5月月末 休日2日目
村34 町18
ダ19 討伐1 フ8
人1 犯1
魔100 中11 上1
剣100 剣中11 剣上1
回復37
採取63
草15 花5 実29
料理6
石工2
木工9
漁1
歌2
体55
女7
人は朝陽により目を覚ます。
人が眠るのは、メラトニンの作用によるもの。
光を感じなくなることで、メラトニンという睡眠ホルモンが分泌され眠たくなり、光を感じることでメラトニンの分泌が抑えられ目覚めるのだ。
横穴に差し込む朝日に、俺はゆっくりと目を開けた。
「いや、ホント、すみませんでした」
「はっはっは。気にしないで良いよ。そういう時もあるもんさ」
「情けないところを……。それに見張りもしないでグースカ」
「良いんだよ。私はもうお爺ちゃんだから、あまり眠らなくても良いし。ほら、朝ご飯作ってあるから」
俺はお爺さんが作ってくれた、野菜や肉が入った塩味の濃いスープを飲んだ。
段々と気温が高くなってきたこのごろだが、深夜や早朝は冷える。こういった土の上で眠るとそれは特に感じられ、起きた時は底冷えで酷く疲れていた。
だから、まだ湯気が出ているスープは内側から温まり、とても美味しかった。
そうして横穴を出発する。
天気は引き続き良好。景色は綺麗。
俺はお爺さんの隣に座って、動かない空や過ぎ去る風景を眺めながら、色々なことを話した。
昨日一方的に話していたのとは違い、お互いが話す会話。しかし会話の引きだしはお爺さんの方が随分多く、俺はもっぱら聞き役だった。
「私はね、18で商会を立ち上げたんだ。エト君よりも少し上の年齢だね。でもね、すぐに失敗して路頭に迷って、そりゃあもう大変だった。物乞い同然の生活をしてて……、今思い返しても顔から火が出るくらい恥ずかしくなるよ」
お爺さんの人生は、波乱万丈だった。
22でもう一度商会を立ち上げると、それが軌道に乗る前に縁談が舞いこんで、結婚生活と商売でてんてこまいに。
商売は軌道に乗ったが子宝に恵まれず、奥さんが悪い宗教に嵌まり、改宗させるのにその宗教団体との経済の戦いをして。
見事勝利し奥さんを取り戻したと思ったら、驚異的な不作があって、経営に大打撃。それでも奥さんと二人三脚で経営を立て直した。
「それから、30も過ぎて、ようやく子供が生まれたんだ。幸せだったよ」
しかし5年くらい経って、奥さんが病に倒れる。
看病の甲斐なく、奥さんは帰らぬ人に。
それから男で1つで息子さんを育てるも、仕事に追われていたお爺さんを息子さんは嫌って、12歳の時に家を出て行ってしまった。
「商人をやってる私への反抗だったのかな、息子は探検者になったんだ。でも、16歳。エト君と同じ歳だね。死んでしまったよ、丁度あのお墓を作ったあそこでさ」
亡骸は、魔物が巣へ持って行ってしまったのか、今でも見つかっていないそうだ。
さらに意気消沈して仕事が手につかないでいると、信頼していた部下に商会を乗っ取られたらしい。
経営者であったはずのお爺さんは、商会の規模や貢献度合いに比べれば極僅かでしかない退職金を与えられ、辞めさせられた。
人の良いお爺さんは裏切った部下を庇い、そうは言っていなかったが、事実を客観的に見た限りは完全な乗っ取りで、俺は思わず怒ってしまった。
しかし、
「いや、あれは彼の努力の結果、夢の形だったんだ。それを否定する資格は私にないよ。そう、人には色々あるんだ。色々ね。この馬車と、この子を貰えただけで十分さ」
お爺さんは馬車と馬を指して、にこやかに言った。
後悔は見えない。
それから20年。
お爺さんはヘデラル坑道町とテトン町や他の町を拠点に行商人をずっとしている。
出身はヘデラル坑道町ではないそうだが、息子さんがあそこを中心に探検者をしていたらしく、商会を辞めてから移住したそうだ。
お爺さんが考えていることが、俺には分からない。
俺がお爺さんの立場だったら、今何を思っているだろう。そんなことを考えても、何一つ理解は及ばない。
16歳。
物心つくのが4歳だとすれば、俺は12年間しか生きていない。
4歳5歳頃の記憶なんてないし、小学校に入ってからだと考えれば、10年間しか生きていない。
16年間でもお爺さんの4分の1しか生きていないことになるのに、そんな換算をすれば6分の1くらいになってしまう。
じゃあ分からないはずだ。お爺さんの人生の深みは、理解できないほどに深い。
だから、悲しみに溢れた人生を歩んできたお爺さんが、幸せなのか、不幸せなのか、俺には分からない。
けれどもお爺さんは遠い目をしてしきりに幸せだと言う。
「幸せだった。思い返せば、私はこれで良かったと思うよ。そりゃあ後悔はあるし、ああしておけば良かったなあなんて思うことはたくさんあるけど、それでも良かった。私は、幸せだ。うん、本当に」
「……」
「実は死のうとしたこともあるんだけどね。死のうとして、でも死ねなくて。あそこで死んでいても、それはそれで良かったのかもしれないけど、今生きていて良かったとも思えてる。って死んでてもなんて言っちゃ駄目だね。元気を出してって言いたかったのに。上手くいかないなあ、あははは」
お爺さんは照れ隠しのように声をあげて笑った。
「いえ、元気、出ましたよ」
「そうかい?」
「はい」
「そうか、それなら良かった」
馬車は進む。
昼になって、一旦休憩して昼ご飯を食べて、そしてまた進む。
「エト君が悪いことなんて1つもない。よく頑張ったよ、私が同じ状況に立たされても、きっと君みたいにはできない。課金だっけ? それは凄いけど、それがあっても、全然ね。本当に頑張ったよ、上手くやってるよ」
「でも後悔ばっかりです」
「どれだけ上手くいっても、そう思うものさ人生は。だからまた頑張れるんだ。きっと神様が人間を前に進めるために、そうお作りになったんだね。簡単に満足しないように、って」
「……迷惑な神様ですね」
「そうかい? あはは、そうかもなあ。でも、おかげで私はまだ泣ける。だからきっと、それは私にとって良いことだったと思うよ」
「……」
「辛いことも苦しいことも、大失敗も人生にはあるものさ。どうしようもない不幸もあるものさ。でも、生きていったら良い。何年か経ったら、笑えるようになるか、悲しめるようになるか、悔しくなるか、恥ずかしくなるか、忘れるか。どうなるか分からないけど、折り合いはつくから。そしたら、生きる意味になるんだ」
「……」
「多分ね。あははは」
「ははは。……そうかもしれませんね。うん、そうなんじゃないかって思えて来ました」
「そうかいそうかい。おや、ほら、前を見てご覧、テトン町が見えてきた」
俺はお爺さんに促され前を見た。
月が昇った夕闇に、篝火で照らされた町が浮かび上がった。
町の全容はよく見えないが、その分幻想的な町に見え、俺の今の気持ちと相まって、とても良いことが起こりそうな町に見えた。
とは言え今はもう夜。
町は既に眠りについていて、俺はお爺さんと2人町の外で星を見ながら食事をした。
お爺さんは、明日の朝から品を卸し商売をして、品が早く売れれば火曜日に、中々売れずとも水曜日にはこの町を出る。
結構忙しく動き回るそうだが、「お気に入りの店があるから、火曜日の夜に一緒に食事をしよう」と言って約束してくれた。
「それじゃあ、またね、エト君」
「ええ、また。デオグラさん」
「頑張るんだよ」
「……はい!」
お爺さん、デオグラさんは、テトン町に来たら知り合いの家に泊まるそうだ。俺と同じ宿ではない。
俺達は町の入口で手を振って別れた。
ご飯食べる時に、まだダンジョンに行ってないって言ったら、「え? 頑張るって言ったのに?」って思われそうだから、明日行こう。
「あ、でも剣曲がってんだった。武器屋行かなきゃ……、つかダンジョンどこにあんだろ」
やらなきゃいけないことは色々あった。でもまあ、全部ひっくるめて頑張ろう。
さあ、頑張ろう。
お読み頂きありがとうございます。
2章分完結です。ようやくヒロイン登場の章となりました。
たたきだいとして書いたものは、ここまでで10話くらいだったのですが、1日を1話としたためにここまで長くなってしまいました。ビックリです。これからも頑張ります。




