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異世界転移は信じません!  作者: 璃依
~本編~
4/18

4.お風呂、ないんですか

   1


クラウスはセレナと名乗った少女を眺めていた。

不思議な少女だ。奇妙な服は良い生地を使っているし、彼女の指は傷ひとつない。

身分の高い家の出なのだろうか。

でもそれにしたって、厠の使い方を知らないのはいくら何でもおかしい。

ただ───家の場所を聞いたときの表情が、印象に残っていた。

困ったような、懐かしさを堪えるような、寂しそうな表情。

あの表情を見たら、何も言えなくなってしまった。

無理に聞き出しはしない。いつか話してくれればいいと思うだけだ。

クラウスは食べ終わった器を重ね、立ち上がった。



   2


緑シチューで空腹を満たしたセレナは通学鞄を開け、持ち物を確認した。

国・数・理の三教科の教科書とノート。何の変哲もない筆入れ。タオルと体操着。あとは折りたたみ傘くらいか。

そういえば、お風呂はどうするのだろう。厠と同じで外にあるのだろうか。

クラウスに聞くと、


「お風呂・・・って?」


嫌な予感がした。


「お風呂は、湯船につかって・・・」


詳しい説明をすること約五分。クラウスはああ、と声を上げると、


「僕はそこの小川(・・)で体を洗ってるよ」


・・・気のせいだろうか。『小川』と聞こえたのだが。


「・・・もう、一回お願い」


「───?僕はそこの小川で体を洗ってるよ」


気のせいであって欲しかった。本当に。



   3


クラウスの住む小屋のまわりは木で囲まれている。森を切り開いてこの小屋を建てたそうだ。

小屋から出て森の中を少し歩くと、小川が見えてきた。

底が見えるくらいに透きとおった水。しゃがんで手を入れると───


「冷たっ!」


思いのほか冷たくて、これで洗うのかと愕然とした。

それに───


「来てみたはいいけど、ここで服脱ぐの・・・?」


木が生えているとはいえ、誰かやってきたらどうするのだ。

でも、やっぱり体は流したい。そこでセレナが考えた方法は───


一度小屋に戻り、制服の下に着ていた半袖短パンを抱えて再び小川に行く。

今着ている着物を上手く使い、下着を脱いで素肌の上に直接夏用体操着を着た。

・・・何も無いよりはマシだろう。


そろそろと川に足を入れる。冷たいことは冷たいが、慣れれば大丈夫そうだ。


水浴びを終えて、川から上がると途端に寒くなってきた。急いでタオルで水気をふき取り、着物に着替える。タオルを肩にかけ、セレナは濡れた体操着を持って歩き出した。


「あれ」


「ベッドって、ひとつしかなかったよね・・・」


まさに前途多難である。

セレナはこれからのことに頭を悩ませるのだった。

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