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6月2週 金曜日

村34 町30

ダ28 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中12 上1

剣100 剣中12 剣上1

回復17

治療38

採取68

草15 花5 実33

料理7

石工2

木工10

漁1

歌2

体55

女7

 物語の主人公の敵は、倒せるかどうか分からない強い敵。いわゆるボスキャラだ。

 ゆえに1度しか倒す必要がなく、倒せば大きく進むことができる敵。しかしもしも負けても、それはさらなる成長の糧になる。


 対して人生の主人公の敵は、倒すことが当たり前の弱い敵。いわゆる雑魚キャラだ。

 ゆえに何度も何度も倒す必要があり、倒したところで変化は乏しい敵。しかしもしも負ければ、そこで人生は止まってしまう。


 さらに言えば、強い敵と戦えないのだから、ラスボスに辿り着くことなんざ到底できない。同じところをグルグルグルグル回って、主題と関係ないところでずっとつまずき続ける。

 それがゲームなら、そのゲームをなんと呼ぶか、知っているだろうか。


 むろん、クソゲーである。


「ここで引くと、舌が飛んでくるからそれ避けて」

 俺はスウェーのように体を後ろに倒して、剛速球の舌を躱し、その体勢のまま剣を振り上げて攻撃した。


「ゲローッ」

 変なフォームでの攻撃のためダメージはないが、ファイアーフロッグは舌の先端以外が弱点のようで、どんな攻撃でも受ければ大きく怯む。


「3秒怯むから、攻撃が4回できて、そしたらバンペストの攻撃タイミングになるから、剣で髪の毛叩いて」

 ファイアーフロッグに攻撃した後、俺は少し首をひねってバンペストから迫る赤い線を見つける。そして頭を振り回すことでフワッと動く髪の毛を、俺は軽く剣で軽く払って、再びファイアーフロッグを見た。


「近距離から下がる動きを見せれば、舌で攻撃しようとしてくるから、その時に顎を下から攻撃。よっ」

 ゴン、という衝撃で、口を開けたファイアーフロッグは無理矢理顎を閉じられた。するとエラーが起きたように全ての動きをストップした。

 俺はそこに再び4連続攻撃を叩きこんだ。


「次に連続して怯ませても効果時間は短いから、一旦シカト。バンペストに適当に攻撃して、もう1回攻撃しようとしてきたら――」

 俺はバンペストを適当に斬りつけていた時に、後ろから飛んできたファイアーフロッグの舌を、おじぎをするように躱し、振り向きざまに斬りつけた。

 また、その勢いのままに俺は1回転しバンペストに向き直り、攻撃しようとしてきたその顔を、サッカーボールを蹴るように蹴り飛ばした。


 足の防具だけは、重装備だ。

 片側25kgはある。元々人の足は手よりも強いこともあって、蹴りは俺の攻撃の中で最も強烈。


「ノエーン」

 バンペストは消え入りそうな声を出して地面を転がり、そして俺は怯んでいるファイアーフロッグの元ヘと向かった。


 正直、ダンジョンにはもう飽きた。

 そりゃあそうだ。前進している感覚がない。


 戦い方は上手くなったと思う。魔物と数多く戦う内に、その性質を掴めてきたために、攻撃を食らう回数は減り、より短時間で倒せるようになった。

 私生活でも、昼飯夜飯の店は固定されてきたし、店員と顔馴染みになってきたため、店を一々探したり見知らぬ暗黙の了解にドギマギすることもなく、体力が温存できる。

 それから色んな冒険者に挨拶をして、顔を認知されつつあるから、ダンジョン内で会っても警戒しあわずに済むことが多いし、その辺りでも精神の消耗を避けられている。


 順調は順調だ。

 昨日より今日、今日より明日が、より良い1日であることは確かだと思う。


 もしかしたら凡人ならば、こんな日々でも充実していると思うのかもしれない。

 毎日少しずつ進んでいる、明日が楽しみだと思うのかもしれない。


 しかし、俺には到底思えない。

 そう、例えば、ラスボスを倒さなくてはいけないのに、最初の町でスライムを相手にレベル上げをしている、そんな気持ちになる。


 努力して少しばかり上手く強くなったとしても、それが目標に全く繋がっていないことが分かるのだ。


 俺の目標は、やっぱり庭付き一戸建てだ。町にいるのに屋根のない生活なんて、もう1日足りともしたくないから。

 だが、家と一口に言っても、あばら家が欲しいわけではない。豪邸が欲しいわけでもないが、それなりに良い家が欲しい。あとは悠々自適な生活とか、綺麗な嫁さんとか、そういうものもある。まあ、ともかく金がいる。


 しかしダンジョンでの稼ぎはある程度、階で決まってしまう。15階なら、銀貨9枚と銅貨45枚。

 相当頑張っても、銀貨10枚、11枚、12枚くらいだ。努力し続けたなら、時間と体力的にはもっと倒せるようになるのかもしれないが、魔物の数が物理的に足りない。自分以外の冒険者もいるのだから、取り合いになって数は結局伸びないだろう。

 それに、頑張れば頑張るほど、武器や防具の消耗は早くなり、ポーション類も使うため、結局のところ稼ぎにそう大差なくなる。


 既に、稼ぎは頭打ちだ。


 こんな稼ぎをいくら続けたところで、目標を達成するほどの稼ぎは得られない。

 だから稼ぎを今以上に増やしたいなら、もっと高い階に行かなくてはいけないのだが、しかし、そのためには仲間がいる。


 15階すら、2人で戦うことが推奨されている階なのだ。

 これ以上階を上がるためには、絶対に仲間が1人、いや2人の仲間が必要だろう。だから無理だ、俺には無理だ。人を信じることほど、怖いことはないのだから。


 つまり、俺が15階でいくら上手く戦えるようになったところで、何にもならない。

 15階での戦いが世界一上手くなっても、稼ぎは20階で戦う冒険者を下回る。例えどれだけ努力したとしても。


 道はどこにも繋がっていない。


「はい、確認しました。ファイヤーストーンの石が2、ファイヤーウルフの牙が4、毛皮が1、バンペストの髪が1、ファイアーフロッグの油が4、足が1本ですね。合計で銀貨10枚と銅貨30枚になります。手数料を差し引きまして、銀貨9枚と銅貨27枚になります」


 今日もまた、前進した感触は得られなかった。

 問題があるのに、その問題が解決できないこのモヤモヤ感。努力がそれの解決に繋がらない無力感。


「まあ、でも多分、このまま稼いでいってもいつかは家も買えるんだろうな。ローンもあるみたいだし。嫁さんもまあ、割とモテるし、大丈……あ、でも俺チンコめちゃくちゃでけえ……、まあ良いさ、多分なんとかなる。なんとかなるんだ、なら良いじゃん」

 俺は騎士団詰所から出た帰り道、そう独り言を呟いた。


 でも、それは心からの言葉では全くなかった。

 だって、そういうことじゃない。

 俺が叶えたい目標ってのは、そういうことじゃないんだ。それじゃあ、地球で夢も見れないまま生きようとしてたあの頃と同じだ。誰かを羨み続ける人生を送るだけ。


 結局俺は、いくら努力しても目標を叶えられない。


 努力を諦めたことを、俺は天才を目の当たりにしたからだと思っていたが、案外そうではないのかもしれない。

 そんなことを、ちょっと思った。


 ま、現状は仲間がいれば1歩前進するような、簡単な問題なのだが。

「……仲間かあ」

 俺は晩飯を食いながらもそれを悩み続け、硬いベットに入った後も、深いため息をついた。

お読み頂きありがとうございます。

また、ブックマーク、評価、感想、誤字脱字の報告、どれもありがとうございます。感謝しております。

これからも頑張ります。よろしくお願いします。

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