1.願い事は何ですか
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セレナは毎日、ノートに日記をつけている。
こちらにやってきたその日から、だ。
夜ベッドの上で日付を書いて、日中何があったかを正確に書き記す。あっという間にノートの空白部分はなくなってしまいそうだが、今はいつなのかを確認する意味でも役立っていた。
「七月七日、と・・・。あれ?」
数秒黙考し───
「今日七夕じゃない!」
と叫んで、毛布にくるまって寝ていたクラウスを叩き起こしたのだった。
2
目をこすりながら起き上がったクラウスに、七夕のなんたるかを説明する。話が終わる頃には、眠気はすっかり消えたようで、興味深そうに聞いていた。
「笹はないから、そのへんの木に・・・」
短冊がかかっているだけで、気分は味わえるだろう。
授業で使い、教科書に挟まっていたカラーのプリントを、作成した教師に心の中で謝りながらハサミで切る。クラウスが持ってきたひもを通して、短冊の下準備は終了だ。
クラウスにペンを手渡し、セレナは何もかかれていない面を上にして、願い事を書き始めた。
セレナは日本語で、クラウスはこの世界の言葉で願いを書く。
「クラウスは何て書いたの?」
「同時に言おうよ」
クラウスはほんの少し頬を赤くし、そう提案した。
せーの、という声に合わせて、
「「二人が死ぬまで一緒にいられますように」」
二人の声が一字一句違うことなく、揃った。
セレナもクラウスも驚き、笑う。
近くの木に短冊をかけ、二人は大きな石の上に腰掛けた。
木々の隙間から、星が見える。
星を眺めながら、二人は色々な話をして───
───いつしか、セレナとクラウスは互いに寄りかかって眠っていた。




