6月3週 水曜日
村34 町35
ダ32 討伐1 フ8
人1 犯1
魔100 中12 上1
剣100 剣中12 剣上1
回復34
治療39
採取77
草16 花5 実33
料理7
石工3
木工11
漁1
歌3
体55
女7
100の問題があった時。
物語の主人公なら、たった一つの行動で、その100の問題を全て解決するだろう。以降、同様の問題は起こらない。物語の主人公は前に進むのだから。
しかし、人生の主人公は違う。一つの行動では、1つの問題しか解決できない。
そして、せっかく解決した問題ですら、少し時間が経てば復活し、さらに100だった問題は110に増えている。
だが、もし人生の主人公であっても天才ならば、いくつ行動すれば良いのかは分からないが、100の問題の全てを解決できるだろう。
例え表面に見えているのが10しかなくても、少し時間が経てば復活するような問題でも、何かを解決しようと動く間に新たに発生しても、必ず全てを解決する。
……。
俺は、天才じゃないのだ。
散々言って、そのせいで世界まで移動して、でも俺は分かっていなかった。自分が天才じゃないということを、キッチリ理解できていなかった。
何一つ。本当に何一つ。
「ああ、確かだ。デオグラさんなあ、惜しい人を亡くしたよ」
「あの人、息子の墓参りよくするだろ? そこにさ、ゴブリンが巣を作ってたんだ。通りかかった商人が見つけたんだが……死んでから2週間近く経ってたってさ」
「運の悪いことによ、馬車が壊れてたんだ。車軸がな。古い馬車だったし、あそこは道も悪いから……それで逃げられなかったんだろうなあ。それでもゴブリンがいなけりゃ助かったんだろうが」
「ゴブリンの発見例、増えてたんだ、お前も見なかったか? 巣があることが分かってたら、防げたのに。残念だ」
「エト、お前、デオグラさんと親しかったのか?」
「え? あ……、俺は……。1回ご飯に連れてって貰って……、だから……、そんなに、親しいってほどでは、なかったかもしれないです……」
「そっか。まあ、行商人が死ぬのも、ちょくちょくあることだ」
「ゴブリンもこのまま増えたら、きっとゴブリンを食ってる魔物も増えるだろうから、いつか減るだろうし、馬車で移動する分には問題ねえよ」
「実際、あの人も随分歳だったし、あんなとこに行くくらいだから、覚悟もしてただろうからな」
予兆はあった。
ゴブリンが増えているという話も聞いていた。
馬車がボロボロなのに悪路を走り続け、壊れそうだということも知っていた。
しかし、俺は自分のことばかりで、その問題を一つも気にかけなかった。
物語の主人公ならきっと、ゴブリンの巣に近づき過ぎて、巣の魔物達と戦いになったり、同乗している時に馬車が壊れたりするんだろう。
でも、主人公だからきっと乗り越えられる。そしてゴブリンはいなくなり、馬車は新しくなり、お爺さんは死ななかった。
天才ならきっと、いつかある問題に勘付いただろう。そして対策をうてたはずだ。
それなら間違いなくお爺さんは生きていた。生きて、一緒にご飯を食べることができていた。
けれども俺は違うから。
なんにも気づけなかった。死んだことにすら、ずっと気づかなかった。
ゴブリンは弱いんだから、気づいたらなんとかできてたんだ。
馬車の修理だって、俺に技術はないけど金はあるんだ。修理なんて簡単に出せる。新しい馬車だって買えた。気づいたらなんとかできてたんだ。
でも、なんにも気づけなかった。俺の才能は、いつだって大事なものに届かない。
届かせるための努力すら許さない。
「ひどいよなあ、こんなのってないよなあ」
俺は部屋で、1人呟いた。
床に座って、ベットを背もたれに天井を見上げる。
いつの間にかお尻はずるずる動いて、後頭部はベットについていた。ギシっと木が軋む音がなった。
「ああでも、ケビンさんの時もそんな感じだったなあ。課金のことをもっと早く思い出してたら、周りにお金借りたりして助かったかもしれないのに、全然思い出せなかった。俺はいつだってそうだ、全然、全然だよ」
天井に、顔のようにみえる木目があったので、3つの点が人の顔に見える現象の名前を思いだそうと考えた。けれども思い出せはしない。
「凡人に生まれられたら良かった」俺は呟く。
きっと救う手立てもなかったから、諦めがつくんだろう。もしかしたらお爺さんが死んだことにも気づかないかもしれない。
騎士の知り合いを作れなくて、情報収集すらできないから。
「いっそ天才に生まれられたら良かった」俺は呟く。
そうしたら、どんな問題があっても助けられた。
まあ、どちらも土台無理な話だ。
もう俺は俺に生まれてしまっている。奇跡が起こって生まれ変われるのだとしても、既に俺は、もう一生分の奇跡を使ってしまっている。使って、課金の力を手に入れてしまった。こんな、肝心な時に役に立たない課金を。
「人を生き返らせる力くらいあれば良いのに」
せめて、せめて、何か、頑張りたかった。
正しい方向に頑張れてさえいたら、後悔だけはしなくて済むのに。
俺は辺りが暗くなっても眠ることはなく、ずっと、ただずっと、そこに座っていた。
お読み頂きありがとうございます。
また誤字脱字の報告ありがとうございます。ブックマーク等同様に、個別に返せませんので、ここに書かせて頂きます。
これからも頑張ります。




