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6月2週 木曜日

村34 町29

ダ27 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中12 上1

剣100 剣中12 剣上1

回復14

治療38

採取68

草15 花5 実33

料理7

石工2

木工10

漁1

歌2

体55

女7

 人の強さは武器と防具に依存する。


 それは武器防具が、ATKDEFの全てを決めるからだけでなく、強さに重要なウェイトの大部分を占める、といった理由も含まれる。


 装備品の重さを、装備者は感じない。

 鉄のフルプレートなんぞ、各部位10kg20kgでは済まない重さだが、体を動かす際も、まるで何も装備していないかのように軽やかに動ける。


 しかし実際の重量も0になっているというわけではない。

 全身200kgの装備をしているなら、体重は自重+200kg、足に30kgの装備をしているなら足に+30kg。質量は何一つ変わらないまま、軽やかに動いていることになる。


 だから、装備して動いている間は、それだけの重量を動かせるだけの筋力を得る。

 100kgの重い武器を振り回せているのなら、膂力も握力も凄まじい値を叩きだす。


 そして物体のエネルギーとは、質量×速度。

 重い物が速く動けば当然強くもなる。


 本来、人は非力だ。

 突進してくるイノシシ目掛け、剣を全力で振り下ろしても、倒せる可能性はおろか、突進を止められる可能性すら低い。

 だが、もし人の体重が200kgあって、10kgを越える重量の剣を、木の棒かなにかのように軽々振れるのなら、イノシシの突進だって止められる。


 人の強さが武器と防具に依存する理由に、重量があるのは、そういったことがあるから。


 ゆえにダンジョンにおいても、より重装備の者の方が前衛として役に立つ。

 軽装備の者の非力な一撃では、当たり所が良くない限り魔物を怯ませられないが、重装備の者の強烈な一撃ならば、当たり所が多少悪くても怯ませられるかもしれない。

 軽装備の者は魔物の一撃で吹き飛ぶかもしれないが、重装備の者は耐えられるかもしれない。


 骨折や欠損といった状態異常にも、重装備の者は強いだろう。


 もしも1人でダンジョンに挑むとしたならば、軽装備よりも重装備の方が、当たり前に推奨される。


 だが、俺は中量装備だ。

 俺の防具は、最近壊れた腕防具以外、ケビンさんやホロードさん、それからライアスさんの遺品なのだが、選ぶ際にDEFが高い物から選んだため、重装備かどうかはあまり意識していなかった。


 ライアスさんは戦士ジョブだったため、重量のある防具を装備可能で、受継いだ足防具も重量のある装備。

 ケビンさんとホロードさんは、剣士ジョブと冒険者ジョブだったため、重量防具は装備できず、していた防具は全て中量。兜的な頭防具も、鎧的な胴防具も、鎧的な腰防具も、全て中量。


 新しく購入した腕防具も中量なので、俺の5つの防具の内、4つが中量だ。

 体重は、おそらく自重と合わせて200kgちょっと。


 魔物に打ち負けることこそないが、いざという時、弾き飛ばせるようなパワーは出せない。


「ええーい、くそう」

 俺は、悪態をつく。

 左腕の盾には、ファイヤーウルフが歯茎を剥きだしにしながら噛み付いており、よだれが飛んできそうなほど肉薄している。

 また、勢いをつけて跳んできたのを受け止めたため、俺は押され片膝をついていた。悪態をついたのは、そういった理由からだ。


 1対1なら、この状況は悪くない。

 攻撃を防げているし、向こうが再度攻撃を仕掛けてくるよりも、俺が立ち上がって攻撃する方が早い。よだれが顔に飛んでいるのはまあご愛嬌だ。


 しかし、現状は1対1ではなく、1対2。

 左手で受け止めているファイヤーウルフを正面とするならば、背後にもう1匹、いや匹と数えるのかどうか知らないが、俺が悪態をついた際の視線の先には、ファイヤーストーンがいる。


「アゥム」

 ファイヤーストーンは、そんな鳴き声をあげつつゴロリと転がって突進を始めた。

 初速から、ほぼ最高速に乗る、直径20cmのファイヤーストーンの突撃。


 至近距離から行われたその攻撃は、ファイヤーウルフの飛びかかりの勢いを殺しきるよりも早く着弾する。


 こんな時、パワーがあれば、と思う。

 もしもファイヤーウルフを弾き飛ばせるパワーがあれば、すぐさま弾き飛ばし、ファイヤーストーンの攻撃に備えられただろう。

 ファイヤーストーンの攻撃を抑える方でも良い。この体勢からでも剣を振って受け止められるなら、どちらにせよノーダメージで切り抜けられる。


 だが、そんなパワーはどこにもない。

「おわ!」


 軸足に攻撃するファイヤーストーンの性質によって、俺は膝をついていた方の足に体当たりをかまされた。

 耐えようとしたが、攻撃は重く、とてもじゃないが耐え切れるものではなかった。足はそのまま、遠い世界へ吹き飛ばされる。


「いてえ」

 俺は失敗されただるま落としのように、腰から順に、無様に地面に倒れ伏した。


 その大きな隙を、15階の魔物は見逃さない。


「ぐふっ」

 まずは連続攻撃をしてきたファイヤーストーン。8の字を描くように華麗なターンを見せ、倒れた俺の腰か胸辺りに体当たりをかましてきた。

 流石に吹き飛びはしないが、体がずれるほどの衝撃。


「あ、いたいいたい!」

 次に、ファイヤーウルフの噛み付き。

 腕の防具と胴の鎧の丁度中間目掛けて噛み付いてきた。その辺りは鉄ではなく革のような素材なので、噛み付かれるとちょっと痛い。


「痛い、痛い」

「グルルルル」

「痛い、痛い」

「グルルルル」

「痛い……痛いって言ってんだろ! 離せコラ!」


 そんなこんなで、俺は今日も頑張っている。


「ギャン」

 右腕の肘より少し上に噛み付いていたファイヤーウルフを俺はぶん殴ると、そんな痛そうな声を出した。


 動物虐待。そんなことを、昔は考えたが、今はチラリとも考えない。

 この野郎! 痛いって言ったら離せ! 痛いだろうが!

 こんな感じのことしか考えていない。IQは下がった気がする。


 俺は防具に穴が開いていないかチラチラ見つつ、ファイヤーウルフとファイヤーストーンを同時に視界に捉えられる位置に立つ。


「くっそ油断したー」

 俺にはパワーがない。鍛えてはいるし、最近ムキムキになってきたが、いくら鍛えたところで重装備のパワーには届かない。

 だから、パワーが必要な場面に追い込まれてはいけないのだ。そう、立ち回りを上手く、頭脳を使って。


 俺がそう決意を新たにすると丁度、眼前の2匹、いや1匹と1個、個はおかしいか……、石……、1石、一石を投じるとか言うし石か? でもなんか違うような……。

 まあ、2匹が揃って攻撃を仕掛けてきた。


 先ほど同様、ファイヤーウルフは跳び上がり噛み付こうと歯を剥いて、ファイヤーストーンは軸足を吹き飛ばそうと回転して前進する。


 俺はまずファイヤーウルフを左手の盾付きの腕でぶん殴った。

 人の腕の重量は2,3kgだったと思うが、腕防具の重量は5kg以上、盾は20kg以上あるため、総重量は30kg近く。実に通常の10倍から15倍質量になっている。

 つまり通常のパンチに比べ、10倍から15倍の威力がある、ということになる。かもしれない。多分違う。詳しくは知らない。


「ギャン」

 ファイヤーウルフはまたそんな鳴き声を出すと、地面に横腹から落ちた。


「アゥム」

 そして、パンチの際に前へ出し体重を乗せた左足目掛け、ファイヤーストーンが攻撃を仕掛けてくる。

 しかしパンチを出すと決めた時点で、こっちの足に攻撃を仕掛けてくることはもう分かっていた。躱す準備は既に出来ている。


 俺は左足にさらに体重を乗せ、後ろにステップするように軽く飛んだ。

 軸足は着地した右足に移り、ファイヤーストーンは攻撃目標を右足に変える。普通なら軸足を変えても、次に何かする前に着弾するため意味が無いのだが、後ろにステップすることで、着弾までに余裕を作れる。

 だから今度は前にステップする。


 軸足はまた左足に戻り、ファイヤーストーンの攻撃目標もまた左足に変わるが、既にファイヤーストーンは左足を追い抜いてしまっている。

 自分の進行方向の後ろへ攻撃目標が行ってしまったことで、ファイヤーストーンは変な風にカーブし、戦線を一旦離脱した。

「その隙に――」


 俺は左足に重心を戻すようにステップしたその勢いのまま、倒れた状態から置きあがろうとするファイヤーウルフに一撃を加えた。

 そしてそのままもう1撃、2撃。


 ファイヤーウルフが反撃に出ようとしてくるが、それを赤い線で素早く察知していた俺は、跳びあがろうとする起動に合わせて、剣を振り下ろした。

 丁度眉間にヒットし、ファイヤーウルフは大きく怯む。

 そこへ1撃、2撃、3撃。


 ファイヤーストーンが途中で再度攻撃を、と突撃してきたが、それを先ほどのように軽いステップで躱し、4撃目。


 既にこの階に出てくる4種類の魔物の攻撃パターンはほとんど見切っている。

 油断しなければこのように、2匹から同時に攻撃されたとしても、ノーダメージで切り抜けられ、それどころか大ダメージを与えることができる。


 2匹との戦いはそのまま続いたが、結局そこから1度も攻撃を食らうことなく、ファイヤーウルフを倒し、ファイヤーストーンを倒した。


「圧倒的な戦いだった」戦闘が終わって、俺はそう呟く。「これが無双というやつか……」

 ドロップアイテムは2つ。


「神様から特別な力を授かって異世界にやってきた甲斐もあったもんだ。こんな風に相手に何もさせず圧倒的な勝利を収められるなんて……」

 俺はドロップアイテムを拾い上げ、アイテムボックスに収納した。


「いや無双の仕方がしょぼい! 課金関係ねえ! 勝利の要因が全部努力!」

 そして叫んだ。


「努力ができない、って悩んでた人間とは思えないくらい努力してるよ! はあー」

 深いため息をつき、俺はその場に座り、水筒の水を飲んだ。


 疲れた。

 今日も本当に疲れた。さっきはダメージ受けすぎて死ぬかと思った。

 本当に頑張っている。


 しかし、一向に庭付き一戸建てが近づいて来ない。


 今日の稼ぎは銀貨10枚ちょっと。

 安定して稼げるようにはなってきたが、目標が叶う額ではないように思える。


「頑張っても頑張っても、全然だな。やっぱ」

 こんなもんか、と俺の口からそんな言葉が漏れた。


「ちょっと飽きてきたな、ダンジョンも」

 そうして、俺の悪い癖が出てきた。

お読み頂きありがとうございます。

予定に予定が重なり、投稿が大幅に遅れてしまいました。待っていて下さった方、申し訳ございません。

また、ブックマークや評価して下さった方、感想を下さった方、お礼が遅れてしまい申し訳ございません。大変感謝しております、ありがとうございます。


未だ登場人物が1人くらいしかいない作品ですが、応援して下さり、感謝の気持ちでいっぱいです。

そろそろ増えます。来週辺りには増えてる予定です。頑張ります。


本当にすみませんでした、ありがとうございました。

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