誓いの桜
春の陽ざしが降り注ぐ中、美しく咲く桜の木を見上げる。
先の大戦からもう、何十年も経つというのに私は、この季節になると毎年思い出してしまう。桜のように美しかった貴女のことを。
貴女は、私のことを恨んでいただろうか。国の命令とはいえ、貴女をおいて行ってしまったことを。守ることができなかったことを。
いや、いくら私が自分を責めたところで、貴女が帰ってくることはない。
とても皮肉なことだ。徴兵された私が生き、貴女が逝ってしまうなど。
叶うことはないが、もう一度貴女に会いたい。抱きしめたい。桜を見上げ願う。瞬間、強い風が吹き、花弁が舞まった。あの日と同じ、美しい桜吹雪。
「そんなにご自分のことを責めないで」
懐かしい声が聞こえ、途端に瞳から涙が溢れる。
「すまない、貴女は、この桜もとでずっと私のそばにいてくれたのだな」
私は、もう過去を悔いたり、自分を責めたりするのはやめよう。貴女が悲しんでいると知ったから。
残りの人生は、笑って過ごし笑顔で貴女に会うとこの思い出の桜に誓おう。
長年の後悔が消え、ゆっくりと足を踏み出し、桜の木を後にした。