新月の海に人魚は沈む
おとぎ話のような詩です。
※自由詩、散文詩といえども、あまりに詩からかけ離れていたため、改稿しました。
そして改稿してみたら、わりとリズムのある作品になりました。
これは、どの部類に……?
ある夜 悪魔が人魚産む
人魚が唄うと 海が荒れ
人々 惑って 混乱し
いくつもの舟 沈んでく
それを人魚は 楽しげに
高みの見物 にやにやと
旅の途中で 教会に
どこからともなく 少女の声が
教会 裏手に 回り込む
虚ろな目をした 少女がひとり
山羊の数を 数えてた
小さな手 収まりきらない 手紙の束が
ひらりと落ちた 手紙の一枚
大きな鱗が 貼り付いて
思わず文字に 目をやると
おぞましいほど 呪いの塊
悪魔が次に狙うのは お前だという 言の葉が
少女はぽつりと つぶやいた
友人の舟が 襲われた
だから人魚に 石投げた
その日から
呪いの手紙が 届いたと
悪魔が次に狙うのは お前だという 言の葉が
司祭や大人に 相談は?
問いかけ 少女は首を振る
この手紙 外に出せば 燃え上がる
この手紙 読める場所は 教会裏のみ
少女は小さく つぶやいた
少女の手から 手紙を全て抜き取った
代わりに 石を握らせる
美しい 海の色のアクアマリン
古くから 舟を守ると言い伝え
次に人魚が 唄うとき
石に 唄声 聴かせなさい
少女はきょとんと 首傾げ
この石 言の葉 記憶する
それを 人魚に投げなさい
少女は 不思議な顔をする
しかし 素直にうなずいた
月のない夜 やってきた
人魚の唄声 遠くまで
彼方の海まで 響いてる
美しく 飾りたてる唄声と 光輝く人魚の肢体
魅了される者もいる
海荒らし 舟を沈める妖魔だと
知らずに人々 聞き惚れる
私は少女に 寄り添った
今だと合図し 投げさせる
当たった宝石 砕け散り 人魚の唄声溢れだす
それを人魚は 耳にする
自らの唄声 鼓膜に刺さり
がくりと岩に 突っ伏した
そのまま海に 落ちていく
女王のごとく君臨し 高笑いする岩場から
カラカラ ぱらぱら 小さな石と
砂利に鱗が擦れてく
人魚が落ちると 水の環が
海はふたたび 穏やかに
流れる風も 柔らかで
漁師は 喜び舞い踊り
舟を出そうと 駆けていく
村人に 笑顔が戻り 賛美歌聞こえ
少女も少し 笑えるように
優しい海が 好きだった
きっと また 海が好きになる
友人と 波打ち際で 楽しげに
明るい声を 出しながら
はしゃぐ姿が 目に浮かぶ
願わくば 二度と荒れない 海想う
傷付き 悲しむ 人はなし
さぁ これで 一段落だ
私も旅に 出るとしようか
お読みくださり、ありがとうございました。
作者は本来、神話や人魚、ローレライ、妖精などの存在は大好きです。
いつか人と共存できる物語が書いてみたい……