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6月2週 休日

村34 町32

ダ30 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中12 上1

剣100 剣中12 剣上1

回復28

治療38

採取68

草15 花5 実33

料理7

石工2

木工10

漁1

歌2

体55

女7

 奴隷とは、物として扱われる人間のこと。

 売買の対象であり、そして購入した主人に絶対服従の存在。


 主に労働のため、奴隷は用いられる。


 最低限の生活を与えるだけで良いため、単なる雇用よりも随分安く使えるのだ。

 しかも、どれだけきついことをさせようとも、文句を言わない。例え、仕事中に死んだとしても。


 なんて恐ろしい。


 まあ、それは一部の極端な例で、基本的に奴隷は皆、普通に暮らしている。

 体のいい労働力扱いではあるが、鞭で打たれるようなことはなく、奴隷ではない者よりも多少辛い仕事を安月給で行っているくらいだ。


 科学が発展しておらず、たくさんの人口を保つことが難しい異世界では、それを補うためのマンパワーがどうしても必要になる。

 奴隷は、そのための存在。したがって、生活に必要な存在であり、世の中に馴染んでおり、そしてどこにでもいるのだ。


 朝方、いつもよりは遅いが、それなりに早い時間帯。

 俺は部屋を出て、あくびをしながら階段を下りていった。


「おはようございます」

「おーおはようさん」


 丁度ロビーにはこの貸家、アパートのような貸家の管理人がいたため、挨拶をかわす。

 管理人はいつも通り、何かのボードゲームを前にうんうん唸りながら、おざなりに挨拶を返してきた。


「水瓶出しといたんで、よろしくお願いします」

「あいよー。……ん? なんて言った?」

 空返事になるほど熱中している様子。あれはそんなに楽しいのか。1回やってみたが、そんなに面白くなかったような。


「水です水」

「ああ、あいよ。おーい、水貰ってこーい」

 俺が改めて言い直すと、管理人はそう呼びかけた。自分はボードゲームを続け、仕事は人任せにするらしい。なんてやつだ。


 まあ、もし暇でも、水を貰いに行くことはないんだろうが。


「あ、はい。今すぐ行きます!」

 管理人に呼ばれ、ロビーの隅に立っていた少女が元気良く返事をした。年の頃は、小学校低学年くらいだろうか。


『ペシナ

  ジョブ:町民

  HP:100 MP:100

  ATK:1 DEF:5

  CO:奴隷』


 少女は奴隷だ。足に不可思議な輪を身に付けている。

 宿屋やこういった貸家、アパートで、水を貰ってきたり掃除をしたりするのは、総じて奴隷である。奴隷じゃない人は、受付だとか金の管理だとかそういった仕事をする。


「手伝おうか?」

「え? あ、だ、大丈夫です! 1人でできます!」

 声をかけると、少女は慌てたように走って行ってしまった。


 可愛いなあ、と暖かい目で見る俺と管理人。……俺が可愛いと言うのは大丈夫だが、こいつが可愛いと言うと、犯罪の臭いがする。悪いけれど。

 それから管理人と少し雑談していると、少女が戻ってきたのでチップの銅貨をあげ、俺はアパートの外に出た。


「よーし、今日は風呂に入るぞー」

 そんな目的のために。


 まずは水汲み。

「すみませーん、水汲んで下さい」

「はい、分かりました」


 井戸水は、勝手に汲んではいけない。

 水を汲む仕事をしている人に、必ずやってもらう必要がある。とはいえ水量を管理する目的もなさそうなので、なんで勝手に汲んだらダメなのかは分からない。その際チップは代金としてかかるものの、それ以外にお金はかからないから、別に水が有料というわけではないのだろうし。

 理由をそこらの人に聞くと、十人十色の解答をしてくるため、謎は謎のままだ。


 ともあれ、風呂に大量の水を必要とする俺は、水をアイテムボックスに移し変える作業を隠れて何度もしなければならないため、こうやって井戸水を汲む人に何度も何度も汲ませなければならない。

「すみません、3回目ですけど、また零しちゃって……」

「……え? ……は、はい……」

 可哀相!


『トローレス

  ジョブ:町民

  HP:100 MP:100

  ATK:1 DEF:5

  CO:奴隷』


 トローレスさんごめんなさい。まあ、チップはあげてるので勘弁して欲しい。


 こういった、井戸の傍で水を汲み上げる仕事も、基本的には奴隷の仕事。

 必要な筋力的な問題で、大人の男がしていることが多い。


 そして俺は、水桶に汲んだこの最後の水を、アイテムボックスに移し変える作業に入る。

 ヒューマンが水をアイテムボックスに入れることはできないため、この作業が見つかれば、大変なことになる。きっと砂山が崩れるが如く、俺の人生は崩壊するだろう。


 貴様は何者だ。

 水がアイテムボックスに入るだと。

 さては貴様ヒューマンではないな?

 いや、ヒューマンか、ならばどうして。

 なるほどヒューマンなのにアイテムボックスにドロップアイテム以外を入れられるんだな。

 ならそういうことができるようになる何かがあるんだな?

 なになに課金?

 ようし、我のために一生この牢獄で課金しておれ!


 こんな風に。

 恐ろしい。想像しただけで体が震えちまうぜ。

 ゆえに見つかってはいけない。しかし、見つからないのも中々難しい。


 町は騎士が常に警邏しているし、そういった警備の人以外にも、町中を掃除する人がいるのだ。

 路地裏に入って、アイテムボックスを開こうとしたところで、路地裏を掃除しに来た人と、バッチリ目が合った。


「……あ、どもっす」

「? こんな路地裏でなにを?」

「い、いや、なんでも……」

「……そ、そうですか……、すみません」


「こっちこそ、なんかすみません」

「いえいえ、全然。へへへ」

「へへへ」


『ズサ

  ジョブ:町民

  HP:100 MP:100

  ATK:1 DEF:5

  CO:奴隷』


 個人宅以外の清掃をしている人も、ほとんどが奴隷だ。


 奴隷達は別段、特別にきつい仕事や汚い仕事をしているわけでもない。

 そりゃあ採掘場で働いていたり、冒険者として命をかけている奴隷もいるだろう。でもそんなのは、奴隷じゃない人でもやっている。


 ヘデラル坑道町では奴隷じゃない人も大勢坑道に入っていたし、俺も奴隷じゃないのに冒険者として月1ペースで死にかけているし。

 より危ない場所へ行くことや、もしもの際に見捨てられる確率が高いのは奴隷かもしれない。けれどまあ、仕事内容が特別にきついとかではない。


 奴隷が専門でする仕事は、言うなれば、したところで金にならない仕事、ということだろうか。製品を売るわけではない、サービスの部分。宿での掃除、水汲み、町の掃除。

 そういえば風俗では見かけたことはなかったが。ともあれ、奴隷はそこら中にいて、そして皆普通に仕事をしている。


 彼等はそれぞれ自らの主人、アパートの管理人の、水を管理する役場か企業の、町か区画の長の、奴隷、所有物。人ではなく、町の人口にも反映されていない。

 けれども悲壮感が漂っているようには見えない。

 むしろ笑顔を見せて働いているくらいだ。

 ……まあ、今日見かけた笑顔は、路地裏であった男のへへへという笑い1つだが。


 そのため、俺がもし奴隷を買うとしても、なにか悲壮なことを思う必要はない。

 異世界では普通のことだ。


 もしも地球に帰れるなら、ちょっとは躊躇するかもしれない。

 しかしまあ、無理だろう。こんな科学が発展してない世界で、異世界航行なんて方法を発明できるわけがない。そんな人がもしいたら、地球でも天才と呼ばれているし、脳ある鷹は爪を隠すと言うが、それでも隠しきれない爪を持っていたはずだ。俺にはない。

 だから、異世界の理で暮らす。奴隷は普通、当たり前のもの。当たり前のもの。俺は自分に言い聞かせた。


 水をアイテムボックスに収納し終え、俺は一旦部屋に戻る。

 すると少女が、部屋の前に水瓶を置いておいてくれたため、それを持って入り、部屋の中に水のたっぷり入った水瓶と空の水桶を置いた。

 ついでに昼食にしようと、先日購入しておいた保存食をいくつかたいらげる。それからは、武器や防具を磨いた。


 そして夕方より少し前。

 暗くなるまで、まだ時間のある頃、俺は町の外に出て、アイテムボックスからお風呂セットを取り出した。


「熱い、熱い、底が熱い。あと煙で目が、目があ、目がああぁ」

 リラックスできたかどうかは、ちょっと分からない。まあ、体は綺麗になった。


 帰り道、丁度宿についた頃、空が赤く染まっていた。

 俺は宿屋に戻るまで引かなかった背中の汗を冷ますように、窓の蓋を外して空を眺める。


 空の色は、赤から徐々に紫、そして黒へ。異世界の夜に光源はほとんどない。だから、晴れた日の夜は、空に満点の星空が広がる。


「奴隷かあ。……夢があるなあ」

 しかし俺はそんな満点の星空に似合わない不埒なことを考えた。

「……可愛い子が、いますように」


 そう呟くと、満点の星空の中に、キラリと光る星が現れた。それはスーッと流れ落ちていく。

 流れ星だ。


「な、流れ星だーっ、落ちてくる、流れ星が、落ちて、落ちてくる! うわ、うわあああー!」


「うるせーぞ誰だー! 上の階か!」

「エトーお前だろー! 隣にも丸聞こえなんだよ!」

「夜だぞっ寝ろ!」

「お前流れ星の度にうるせええよ!」


 ……怒られた……。トラウマなんだから仕方ないじゃないか。……そんな叫んでるか? まあ、ともかく俺は眠った。

 明日はダンジョンに行く前に、ナッケルさんに紹介してもらって娼館に寄ってみよう。

お読み頂きありがとうございます。

ブックマークありがとうございます。


これからも頑張ります。

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