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異世界転移は信じません!  作者: 璃依
~本編~
11/18

11.それってどういうことですか

   1


「今日は、街に行ってくるよ。セレナもくる?」


朝食を食べながら、クラウスが聞いてくる。


「行きたいけど・・・何か、用事でもあるの?」


「魔獣の毛皮とかを売りに行くんだ」


セレナは器の中の肉らしきかたまりをすくい、口に運ぶ。癖がなく、美味しい。


「これ、何の肉?」


クラウスは微妙な表情になり、


「・・・言ってもいいの?」


嫌な予感がして、鶏肉に似た味の物体を───


「ん?」


いつだったか、聞いたことがある。

───兎の肉は、鶏肉に似ていると。


「クラウス。・・・分かったから、言わなくていいよ」


「そ、そう」


先日の巨大生物解体ショーが蘇りそうになり、セレナは思考を止めた。


「と、とにかく、街には私も行くから!」


慌てて言うと、クラウスは唇をゆるめ、笑った。



   2


森を出て、しばらく歩くと街の入り口が見えてきた。

森から最も近い街、『プリエール』。

プリエールに来るのは今回が初めてだ。

商店が建ち並ぶ通りを、クラウスはすたすたと歩いていく。気のせいか、表情は強張っているように見えた。


「にゃ」


セレナの肩には小さな黒猫───ノワールがのっている。落ちないようにそっと手でおさえ、セレナは改めてあたりを見回す。


一言で言えば───中世ヨーロッパの街並みに近い。

厠とか言うので昔の日本みたいな光景を想像していたのだが・・・不思議だ。


クラウスはある店の前で立ち止まると、中に入っていった。

この世界の不思議なところは、外観だけではない。

文字が、読めないのだ。

言葉は普通に通じるのに、文字だけはだめだ。

クラウスに一から教えてもらっているのだが、まだまだ覚えられない。


「メ・・・リ?ル?」


店の名前を読もうとするが、最初の一文字しか分からなかった。


クラウスを追いかけて入ると、中には初老の男性と、店主らしき人がいた。


「いらっしゃ・・・クラウスか。今日は連れがいるのか?」


「・・・その呼び方、やめてくれないかな。僕は馴れ馴れしくするつもりはない」


「相変わらず、だな。・・・何を持ってきたんだ?」


商談を始めたクラウスから意識をそらし、店内を見ていると、最初にいた客から声をかけられた。


「嬢ちゃんは初めてか?この店は」


「そうです。・・・ええと、あなたは・・・」


「俺はハイレンだ。すぐそこで治療院を開いている。今日は、薬の材料を買うために来たのさ」


「薬の材料?」


聞き返すと、ハイレンは丁寧に説明してくれた。


「魔獣の中には核があってな。それがよく効くんだ」


「へえ・・・」


と頷いてから、自分が名乗っていなかったことに気付く。


「申し遅れました。私はセレナといいます。肩にいるのはノワール」


「礼儀正しい嬢ちゃんだな。───クラウスとは、仲がいいのか?」


「ええ、まあ・・・彼には、小屋に住まわせてもらってるんです」


ハイレンは驚きの表情で、しばし硬直した。その反応の理由が分からず、セレナは首をかしげる。


「・・・嬢ちゃんは、何であいつが一人森に住んでいるか知ってるか?」


「いいえ、知らないです」


ハイレンは目を瞑り、そうか、と短く呟いた。


「クラウスはな、人と関わりたくないんだよ。人と関係を持つことに、恐怖すら覚えてる」


「人と、関わりたくない・・・?それって、どういう・・・?」


「おっと、これ以上は本人から聞いたほうがいい。・・・俺が話すべきじゃなかった」


どこからともなく紙とペンを取り出し、さらさらと地図をかいてセレナに渡し、


「何かあったらここに来てくれれば、できることはする」


それから、クラウス達の方を向き、


「メルカートル、今日は帰る。また後日だ」


メルカートルという名前らしき店主にそう呼びかけ、ハイレンは帰っていった。


クラウスを待つ間も、ハイレンの言葉が耳から離れなかった。

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