、今日は仕事じゃない」

玲香「……リーパーの情報?」

洋一「ああ」

玲香「あいつはどこにいるの?」


  足音。座る洋一。バッグをガサゴソと漁る。


洋一「30時間前、渋谷でまた殺し屋を殺してた」


  バッグから取り出した資料を机に置く洋一。


玲香「写真見せて」

洋一「ん」

玲香「……この場所知ってる」

洋一「リーパーはミスったんだ。拠点に近い場所で目立つ殺しをやった」

玲香「じゃあ……!」

洋一「潜伏してんのは渋谷だ。情報屋の話じゃ簡単に割り出せたらしい」

玲香「罠の可能性は?」

洋一「なくはないんじゃね?」

玲香「…………」

洋一「『今すぐ行く!』とかならない辺り冷静だよなお前」

玲香「こいつは……リーパーはお兄ちゃんの仇。確実に殺したいから」

洋一「浩輔は弾切れでこいつに負けた」

玲香「だから何?」

洋一「確実に殺したいなら万全を期せよ。なんでここは冷静になれねえんだ」

玲香「お兄ちゃんの仇はお兄ちゃんの銃で討つ」

洋一「そういうワケわかんねえこだわりが浩輔を殺したんだよ」

玲香「装弾数の話ならもういらない。そもそもリーパーが使ってるのはライノ。ガバメントの方が装弾数多い」

洋一「それ言われると確かにそうなんだけどさ」


  レンジのチンの音。ケトルの湧く音。


洋一「まあ飯食ってから話すか」


  間。


玲香「ごちそうさま」

洋一「ん」

玲香「……お兄ちゃんの」

洋一「ん?」

玲香「お兄ちゃんを殺したこだわりって何?」

洋一「『プラスチックの銃は軽々しくて命を預けられない。9mmも軽すぎる』だとさ」

玲香「お兄ちゃん歳いくつ……?」

洋一「享年21歳」

玲香「知らないわけないでしょ。言ってることが年代に合わないって話」

洋一「お前今までガバメントに違和感持ってなかったのかよ」

玲香「お兄ちゃんの銃だし」

洋一「いやごめんわからん」

玲香「そっか」

洋一「リーパーと戦った時、もし浩輔が他の銃を使ってたらって考えてみ」

玲香「例えば?」

洋一「これとか」


  銃を取り出しテーブルに置く洋一。


玲香「FN HiPer」

洋一「そうだ。9x19mm。15+1発。ストライカー方式。当然ポリマーフレームでダブルカラム。バレルは100mmで重量は730gだ」

玲香「これなら勝てたって言いたいの? 武器で勝敗が決まるとは限らない」

洋一「拳銃での撃ち合いは経験あんだろ。ガバがどんだけの頻度でリロードしなきゃいけないかもわかるだろ」

玲香「この銃しか知らないから多いのか少ないのかわかんない」

洋一「だとしても想像できるわ。装弾数2倍だぞ。算数くらいできんだろお前」

玲香「……HiPerならリロードは半分で済む」

洋一「そうだよ。そんで一度に持てる弾薬の数もほぼ倍だろ」

玲香「……それはそう」

洋一「浩輔はリーパーと長期戦になって残弾数に不安を感じた。撃ち渋った浩輔の火力は当然落ちる。その隙を突かれてリーパーに攻められた。結果リーパーの目の前でエマがかかった浩輔はリロードが間に合わず殺されたんだ」

玲香「…………」

洋一「HiPerなりM&Pなりグロックなりを使ってりゃ結果は変わってただろ。こだわりに殺された兄貴と同じ轍を踏むのか?」

玲香「…………」

洋一「玲香」

玲香「…………」


  洋一のため息。

  間。


玲香「お兄ちゃんの銃で仇を討てば、お兄ちゃんが仇を討ったことになる」

洋一「はあ?」

玲香「リーパーを殺すのはお兄ちゃん。お兄ちゃんの方が強い」

洋一「だからそういうこだわりがさあ……いやまあわからんでもないけど」

玲香「でも……ううううう……!」

洋一「あ、でもまあ葛藤するところまでは持ってけたんね」

玲香「悩む……」

洋一「悩め悩め。……この銃は置いてく。明日リーパー殺すから22時にいつものセーフハウスに集合な。ガバでもHiPerでも好きな方持って来い」

玲香「ううううう……」


  洋一が立ち上がり、足音。ドアの開く音。


洋一「んじゃ明日な」


  ドアの閉まる音。


玲香「ううううう……お兄ちゃぁぁん……」


  間。

  電車が通り過ぎる音。

  足音。


洋一「おう。お前遅刻な」

玲香「うん」

洋一「謝れやコラ」

玲香「ごめんち」

洋一「おけ。……んで、どっち持ってきた?」

玲香「ん」

洋一「……まあ、結局そっち持って来るだろうとは思ったけどさ」

玲香「んーん。これは御守り」

洋一「御守り」

玲香「お兄ちゃんに着いてきてもらっただけ。見ててもらうの」

洋一「ああ、そういう感じね」

玲香「だから使うのはこっち」

洋一「ん」

玲香「7発目がリーパーを殺さなくても、残りの8発がリーパーを殺す。お兄ちゃんの仇を確実に取るために、私はこの銃を使う」

洋一「それでいい。そろそろ死神には死んでもらわねえとな」

玲香「安らかに眠らせてあげる」

洋一「予備のマガジンは?」


  弾倉を取り出す玲香。


玲香「もらった分全部持ってきた」

洋一「よし、それじゃあ移動……いやよしじゃねえわ待って待って待って」

玲香「?」

洋一「いやお前それ何?」

玲香「何って?」

洋一「マガジンに入れてある弾」

玲香「R.I.P.弾」

洋一「R.I.P.弾」

玲香「R.I.P.弾」

洋一「なんでそんなバカ高い弾使ってんの?」

玲香「お兄ちゃんの仇を殺すなら普通の弾じゃダメな気がして」

洋一「……お前ら兄妹は必ず変なところに変なこだわりを入れなきゃいけない病気にかかってることはわかったわ」

玲香「rest in peace……安らかに眠れ」


〜fin〜

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