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6月1週 月曜日

村34 町19

ダ19 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中11 上1

剣100 剣中11 剣上1

回復38

採取68

草15 花5 実33

料理7

石工2

木工10

漁1

歌2

体55

女7

 ダンジョンから取れるドロップアイテムは、必ず騎士団か冒険者ギルドに売却しなければならない。

 どちらでも売値は変わらないが、騎士団に売る場合は手数料が1割取られる。

 そして冒険者ギルドへ売却する場合は、冒険者登録をしていないと手数料が3割取られる。冒険者登録をしていると手数料はかからないが、その代わり月単位で会費がかかり、さらにノルマや緊急時の徴兵義務が課せられる。


 ダンジョンには、討伐指定ダンジョン、育成指定ダンジョン、放置指定ダンジョンなど様々なものがある。

 討伐指定ダンジョンは、倒すべきと判断されたダンジョンで、討伐すれば賞金が貰える。

 育成指定ダンジョンは、倒してはいけないと判断されたダンジョンで、積極的に入るべきだが、討伐すれば罪に問われる。

 放置指定ダンジョンは、入ることも禁止されたダンジョン。


 カルモー村のダンジョンしか知らない俺には、まだまだ知らないことがたくさんあった。

 ヘルプはやっぱり、役に立たない。


 俺は鍛冶屋で武器を修理して貰い、ダンジョンの場所を尋ねた。

「行けば分かる。分かり易いぜ」鍛冶屋の店主がそう言った通り、ダンジョンの場所はとても分かりやすかった。テトンダンジョンは町の中にあった。町の北側の公園の中央に、木が生えているのだが、その根元が入り口になっていたのだ。

 ダンジョンの入り口は相変わらず黒く、太陽の光を一切通さない。一体あれが何でできているのか解明した人はいないんだろうか。


 またそこには、もう1つの分かり易い要因として、鎧を着た騎士がいた。

 基本的に、村や町が管理するダンジョンへ入るには、その村や町の住人でなければならないという決まりがある。

 そのため、許可証を確認できるように、騎士は常にダンジョンの傍にいるものなのだ。カルモー村ではいなかったが。


「新入りか?」俺が許可証を渡すと、騎士は尋ねてきた。「見ない顔だもんな、装備もいやに良いし」

「今日来ました。しばらくお世話になります」

「へー、そっか。20階までならどこでも送ってやるぜ? って1人ならそこまでは行かねえか。一応20階なら銀貨20枚で、10階なら銀貨10枚で、8階ぐらいなら銀貨8枚で送ってやるが?」


 俺はその話を断って、ダンジョンへと入る。

 だってめちゃくちゃ高い。


 ダンジョン1階。


 見慣れた風景が目に飛び込んできた。

 あの懐かしい妙に人工的な造りの通路と部屋。俺は戻ってきた。


 もしかすると2度と入らなかったかもしれなかった場所だ。思いだしたくないトラウマがあるし、怖くないと言えば嘘になる。

 しかし、きっと、俺はこうやって生きていく。


 その一歩を、今踏み出したのだ。


 ただ、どうやらダンジョンでの戦いは、この階以降にお預けになるようだ。


「あん? 兄ちゃん誰だよ! ここは俺達リッパー団が占拠してんだ! 大人はもっと高い階に行けよ!」

 1階の大きさは1通路1部屋だが、そこには子供が10人以上いた。


 武器は一番安い木の武器。

 防具は装備していない。いやしていないこともないが、5つ装備できるはずの防具を、誰も彼もが1つか2つしか装備しておらず、そしてやっぱり1番安い木の防具。


「ややや、やんのか?」小学生くらいに見える少年が、俺に向けて剣を構えた。ただし手も足も震えている。

 聞くところによると、通常、ダンジョンの1階から3階くらいは、子供がお小遣い稼ぎに使ったり、将来冒険者になる練習をする場所らしい。


 ヘルプにも、今調べ直してみると、そういう記述があった。

 短くサラッと書かれていただけなので、見逃していたようだ。相変わらず使い辛い!


「皆で入ってると魔物もそこそこ出てくるしよ。1日に……えーっと指の数くらい? たくさん倒せば冒険者以外のジョブだって身につくんだ! だから兄ちゃん取っちゃダメだぜ?」

 そう言ってきた少年に、俺は情報料としてポケットにいつも忍ばせている銅貨数枚を渡し、2階へ進んだ。


 そして2階でも3階でも、子供達がいたために魔物を倒すことはできなかった。


「まあ次からはいけるか。肩慣らしだ」

 しかし残念ながら4階でも5階でも、魔物を倒せなかった。


 4階や5階は、少し年代が上の子供やお年寄り、怪我をした冒険者やまだ弱い冒険者などなど、様々な人がいて、それぞれで魔物を取り合っていた。

「1日に? 1日にそうだな……2、3匹でも倒せりゃあ、その日は酒が飲めるよ」

 その中の1人に話を聞くと、そんなことを言っていた。


「大体のダンジョンはこんな感じじゃないか? 1階から5階までは俺達みたいなのがうじゃうじゃいるんだよ。それ以上って行けば人は少なくなってくけど、それでも取り合いだぜ? そりゃあ、どこだっけ? カルモー? んな聞いたこともねえ村にあるダンジョンじゃあ自由なんだろうけどよ」

 最初にカルモーダンジョンに出れて、本当は良かったのかもしれない。


 テトンダンジョンでは、10階以下の階では魔物の過酷な奪い合いが起こっているのだとか。

 おかげで俺は全然魔物を倒せなかった。


 また、俺は上の階へ上がろうと試みたのだが、それにもえらく時間がかかった。

 テトンダンジョンの最終階は25階。ボスは5階毎にいるが、そのボスとの戦闘時間が長引いたわけではない。戦うまでに時間がかかったのだ。


「ボスをな、倒し続けてりゃあ中位ジョブが手に入るんだ。普通なら40階以降の魔物を倒してかなきゃいけないが、5階のボスでも手に入ってなあ驚きだろ? 最近言われ始めた最新のやり方なんだけどな、凄くねえか?」

「だから俺達はこうやって、わざわざ5階に来てボスを倒してるってわけだ。毎日こっから始めてても時間はかかるけど、でも中位ジョブになりゃあもっと強いスキルが使える。随分楽になるぜ?」

「あ、ちょっとアンタ、アンタはアタシより後に来たでしょうが。順番は守りなよ。後ろにつきな」


 俺の前にはボス戦待ちをするパーティーが3つほどいた。

 待った合計時間は30分を軽く越えるくらいだろうか。なんだかもう、戦う前にへとへとになってしまった。


「現実って、やっぱりめんどくさい……」

 5階のボスである、燃えるトサカを持ったニワトリを倒した後、そう呟いた。


「けど頑張ろう!」

 俺は気合を入れ、6階、7階、そして8階へと進んだ。

 それだけ一気に進んだ理由は、もちろん人が多すぎて魔物と戦えなかったからだ。


 8階にいる時に、1度偶然魔物が目の前でリポップしたため、1体だけ倒すことができたが、それ以降は遭遇しなかった。

 9階に上がっても人は多く、俺は10階のゲートを目指したが、9階は大きい。

 通路や部屋が10mとは言え、81部屋81通路ある。もちろん通路が繋がっていない部屋も多いため、そこはいかなくて良いのだが、つまりは行き止まりが存在する、ということだ。行って戻って、行って戻って。10階へのゲートを発見した時には、いったいどのくらい経っていたのか。


 それに、進みたい方向で冒険者が魔物と戦っていると、迂回するか待つかしなくてはならない。

 一度気にせず通り抜けてみようとしたところ、武器を向けられて、異常に警戒されてしまった。戦闘中に忍び寄って後ろから斬りかかるという犯罪行為は、それなりにあるようだ。見知った仲ならば問題ないだろうが、残念ながら俺に顔見知りはいないため、むしろこちらが殺される可能性もある。


「現実ってめんどくさい……」


 異世界でもどこでも変わらないな。俺は思った。


 物語の主人公なら、過去のトラウマを吹っ切ったその初戦、意気揚々と乗り込んだその場面くらいは、何もかもが上手くいくものだろう。

 覚醒回というか、なんというか、あっと言う間に敵を倒したり、恋模様を進展させたり。


 しかし現実はどうにもならない。こちらの気分なんて一切関係ない。敵の強さなんて一切関係ない。ただただ人間関係というか、折り合いというか、他者の悪意なき目論みに全て潰されてしまう。


 けれどもしょうがない。天才じゃないやつの限界だ。

 物語みたいに、挫折から立ち直った後は何事も上手くいったりするなら、俺は野球を辞めてなかった。


 ただ、あの時とは違う。

 今回はやめない。


 俺は10階のボス部屋まで辿りつき、そこにあった10パーティー近くの行列を見てダンジョンから出たが、その後は定食屋、と言うよりも酒場に行った。

 客層の8割が冒険者という柄の悪い酒場だ。


「テトンはな、最近ダンジョン産業に力入れはじめてるみてえでな、結構冒険者が来てんのよ近場から」

「稼げるダンジョンって言えば、この辺りじゃ一番だと思いますよ。隣村には近場に2つダンジョンがあるらしいですけど、枯れかけみたいですし。最近来た人は大体冒険者だって言いますね」


「朝早く来たって10階のボスはいっつも待ちがいるぜ? それこそ日の出前に行かねえと。ほら、冒険者のスキルで階を下げるやつあるだろ? あれ使って何周もするやつがいるからな」

「空いてる階? んー、15階くらいからは大分空いてるみてえだけど? つってもお前パーティーいないんだろ? 魔物が2体出てくんだから、2人でもきついんだぜ?」


 俺はそこで情報を大量に収集した。

 お酒が飲めないと話に加わり辛いかと思ったら、案外酔っ払いは俺が飲んでるかどうかなんて関係ないようだった。1杯奢れば口がもう軽い軽い。

 そして俺は、明日の予定を決めた。


 俺には今、金貨60枚ほどの財産がある。

 1日銀貨2枚で過ごしたならば、8年は暮らせる額になる。まごうことなき大金だ。だから今日の稼ぎがないくらい、何も問題ない。


 しかし、明日も明後日も明々後日も稼げないなら、それは危険信号だ。

 俺には縁故が一切ないため、何かあった際には自分でどうにかしなければいけない。風邪をひく、怪我をする、そういった時頼れるのは己自身のみになる。いや、己に備わった課金のみか。


 だが課金を使うには金がいる。

 それも、風邪をひいたくらいなら安いが、重篤な病気だった場合はべらぼうに高い。


『ビョウキナオールカンペーキ 金貨10枚』

 おそらくどんな病気でも治してくれるのだろうが、10枚とはあまりにも暴利。

 しかし聞く限りでは流行病で村や町が壊滅するだなんてことも、数年に1度はあるらしい。いつかは使う時もくるかもしれない。


 また、怪我においても、例えば馬車にひかれたり、馬に蹴飛ばされたり、誰かにいきなり斬りつけられたりしてしまうと、これまた高い課金アイテムを買わなければいけなくなる。


 あとは、犯罪に巻き込まれたり、大きな買い物をする時も縁故がないと困るか。

 異世界は科学捜査なんて欠片も見当たらず、証言によって全てが決まる。縁がなければ無罪でも有罪だ。他にも家を買う時なんかは、盗賊の巣窟になるんじゃねえか、なんて心配を解消するためにたくさん金を払わなければいけないようだ。

 原始人達の世界において、縁とは予想以上に重要なものだった。


 だから、大金と呼べるだけの金を持っているが、頼れる人がいない現状では、無駄に使える金なんてどこにもないのだ。


 そのため、せめて、使う金より、稼ぐ金を大きくする。

 俺が決めた明日の予定とは、そのやり方。


 俺は天才じゃないが、秀才の部類には間違いなく入る。むしろ秀才の中でも優等に分類されるだろう。

 だからこんな人口3000人に満たない小さな町で、俺より才能があるやつは存在しない。

 調子に乗っているわけじゃない。折れるような高い鼻は、もう全て折れきった。


 この状態から稼ぐことが、俺ならできる。

 俺程度にならできる。


 さて稼ごう。とりあえず……武器防具の損耗率も踏まえて、明日は銀貨……8枚いけるかな?

 お爺さんには情けないところを随分見せたから、毎日そんだけ稼げてますって言えば、きっと安心してもらえるだろう。


 俺は宿屋に戻り、眠った。

お読みいただきありがとうございます。

また、ブックマーク、評価、感想、誠にありがとうございます。励みにしてこれからも頑張ります。


ここから、またダンジョン編が始まります。

お金の計算間違いをしていたらすみません。もう屋根なしになったりはしませんので、安心してお読み下さい。

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