表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/144

6月3週 水曜日

村34 町35

ダ32 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中12 上1

剣100 剣中12 剣上1

回復34

治療39

採取77

草16 花5 実33

料理7

石工3

木工11

漁1

歌3

体55

女7

 100の問題があった時。

 物語の主人公なら、たった一つの行動で、その100の問題を全て解決するだろう。以降、同様の問題は起こらない。物語の主人公は前に進むのだから。


 しかし、人生の主人公は違う。一つの行動では、1つの問題しか解決できない。

 そして、せっかく解決した問題ですら、少し時間が経てば復活し、さらに100だった問題は110に増えている。


 だが、もし人生の主人公であっても天才ならば、いくつ行動すれば良いのかは分からないが、100の問題の全てを解決できるだろう。

 例え表面に見えているのが10しかなくても、少し時間が経てば復活するような問題でも、何かを解決しようと動く間に新たに発生しても、必ず全てを解決する。


 ……。


 俺は、天才じゃないのだ。


 散々言って、そのせいで世界まで移動して、でも俺は分かっていなかった。自分が天才じゃないということを、キッチリ理解できていなかった。


 何一つ。本当に何一つ。


「ああ、確かだ。デオグラさんなあ、惜しい人を亡くしたよ」

「あの人、息子の墓参りよくするだろ? そこにさ、ゴブリンが巣を作ってたんだ。通りかかった商人が見つけたんだが……死んでから2週間近く経ってたってさ」

「運の悪いことによ、馬車が壊れてたんだ。車軸がな。古い馬車だったし、あそこは道も悪いから……それで逃げられなかったんだろうなあ。それでもゴブリンがいなけりゃ助かったんだろうが」

「ゴブリンの発見例、増えてたんだ、お前も見なかったか? 巣があることが分かってたら、防げたのに。残念だ」

「エト、お前、デオグラさんと親しかったのか?」


「え? あ……、俺は……。1回ご飯に連れてって貰って……、だから……、そんなに、親しいってほどでは、なかったかもしれないです……」


「そっか。まあ、行商人が死ぬのも、ちょくちょくあることだ」

「ゴブリンもこのまま増えたら、きっとゴブリンを食ってる魔物も増えるだろうから、いつか減るだろうし、馬車で移動する分には問題ねえよ」

「実際、あの人も随分歳だったし、あんなとこに行くくらいだから、覚悟もしてただろうからな」


 予兆はあった。

 ゴブリンが増えているという話も聞いていた。

 馬車がボロボロなのに悪路を走り続け、壊れそうだということも知っていた。

 しかし、俺は自分のことばかりで、その問題を一つも気にかけなかった。


 物語の主人公ならきっと、ゴブリンの巣に近づき過ぎて、巣の魔物達と戦いになったり、同乗している時に馬車が壊れたりするんだろう。

 でも、主人公だからきっと乗り越えられる。そしてゴブリンはいなくなり、馬車は新しくなり、お爺さんは死ななかった。


 天才ならきっと、いつかある問題に勘付いただろう。そして対策をうてたはずだ。

 それなら間違いなくお爺さんは生きていた。生きて、一緒にご飯を食べることができていた。


 けれども俺は違うから。

 なんにも気づけなかった。死んだことにすら、ずっと気づかなかった。


 ゴブリンは弱いんだから、気づいたらなんとかできてたんだ。

 馬車の修理だって、俺に技術はないけど金はあるんだ。修理なんて簡単に出せる。新しい馬車だって買えた。気づいたらなんとかできてたんだ。

 でも、なんにも気づけなかった。俺の才能は、いつだって大事なものに届かない。

 届かせるための努力すら許さない。


「ひどいよなあ、こんなのってないよなあ」

 俺は部屋で、1人呟いた。


 床に座って、ベットを背もたれに天井を見上げる。

 いつの間にかお尻はずるずる動いて、後頭部はベットについていた。ギシっと木が軋む音がなった。


「ああでも、ケビンさんの時もそんな感じだったなあ。課金のことをもっと早く思い出してたら、周りにお金借りたりして助かったかもしれないのに、全然思い出せなかった。俺はいつだってそうだ、全然、全然だよ」

 天井に、顔のようにみえる木目があったので、3つの点が人の顔に見える現象の名前を思いだそうと考えた。けれども思い出せはしない。


「凡人に生まれられたら良かった」俺は呟く。

 きっと救う手立てもなかったから、諦めがつくんだろう。もしかしたらお爺さんが死んだことにも気づかないかもしれない。

 騎士の知り合いを作れなくて、情報収集すらできないから。


「いっそ天才に生まれられたら良かった」俺は呟く。

 そうしたら、どんな問題があっても助けられた。


 まあ、どちらも土台無理な話だ。

 もう俺は俺に生まれてしまっている。奇跡が起こって生まれ変われるのだとしても、既に俺は、もう一生分の奇跡を使ってしまっている。使って、課金の力を手に入れてしまった。こんな、肝心な時に役に立たない課金を。

「人を生き返らせる力くらいあれば良いのに」


 せめて、せめて、何か、頑張りたかった。

 正しい方向に頑張れてさえいたら、後悔だけはしなくて済むのに。


 俺は辺りが暗くなっても眠ることはなく、ずっと、ただずっと、そこに座っていた。

お読み頂きありがとうございます。

また誤字脱字の報告ありがとうございます。ブックマーク等同様に、個別に返せませんので、ここに書かせて頂きます。


これからも頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ