4月1週 火曜日
魔1
剣1
旅行に行けば、体に合わないことにも度々出くわす。
特に食関連がそうだろう。
沖縄に行った際、どうにも食事が美味くなく、結局1人、ファーストフード店で食事をしたこともあった。
海外には行ったことがないが、行けば沖縄よりももっと、食事に関わる問題は増えるに違いない。
水からして合わない話もよく聞く。
であるならば、異世界はどうなのか。
食事は舌にあうのか。
水は体にあうのか。
隕石が落ちてくる夢を見て飛び起きた、異世界生活3日目。
パンツとタオルを購入した結果、残金が銀貨5枚と銅貨80枚まで減った、異世界生活3日目。
宿と食費を考えると、残る銀貨が今日で3枚と銅貨80枚になってしまう、異世界生活3日目。
にも関わらず、俺は、動くことができなかった。
狭い半畳ほどしかない、トイレから。
ぎゅるるるる、と腹がなり、形を見失った者達が次々と這い出てくる。
完膚なきまでの下痢だった。
ヘルプに聞くと原因不明だったが、宿屋の主人によれば、この辺りの水は、飲み慣れてないとお腹を下すのだとか。
お腹が弱い人は特に。
それを知らずに俺は昨日、二日酔いを直すため、浴びるように水を飲んでしまった。
だから当然、朝起きたその瞬間からもう、あの、完全にくだしていると分かる痛さに襲われていた。
俺は起きてすぐに、お腹を抑えて内股になりながら、宿屋の勝手口から出た先にある、木造の建物のトイレへ。
トイレはとても簡易的な建物であり、さながら、小さな公園の休憩所。
雨風や人の視線を遮ることのできる天井と壁があるだけ。
壁と天井の間には隙間があるため、しゃがまなければ外にいる人と目が合う。
また、便器は、下にただ穴が開いているだけの簡素なものである。
用をたす人は、壁がない部分から入り、穴にまたがって、その穴目掛けて落とす。
そんなシステム。
ボットン便所を、俺は名前しか知らないが、こういうトイレのことを言うのだろうか。確かにボットン、という表現が似合う。
だが、こんなトイレが昔は主流だったとは。到底信じられない。馬鹿なんじゃないのか。
正直、このトイレは10mの距離に近づくだけでもかなり臭う。
それに穴にまたがって用を足している今、中を迂闊に覗き込めば、トラウマになるような地獄が広がっている。
落ちてしまったら、一生悔いる体験になることだろう。
確かに俺もその地獄を作りあげた1人ではあるが、それでもだ。
ああ、こういう下痢が酷いときには、思わず神様に祈りたくなる。
だが今は諸事情あって、神様のことが憎くてたまらないので縋る対象がない。
「あああ、辛い」
痛い。
「トイレ臭い」
辛い。
「尻もヒリヒリする」
ちなみに尻の拭き方だが、トイレ内にある大きな瓶の水を使う。
柄杓で水を掬い、それをお尻にかけたり、手にかけたりして拭く方式だ。
それだと片手が犠牲になるのではなかろうか。
俺はきっと何かを間違えているはずだ、正しいやり方はこれではないはずだ。
そんなことを思ったのは、今は昔。
俺の片手は、既に汚れてしまっている。
俺はそう、遠い目をして笑って、異世界生活3日目を過ごした。
汚い話で申し訳ありません。