レイラとの出会い
「え……?」
目の前まで迫っていた犬はピタリと動かなくなり崩れ落ちていく。
よく見ると胴体が真っ二つになっている。
「キミ、大丈夫??!!」
真っ二つになったモノの横には小柄ではあるが整った顔の少女が立っていた。
見た目、高校生くらいだろうか。
「ん?? キミ、聞いてる?」
「あ、……あぁ、助かったよ。ありがとう」
一瞬、思考停止してしまったが仕方がない。
その少女はゲームで見るような変わった形の剣と服装をしている。
「ケガとかしてない? というか変な服だね!! こんなのじゃ戦えないでしょ?」
ケラケラと笑いながら話してくる。
「ケガはない。変な服なのはこっちのセリフだろ。それにこの生き物はなんだ? 犬なのか? 犬だとしてもでかすぎるだろ」
「……? もしかして頭打った?」
ものすごく心配した目で見られている。
「いや、いたって普通だ。頭も打ったりしていない」
「んー……まぁ、いいか!! この魔物はビックウルフだよ。ここらへんじゃよく見る魔物だね」
「ビックウルフ……? 魔物……?」
「うん! 森の中に魔物がいることは普通のことだよ!!」
「うん、色々追いつけないな……。じゃぁこれは狼なのか?」
「うーん、動物の狼とはまた別の生き物だよ。ちょっと待ってね」
そう言うと、少女は真っ二つになった狼に小刀を突き立て中を抉りだした。
「……うわ、グロ……」
「ほら、コレ!!」
少女は狼の中から宝石のようなものを取り出してきた。
「魔物にはこの魔石っていうものが入っているんだよ!!」
「魔石?」
「うん!! 普通の動物には入ってないんだよ」
「この魔石?……が入っている生き物が魔物ってことなのか……」
「そうだよ!!」
少女は嬉しそうにニコニコしながら話してくる。
話の内容はぶっとんでいるが。
「じゃぁ、ちなみに魔物と普通の動物はどうやって見分けるんだ?」
「見分け方はね、魔力があるかどうかだよ!!」
これは確かめるしかない。
「……もしかして、この世界って魔法が使えたりする?」
「もちろん!!」
薄々感じてはいたが、完全にファンタジーの世界に来たようだ。
「その……、魔法は誰でも使えるものなのか?」
「うん!! 見てて!! 火よ!!」
ブォンと剣を振ると、刀身が炎に包まれた。
「どう? ワタシ、剣に魔法をまとわせながら戦えるんだよ!!」
ものすごいドヤ顔になっている。
「いや、すごいな……。魔法なんて初めて見た」
「キミ……というか自己紹介まだだったね!! 私はレイラだよ!!」
「えっと、俺は土谷裕だ」
「ツチヤ……ユウ? 変な名前!! ユウでいい?」
「変とはなんだ、むしろ普通だろ……いや、ユウでいい。レイラでいいか?」
多分、レイラという名前から推測するとこの世界では俺の名前の方が変なのだろう。
「うん!! よろしくね!!」
「あぁ、よろしく」
「で、さっき言いかけてたことだけど、ユウは本当に魔法使ったことないの?」
「生まれてこの方一度もない」
「マジかぁ!! やっぱ重症だね!! でも多分、ユウは魔法使いだよ!!」
ちょっと引っかかるが気にしないでおこう。
「俺が魔法使い?」
「うん!! 絶対そう!! だって、魔力の量がかなり、いや、すんっっごい多いもん!! それに変な服だし」
変な服は余計だと思うが、両手を大きく広げながら興奮気味に話しくるせいでツッコめない。
「魔力の量って簡単にわかるものなのか?」
「もちろん、わかるよ!! どんなすごい魔法使いがいるのか確かめたくて飛んできたんだもん!!」
「あぁ、それで……」
「うんうん!! そしたら、まさか食べられちゃう寸前だったからビックリだよ」
「まぁ、それは助かった。ありがとう。それで、魔力の量はどうやってわかるんだ?」
「探知魔法っていうのがあるんだよ!! それで、魔物を探してるんだ!! みんなやってることだよ!!」
ピースサインに若干イラっとしてしまう。
「そうなのか……」
「ねぇねぇ!! なんか魔法使ってみてよ!!」
「いやいや、だから魔法使ったことないって言ったじゃないか」
「簡単だよ!!」