表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移は信じません!  作者: 璃依
~本編~
10/18

10.もう少し、このままでいてくれませんか



『クラウスには、契約した魔獣はいないの?』


声が響き、まどろみの中から意識が帰還する。

実際に声がしたわけではない。耳をすますと、規則正しいセレナの寝息が聞こえてくる。

息をはき、天井を見上げた。


何故あの日、クラウスはセレナをつれて帰ってきたのだろうか。

人と関わらない、関わりたくないと、そう思って森の奥で暮らしているのに。

もう、置いて逝かれる哀しみを味わいたくないのに。


「───っ」


全身を、よくわからない感情が突き抜けた。

感情の波はすぐに去り、あとに残るのは虚無感のみ。クラウスは片手を持ち上げ、顔を覆った。


不意に、顔を覆っていない方の手が優しく包み込まれる。


「セレナ・・・?」


───眠っていたはずのセレナが、手を握ってくれていた。

暗闇の中で、二人の目が合う。


「辛そう、だったから」


セレナの瞳には、暗くても分かるくらいにはっきりと憂いが浮かんでいた。

昼間の自分は、寂しさを誤魔化したようで全然誤魔化しきれてなかったのだろう。


「・・・ごめん」


手を握られるなど、いつぶりだろう。長いこと、されてなかった気がする。

虚無が、薄れるのが分かった。

手が離れようとするのを引き留めると、セレナが驚いたように目を見開いた。


「・・・もう少し、このままでいて」


セレナの腕から力が抜けるのを感じ、目をとじる。

安心感と温もりに包まれ、いつしかクラウスは眠っていた。



翌日の朝、クラウスが目を覚ますと床にぺたりと座り、ソファーに頭をのせて眠るセレナの姿がかたわらにあった。

昨夜のことを思いだし、連続で魔法制御を失敗するクラウスを、セレナは僅かに頬を染め、可笑しそうに眺めているのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ