宣戦布告
「全人類の皆様こんばんは。環凌です」
固定したスマートフォンに向かって話しかける。
配信はスマホから、PCでは自分の配信を確認している。画面の中の俺がいくらか遅れて挨拶をしている。
「さて、タイトルでお分かりかと思いますが、私、環凌は、全人類に対して宣戦を布告します。私に降伏しない国家、団体、地域、勢力は実力をもってこの世から滅んでもらいます」
地球を救った男が今度は全人類を相手に戦うと言う。我ながら酷いシナリオだ。でもワクワクする。俺はこのために力を使うと決めた。隕石阻止は準備運動、ここからが本番だ。
「手始めに日本を統治下に置きます。警察、自衛隊の皆様におかれましては無駄に命を散らさぬことをオススメ致します。私の“壁”は銃器もミサイルも細菌兵器も核も音響兵器も神の杖もあらゆる攻撃を無力化します。そして警察の一部はすでにご存知かと思いますが、壁はあらゆる空間的、物理的繋がりを無視して発生させることが出来ます。極端な話、私には地球を輪切りにすることすら可能です」
嘘でもハッタリでもない。試したことはまだないが、俺は自分の能力で何が出来るかを理解していた。
しかし、人類がそれを理解するには痛みが必要であろう。
だってどうせ信じないだろ?
想像力がゴミだろ? お前らは。
今、お前の命があるかどうかは俺の気持ち次第なんだぜ?
だから理解させてやる。痛みを教えてやる。
「さて、世界の首相なり王なり政府の代表の方は全面降伏を発表して下さい。全面降伏です。条件付などは一切認めません。ひれ伏しなさい。そうでない国は順次攻撃していきます。では、ごきげんよう」
PCのモニターは未だに俺の姿を映している。
よかった、BANはされなかったらしい。短い配信だからかもしれないが。
安堵して俺は配信を終了した。
さて、これから忙しくなる。
戦争とは外交手段だと誰かは言った。
なるほど、確かにそうだ。そういう意味で俺のやったこと、これから行うことは間違いなく戦争だろう。
しかし俺という個人に対して、戦争のような物量を運用する国はあまりないだろう。多くの国がスナイパー等の暗殺を試みるはずだ。そして徒労を知る。その後はどう動くだろうか?
大人になりはしたが、世界というものを深く知らない俺は予想することすら難しい。せいぜいが渡航を禁止してくるぐらいか。
いずれにしても楽しみで仕方ない。
勝つ事が最初から決まっているゲーム。
勝つ事が目的であればイージーすぎるが、その後の統治を考えて殺しすぎないようにしなければならない。大雑把ではなく緻密に殺すか。
いや見せしめのために一度ガツンといくか。
いずれにしてもまずは足場から。
愛すべき我が母国がどうなるか、これから世界の注目の的だな。