休憩することにした
「魔法の威力もすげーが、杖が壊れるなんて聞いたことねーぞ」
「持ち手以外炭になってんじゃん!!」
「おそらく杖の容量を超えてしまったんだろう……手慣れの剣士が質の悪い剣を使うと壊れてしまうのと同じように」
黒焦げの森より杖の方がみんな気になって仕方ないようだ。
ツッコミから一転して三人は黙り込んでしまった。
「……えっと、今お金の手持ちがないんだ。街でドラゴンを売ってからでもいいか?」
今すぐとかなるとレイラから借金するしかない……。
「別に返さなくていい。その杖を返してくれれば金は要らない」
てっきり捨てるものだと思ったが、何に使うんだ……。
「……ほぼ炭だかいいのか?」
「かまわない」
杖を返すとシリルはマジマジとそれを見て、袋の中に収納した。
「さっきの杖のほとんどが駆け出しの魔法使いが使うものなんだよ」
ゲームでいう最初に手に入る武器みたいなものか。
「多分、君が使える杖はこれから行く街にはないと思う」
それは困った。
レイラと杖を買って稼ぐ約束をしてしまっている。
「私が今使っているこの杖を貸してあげたいが、これも壊れてしまうかもしれない」
「それはさすがにこっちもやめておきたい……」
それこそ弁償とかなっては嫌だ。
こっちから願い下げである。
「というわけで次の街で杖は買えそうにない……すまない」
とりあえずレイラに謝っておこう。
「いいよいいよ!! もしかしたらユウが使えるのがあるかもしれないし!! 前向きに行こう!!」
すごくいい子だ。
何の根拠もないがなんだかありそうな気がしてきた。
「それにしてもこれじゃドラゴンも黒焦げになっちまうかもな」
そういえばドラゴンを切り分けるって話だったな。
「もう結構暗くなってしまったから、また明日考えよう」
「そうだな!! 色々びっくりして疲れちまったよ!!」
なんだか申し訳なくなってきたな。
「そっちのお二人さんは朝まで休んだらいい。見張りは俺たちがやっとくぜ」
「それはさすがに悪い……」
「いいっていいって。俺たちに任せときな。こんな、でけーの持って逃げたりしねーから」
まぁ、たしかにドラゴンを持って逃げるのは無理だろう。
「向こうがそう言ってるんだし、休もう!!」
レイラはそう言うと、俺の手を引っ張りテントに連れていく。
「お、おぃ……ホントにいいのか?」
「いいからいいから!! 行こう行こう!!」
そもそも一緒のテントっていいのか?
二人でギリギリなんだけどな……。
そう考えているうちにテントに押し込まれてしまった。
「よし!! ユウは寝て大丈夫だよ!!」
「レイラも寝るんじゃないのか?」
「ワタシは起きて見張っとくよ!!」
そういうことか。
さすがに初対面でそこまで信用しないよな。
「……じゃぁ当初の予定通り3時間交代でどうだ?」
「え!? ユウはいっぱい頑張ったから休んでいいんだよ!!」
俺に女性に徹夜を強いる趣味なんてない。
「いや、明日もあるだろ。お互い休憩は大事だ」
「んー、じゃぁよろしくね!!」
結構すんなり引いてくれたな。
レイラも本音は疲れているのだろう。
「とりあえず明日の作戦会議をしてから寝よう」
「そうだね!!」