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ラジオは繋げるのが仕事

作者: 天野建

 ゆり子の家には、テレビが1つしかない。

 家族は4人家族。両親と兄、そして自分。

 その為、テレビの観賞優先順位は底辺である。

 父、母、兄がいない時、誰かの機嫌がいい時だけ、ゆり子は好きなテレビ番組を見ることができる。


 そんなゆり子を不憫に思ったのか、母方の祖母がゆり子の誕生日にラジオを買ってくれた。

 ゆり子は大喜びだ。

 誰にも邪魔されず、自分の好きな時間に好きな番組を聞ける。

 子供向けのラジオ番組は少なかったけれど、それでもゆり子には嬉しかった。

 ラジオはゆり子にとって、一番の宝物になった。


 そんなゆり子だったが、ラジオに関して悩み事があった。

 いつもゆり子は、周りの邪魔にならないように、イヤフォンでラジオを聞いていた。

 使っているのは、ステレオタイプではなく、片耳にするモノラルのものだ。

 周りに人がいる時は、大丈夫なのだが、1人で楽しく聞いていると、イヤフォンをしていない方の耳に、いる筈のない人の声、物音が聞こえる事があるのだ。

 人の声は大概の場合、ぼそぼそと話すので、内容は聞き取れない事が多い。

 はっきりわかるのは、ラジオからの声ではない事。


 けれどたまに、


「ききききききき切れ‥‥‥切れえええええええ!!!!」


 や、


「かきかきかききかかきいいいいいい!」


 などと。

 いきなり耳元で叫ばれた時には、心臓がどきどきしてしまう。


 物音は、壁を叩いたり、何か弾ける軽い音だ。

 これについては「あ、びっくりした」程度などで話し声よりも害はない。

 とは言っても、どちらにしても驚くので、話し声や物音が聞こえた瞬間、ラジオからイヤフォンを外して音の出所を探すのだが、イヤフォンを外すと聞こえない。

 しかしまたイヤフォンをしてラジオを聞いていると音が鳴ったり、話かけられたりする。


 ゆり子は何とか解決できないかと、図書館に行ってラジオについて調べてみた。

 できれば、ラジオは一人でゆっくり聞きたかったからだ。

 図書館の閲覧室の端の椅子に座り、ラジオについて書かれた本を持ってきて読む。


「なるほど、ラジオの音声は電波に乗って遠いところから私のラジオに届くんだな」


 ゆり子は納得したと頷いた。

 大人の手のひらくらいの小さなラジオ。

 それがはっきりと声を伝えてくれるのだ。

 電波は繋げる力がきっと大きいに違いない。

 そして画像はなく音や声だけというのが、また不思議なものたちが乗りやすいのかもしれない。


「ラジオの電波が繋いじゃうのかあ」


 元々ゆり子本人も繋がりやすい。

 それに電波が一役買って、更に色々聞こえてしまうのかもしれない。


「これ以上、周波数が合ってきたらやだな」


 ラジオを聞く事で経験値が上がって。

 ラジオを聞いていなくても、人外の声や音が聞こえてきたら、面倒くさい。


「でもラジオは聞きたいよぉ」


 たまに聞こえてくる不気味な声や音を我慢すれば、たいていは楽しい歌やお話を届けてくれるのだ。


「むむ。悩むぅ」


 こんな事誰にも相談できない。

 信じてもらえない。


 ゆり子は本を返すと、図書館を出る。


「ああ! 心置きなくラジオを聞きたい!」


 ゆり子は空に向かって叫んだ。


ゆり子ちゃんは、マイペースです。

だからか、あまり怖くないかもです。

少しでも楽しんでもらえたらと思います。

そして気に入ったぞと思ってくださり、評価やブクマしてもらえたら、とても嬉しいです。

よろしくお願いします(*^-^*)

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