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5月4週 休日

村33 町18

ダ19 討伐1 フ7

人1 犯1

魔100 中11 上1

剣100 剣中11 剣上1

回復30

採取43

草14 花5 実17

料理4

石工2

木工6

漁1

歌1

体55

女7

 異世界における輸送と移動の主役である馬車には、様々な種類がある。


 形、サイズ。何頭で引くか、車軸は何方式か、タイヤは何方式か。

 それらは時代や用途、それから価格によって驚くほど違う。


 輸送と移動の主役だからこそ、何十年何百年と改良開発を重ねてきたのだ。違うのも当然である。


 俺が今乗せてもらっている馬車は、長さ5mくらいで1頭引きの、天蓋付きの馬車。

 天蓋とは屋根のこと。いや壁のことでもあるか?

 屋根や壁と言っても木でできているわけではなく、布でできているが。


 布は弧を描く形で張られている。曲げた竹のような木が柱と梁代わりになっているため、それに合わせるとこうなるのかもしれない。

 そのため俺が乗っている一番後ろのこの場所から前を見れば、馬車の中はトンネルのような形になっていて、トンネルの向こう側にお爺さんが座っていた。


「どうだい、疲れないかい?」

 手綱を握るお爺さんは顔を少し後ろに向けて、俺にそう声をかけてきた。


 布の屋根と壁は、馬車の荷台の横と上を覆ってくれているものの、前と後ろは覆われていない。

 馬車は常に前へと進んでいるため、空気もそれと同様に流れていく。だから前にいるお爺さん側からは、小さな声を出すだけで俺に声が届くのだが、俺からは結構大きめに喋らないと声が届かない。


「大丈夫です。全然。それにしてもこの馬車あんまり揺れないですね」

「ああ、ありがとう。昔商会をやっててね、そこを辞める時に無理を譲ってもらったんだ。良い馬車だよ、馬もね。私にはもったいないくらいさ」

「商会をやってた? 社長さ――経営されてたんですか?」

「そうだよ。と言っても、息子がいなくなった歳までだから、もう20年くらい前になるけどね」


「え、あ、すみませ……」

「ん? 良いんだよ良いんだよ気にしないで。昔のことさ」

「……20年ですか」

「そう、20年。私も老けたが、それ以上に馬も馬車もね。見れば分かるけど、この馬車、実はもうボロボロなんだよ」


 お爺さんがそう言ったので、俺は馬車の中を見回してみた。

 確かに変色していたり、床の板が割れていたり、古い感じは見受けられる。だが綺麗に使っているのか、不潔な感じや不安な感じは一切ない。


「エト君はいくつだっけ?」

「16です。今年17になります」

「へえー。じゃあこの馬車の方が年上か。そう思うと、随分長く世話になったなあ。最近ガタがきてはいるけど、もってくれているものなあ」


 この馬車が安心できる空間だと思える理由の1つには、お爺さんの人柄による色眼鏡も入っているかもしれない。

 しかし、そのぐらいお爺さんは良い人だ。


「明日進む道は、ちょっとガタガタだからね、少し心配なんだけど。エト君にも迷惑をかけるねえ、酔ったりはしない方かい?」

「はい、全然大丈夫です。それよりガタガタって言うのは?」

「息子の墓がね、あるのは森の中なんだ。一応道ではあるんだけど、昔の道でね。新しい道ができてからは通る馬車が少なくなって、年々荒れてきてるんだよ」

 しかしお爺さんは悲しそうに笑った。


 息子さんが亡くなったのは、話の流れから察するに、もう20年前のことになる。

 それでもこうして毎週欠かさず墓参りに行くし、息子さんの話題になれば悲しそうな顔をする。


 いくら息子とは言え、20年前のことを。

 これが、人が死ぬということなのだろうか。

 いつまでもいつまでも忘れられない。心と記憶と感情に、こびりついたようにいつまでも残る。


 なら、直接手をかけた俺はどうなるんだろう。忘れられるのだろうか。

 相手は息子でもないし、近親者でもない。昔馴染みでもない。ただ、1人だった俺に優しく接してくれて、信じて仲間に入れてくれただけの間柄だ。

 俺の判断ミスで1人死んで、俺が関わることなく1人死んで、俺が殺して、そして最期まで俺に謝って死んでいった人達のことを、俺はいつ忘れられるのだろう。


 20年間ずっと悲しみ続け、その表情がシワとなって刻まれたお爺さんの顔を、俺は見ていられず、そっと目をそらした。


「昨日は夜、ずっと見張っててくれてありがとう。寝てても構わないんだよ?」

「……そうですね。寝てます」

「うんその方が良い。おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 お爺さんとそんな会話をした俺は、膝を抱えて目を瞑った。

 しかし、眠ることはやはりできない。お爺さんは落ち着いた善い人に見えるし、悲しいことも知っている。この先大金がある人生も、もういらないだろう。だから俺が眠っているからと言って襲ってくるようなことは、ほぼない。

 けれども俺は眠れない。

 

 カルモー村からここまで、色々な人に出会った。良い人もいっぱいいた。

 それに良いコトもたくさんした。ほぼ2ヶ月となった俺の異世界生活は、色に例えるならピンク色に例えられると思う。俺の短い人生で、一番充実していた時期かもしれない。

 けれども俺は眠れない。一切。


 自分で自分にあきれ返る。


 疑う罪悪感は、胃にジクジクと突き刺さっていった。


 そうして陽が沈んだ頃になって、俺達は目的の村へと辿り着いた。


「一緒にご飯食べるかい? 村長に挨拶して、荷を少し卸してからだから、少し遅くなってしまうけど」

「あ、いえ、その」

「そうかい? それじゃあ、おやすみ。また明日。私が起きて来なかったら、叩き起こしても良いからね。ははは」

「はは……。おやすみなさい」


 俺は宿屋で1人、リュックから買い込んであった食料を取り出し食べると、すぐさまベットで横になった。

 テトン町に着くのは明後日の夜のため、それまでは眠れないから、今の内に寝ておかなければ。そう思って。


 しかし寝つきは悪く、一向に眠れなかった。硬いベットの上で何時間もゴロゴロしている内に、いつの間にか俺は考え事をしていた。

 もし、魔物や盗賊が出てきたら、果たして戦えるのか、と。

 こちらを殺そうと狙ってくる相手は、殺さなければ止まらない。追い返すことも可能だろうが、それはきっと襲ってきた連中の半分を殺してからの話だ。果たして俺は、相手を殺せるのだろうか。また。


 答えは出ないまま、夜は更けていく。


「こんなんじゃ駄目だこんなんじゃ! 楽な人生を送りたいって言ってたら異世界に来ちゃったんだ。なら楽に生きていこう、楽に楽に。風俗……はもう行かないって決めたけど、でも、楽に考えて、楽しいことをやって! きっと明日こそ楽しい旅路になるはずだ! 馬車の中でグースカ眠ってやる!」


 俺はそう口にして、無理矢理眠るように薄手の布を顔までかけた。

お読み頂きまして、ありがとうございます。

久しぶりの投稿です。忘れないでいてくれましたら幸いです。今後とも宜しくお願いします。

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