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異世界転移は信じません!  作者: 璃依
~本編~
5/18

5.何故私を誘ったんですか

   1


結局、クラウスが「ソファーで寝る」と言ってくれたので、セレナはありがたくベッドで寝ることにした。

あっという間に眠りに落ち、気がつくと朝の光が顔を照らしていた。


「ん・・・」


早く着替えて学校にいかないと───と思ってから、ここが自室でないことを思い出す。

ため息をつくのを堪えて起き上がると、声をかけられた。


「おはよう、セレナ」


笑顔で声をかけてくるのは、橙髪で日本人離れした顔立ちの少年。説明するまでもなくクラウスだが、この状況に違和感しかない。


「・・・おはよう」


昨夜と同じ、苔みたいな緑色のシチューを食べながら、ふと何が入っているのか気になって聞いてみる。


「苔とか肉とかだけど・・・」


───本当に苔が入っていた。

口内がなんかやたらモゾモゾする。セレナは聞かなければよかったと本気で後悔した。

食事のペースが目に見えて遅くなる。

・・・人間、知らなくていいことはあると、しみじみ思った。



   2


朝食を終えると、クラウスは森へ行くと言った。


「ついてくる?」


と聞かれ、迷った末にセレナは頷く。

クラウスは大きな籠を背負い、小屋を出た。

てくてく歩いていくと、突然クラウスが立ち止まり、声を出さないでと合図した。

セレナの位置からだと何も見えない。


「イグニス」


呟くと同時にクラウスのまわりに炎の矢が五本生み出される。

クラウスは手を持ち上げ、ある一点を指し───

炎の矢が物凄い勢いで発射された。

唖然として見ていると、クラウスは矢を撃った方向に走って行ってしまう。

慌てて追いかけると───


セレナは悲鳴を上げそうになった。

そこにあったのは、半透明でゲル状のもの。

色は黄土色っぽくて、端的に言って気持ち悪い。


「これは『スライム』っていう無生物。僕はこういう魔獣を狩って、それを売って生活してるんだ」


クラウスの言葉は、後半から頭に入ってこなかった。

スライムくらいは、いくらラノベと縁の無いセレナでも分かる。

ただ、ひとつだけ言わせてほしい。


「なんなの、この世界──────!」




その後も、クラウスは魔獣を狩り続けた。人の身長を超える巨大な兎と遭遇したときは、可愛いよりも怖いのほうが勝った。

硬直したセレナに構うことなく、


「スティーリア」


聞こえるか聞こえないかの音量で詠唱、氷柱を生成し、放つ。

断末魔の声が長く、高く響き、セレナは耳を塞いだ。


クラウスがナイフで兎の体を切り裂くのを見て、失神しなかった自分を誰か褒めてくれ。

───クラウスは何故私を誘ったのか。

分からない。分からないが。


・・・人間、知らなくていいことは沢山あると、改めて思った。

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