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6月1週 火曜日

村34 町20

ダ20 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中12 上1

剣100 剣中12 剣上1

回復38

採取68

草15 花5 実33

料理7

石工2

木工10

漁1

歌2

体55

女7

 兜や鎧は防具である。

 防具は独自にDEFを持っており、身に付けているだけで、HPへのダメージを軽減できる。


 しかし0にすることはできない。

 例え腕の鎧でガッチリと防御しても、ATK÷DEF×5のダメージを受けてしまうのだ。腕で受けて軽減できるのは、体への衝撃や、胴の切断を腕の切断に変えることくらい。

計算結果が1未満になれば、ダメージは0になるが、それはつまり5倍を越えるDEFがなければならないということである。ギリギリの戦いをして稼ぐ冒険者に、普通は難しい。


 ゆえにダメージを0にするには、攻撃自体を回避するしかないように思えるだろう。


 だが、受け止める形でダメージを0にする方法は、実のところ存在する。


 それは、武器で受け止めることだ。


『ファイヤーウルフ

  ジョブ:火狼

  HP:100 MP:100

  ATK:30 DEF:30

  CO:--』


 赤色の毛並みの狼の噛み付きを、俺は剣で受け止めた。


 狼が口を開き噛み付こうと飛びかかってきたところに、剣を合わせた形のため、剣は水平に口の中へ。丁度、狼の両側の頬と剣がぶつかり合っているような形になっていた。


「ウグルウ」

 狼のむき出しの立派な犬歯が、よだれを滴らせ眼前まで迫ったその光景は、とてつもなく怖い。思わず顔を遠ざけるようにと動いてしまった。

 しかしファイヤーウルフは中型犬程度の大きさ。その程度の体重では、俺のこの剣での防御を突破することはできない。


「うらあ!」俺は力を込めて剣を押し出し、ファイヤーウルフを退けた。


「ゲコゲコ」

 だがその隙を狙って、もう1匹の魔物、蛙が俺達の左側から舌を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。


『ファイアーフロッグ

  ジョブ:火蛙

  HP:100 MP:100

  ATK:30 DEF:30

  CO:--』


 赤い体表で、体高2m近くはありそうな巨大な蛙の舌は、先端がバスケットボールくらいの大きさの玉になっていて、小学生の全力投球に近いスピードで突っ込んできた。

 剣を振った直後で、回避は難しい。同様の理由で、剣で受けるにしても間に合わない。食らうしかない絶好のタイミングで放ってきたと言える。


 今までの俺相手ならば。


「よっと」

 俺はその攻撃を、左手に装備した小さな盾で受け止めた。


 そう俺は、盾を装備した。


『キジョウ・エト

  ジョブ:異世界民

  HP:100 MP:100

  ATK:27+5 DEF:30+5

  CO:麻痺』


『硬い鉄の盾

  ランク:1

  ATK:0』


 異世界において盾は防具ではなく、武器扱いだ。


 ATKは0でダメージを与えることこそできないが、しかし盾で攻撃を受け止めたなら、剣で攻撃を受けた時同様、ダメージは食らわない。

 鋼鉄がぶつかったような甲高い音がしたが、俺にダメージは一切なかった。


「いやでも結構痛いなあ」確かに、舌攻撃の威力というか衝撃というか、それはビックリするほど大きかった。体は思い切りふらついたし、おかげで盾を持った手が痺れてしまっている。状態異常で言えば確かに麻痺だ。

 しかしダメージは0。

 避けなくてもダメージをシャットアウトできる盾は、特に相手の攻撃を赤い線によって、未来予知に近い形で予測できる俺には、被弾を大きく減らせる最強の武器になるだろう。


 銀貨20枚もしたし、片手が埋まるからと両手剣から買い換えた片手剣なんて、ケビンさんの剣を下取りに出したのに銀貨20枚。それから銀貨ダンジョンの15階まで上がるのに銀貨15枚もかかったので、現在の支出は銀貨-55枚だが、それを大きく取り返すこともいずれはできるだろう。


 俺はそんな予感と共に走り出す。


「ガアウ!」

 すると、それに合わせたかのように、ファイヤーウルフが俺に攻撃を仕掛けてきた。

 先ほど同様、飛び付いての噛み付き。カルモーダンジョンではあまり見なかった上下の素早い動きに、先ほどは意表をつかれ剣で受けてしまったが、もう大丈夫。


 飛んだ際、足先が丁度高さ1mになるほど高く飛んだファイヤーウルフの噛み付きを、俺は横にステップして軽く躱した。通りすぎて行くファイヤーウルフ。

 そのため俺も体の向きを反転させ、ファイアーフロッグからの攻撃にも気をつけつつ、着地しようとしたファイヤーウルフを斬りつけた。


「ギャンッ」


『ファイヤーウルフ

  ジョブ:火狼

  HP:95 MP:100

  ATK:30 DEF:30

  CO:--』


 相変わらず1撃のダメージが少ないなあこのシステムは。

 倒しても銅貨70枚しか貰えない雑魚敵が、20回攻撃しないと倒せないとか、RPGだったらぶち切れられるぞ。


 しかしだからこそ俺は、鳴き声を出させるほどの強い攻撃をして怯ませた。

 こうすれば、そこへ連続攻撃を叩き込み、大ダメージを与えられる。


 上から左下へ振り下ろした状態の剣を、今度は左上へと上げて斬りつける。今度は右横から。

 片手剣にまだ慣れていないため、俺は少し剣を振った勢いでぐらつくが、それでも今度は左横から振り向いた鼻っ面を斬り上げる。


『ファイヤーウルフ

  ジョブ:火狼

  HP:81 MP:100

  ATK:30 DEF:30

  CO:--』


 最後の一撃を含む連撃は、全て軽い一撃。肌を撫でるようなもので、怯ませられない。

 鼻っ面を斬られても瞬き1つしない狼が、唸るように俺を見た。


 するとその瞬間、右にいるファイアーフロッグが俺に狙いを定め、先ほど同様舌攻撃をしてきた。

「ゲコ!」


 先ほどは左側からの攻撃だったため、盾で受け止めやすかったが、俺が反転している現在は、剣を持っている右側からの攻撃。盾では受け止められない。

 しかし俺はそれを待っていましたと言わんばかりに体をひねって躱した。

「ガウッ」そして飛びかかってきたファイヤーウルフを、今度は盾で殴りつけた。ダメージははないが、「ギャンッ」と、鳴き声をあげてファイヤーウルフはまた怯む。そこからはまた連続攻撃だ。


 初めてのテトンダンジョンでの真剣な戦闘。

 それも15階という、一人では行ったこともない高い階。

 戦う相手は魔物と言えど、虫ではなく哺乳類。

 そして、1対2。


 未知の条件での戦いだった。


 しかし、俺は勝った。


 20m×20mの部屋は、途端に静かになる。

 ドロップアイテムが2つ落ちていなければ、幻覚か何かだったんじゃないかと思ってしまいそうだ。


 いや、思わないか。

 俺の手には、戦いの確かな感触と、一粒の高揚感が残っていた。


 昨日考えた稼ぐ案とは、至極単純なものだった。

 ただ単純に、15階までダンジョン入り口にいる騎士に送ってもらって、新しく購入した盾を使って1対2の状況を乗り切る、というもの。


 普通なら不可能だろう。

 いや、経験を積んだ実力者なら問題なくできるかもしれない。でも普通はやらない。

 死ぬ危険性があまりにも高いからだ。


 ファイヤーウルフの噛み付きは、中々首まで来ることはないが、しかし首を噛まれればダメージは少なくても欠損状態に陥るかもしれない。

 首を噛まれて欠損したならば、首から下全てが欠損した扱いになるため、体が一切動かせなくなる。


 ファイアーフロッグの舌はとにかく強烈だ。鎧を着込んでいるとは言え、食らえば昏倒するかもしれない。脳震盪はただの麻痺だが、全身の麻痺だ。回復するまで攻撃を食らい続けることになる。


 仲間がいれば助けてもらえるが、1人ならまず死ぬと思う。

 通りすがりの人に助けてもらうというのも……、どうだろうか。助けて貰えるのだとしても、それ込みでダンジョンに入る奴はいないだろう。


 人間には、手が2本あっても頭は1つしかない。

 目が2つあっても視界は1つしかない。

 戦いを何度も繰り返すのだとしても、命は1つしかない。1人で2匹を相手に挑むだなんて、やっぱり普通はやらない。


 しかし俺はする。


 俺には才覚がある。何度かやれば、コツが掴める自信があった。

 尋常ならざる魔物と戦った経験がある。冒険者暦や戦争回数で劣っていても、あれほどの死線をくぐり抜けた人はいないだろう。


 そして、赤い線が見え、青い線が見える。ATKDEFそれからHPMP状態異常が見える。

 つまりは全ての攻撃を察知でき、全ての攻撃を直撃させることができ、何度攻撃すれば死ぬか、攻撃されれば死ぬかを計算でき、現在の状態を常に把握できる。

 そんな俺にとっては、1対2の戦いは、決して死地に飛び込むようなものではない。


 実際に1度戦ってみて、ハッキリとてごたえを掴んだ。

 俺はやれる。


 まあ、とは言え。

「はあ、はあ、はあ、ああ駄目もう駄目。ちょっと休憩……」

 流石に1戦1戦、凄く疲れるが。


 俺は10分20分休憩を入れ、そして立ち上がり冒険を再開した。


「はい、確認しました。ファイヤーストーンの石が2、ファイヤーウルフの牙が4、毛皮が1、バンペストの髪が2つにファイアーフロッグの油が2つですね。合計で銀貨7枚と銅貨20枚になります。手数料を差し引きまして、銀貨6枚と銅貨48枚になります」


 結果は、銀貨8枚には届かなかった。

 が、しかし、次こそは達成できるという確信を持てた稼ぎだった。


 俺は騎士団の詰所から、借りている宿屋まで戻り、装備を外していく。

「ファイアーとファイヤーは結局どう違うんだろうか。蛙はスキルで火の玉を吐いてきたけど、狼はまとっただけだから、そこかな? うーん違うかなあ」


 そして剣や鎧を拭いて、油を塗って、部屋の隅に置いておく。

 武器防具は、こうやっておくと長持ちするらしい。すぐにアイテムボックスに入れたりしてはいけないのだとか。

「しかし盾買っちゃったから、アイテムボックスの中身また整理しなきゃな。課金アイテムに圧迫されてるよ全く」


 俺は瓶に入っている水で布を濡らし、体を拭いた。

 脇の臭いを嗅ぐと、「うーん」と唸ってしまうが、まあ良いだろう。


 俺は私服に着替て、お爺さんと約束していた場所に向かった。


「おーいこっちだよエト君」

「――! デオグラさん、ご無沙汰してます」

「まだ2日じゃないか。はは」


 お爺さんは俺が異世界から来たことや課金という特殊な力があること、金貨を大量に持っていることを知っても、何も変わらず接してくれる。

 しばらく立ち話をした後、俺達は腰の曲がったお婆ちゃんが1人で切り盛りをしている小さな小料理店に行った。

 お爺さんの行きつけだというその店は、とても美味しかった。


 もちろん日本で食べていた料理と比べるとまだまだで、冷凍とかレトルトとかの方が断然美味いが、異世界の中では中々だ。

 流石お婆ちゃん。……いやカルモー村にいたお婆ちゃんが出してくれるお茶は、マズイと評判だったな。……流石お爺さん、一時は商会の代表をしていただけのことはある。

 美味しい食事に俺とお爺さんは舌鼓を打ち、会話も弾んだ。


 俺が、ダンジョンに行って今日は銀貨6枚と銅貨50枚を稼いだ、まだまだ行ける気がする、と言うと、お爺さんはまるで自分のことのように喜んでくれた。

 いや、自分のことのようにではなく、自分の息子のことのように、だろうか。「良かったねえ、良かった良かった」お爺さんお酒を飲みながら、涙を流して喜んでくれた。


「それじゃあ、今日はありがとうね」

「いえこちらこそ。お金も……」

「良いのさ良いのさ。エト君の持ってるお金は大切に使いなさい。そうだ、私は明日の朝出発するよ。売れ行きが好調だったからね。今度ここに来るのは、そうだなあ、再来週の火曜日か水曜日かなあ。またその時はご飯を食べようね。元気でやるんだよ」

「はい! 楽しみにしてます」


 日が暮れて、道の所々に篝火が設けられた頃、俺達は笑って別れた。

 その日の星はとても綺麗で、流れ星にも幾ばくかは寛容になれたと思う。

お読み頂きありがとうございます。

また、誤字脱字を教えていただきありがとうございます。全く気づいておりませんでした、とても助かりました。


誤字をなくすため色々と頑張っておりますが、中々大変そうに思えて参りましたので、誤字があっても面白い作品を目指します。おそらくこちらの方がさらに大変ですが、頑張ってみます。今後ともよろしくお願い致します。

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