5月4週 月曜日 その2
村33 町13
ダ19 討伐1 フ6
人1 犯1
魔100 中11 上1
剣100 剣中11 剣上1
回復24
採取41
草14 花5 実17
料理3
石工2
木工5
漁1
歌1
体30
女6
俺は町を歩いて進む。
商店街を抜け、門前通りへ、門の前へ。
荷物は、剣1本とリュックサック1つ。
ここには服とタオルが入っている。
「ちょっとだけ外に出てきますね」
「おう」
そして門を守るように立っていた兵士2人に声をかけ、町の外に出た。
俺はキョロキョロと周囲を見回し、町の人や町の外で仕事をしている人達から見つからない場所を探す。
ヘデラル坑道町は、門の反対側こそ山が聳え立っているが、門側は高さ1mくらいの柵が続くだけ。
柵は強固で蹴破ることは不可能だろうが、視線を隠す役としては不足である。
また、町の周囲は背の低い草がちょっと生えているだけの焼け野原のような状態で、やはり身を隠す場所はない。
おそらく、採掘した銅や錫などを溶かすための火の材料にと、伐採し続けこうなったのだろう。
町から見えない場所に到着したのは、30分ほど歩いてからだった。
俺は改めて周囲を見回し、人がいないことを、そしてしばらく通らないだろうことを確かめ、手を伸ばして唱えた。
「○○○○○、アイテムボックス」
その瞬間、高さ70cmほどの先ほど作ったドラム缶が、かざした手の前に出現した。
「おおおおおおー」
分かりきった結果だったが、俺は思わずそんな感嘆の声をあげてしまった。
『ドワーフアイテムボックス 金貨1枚』
流石課金アイテムだ。
先ほど、風呂に入るためドラム缶を作ったは良いが、ゴロゴロと転がしながら運ぶ途中、他の町まで持ち運べないことに気付いた。
重さは、15歳のドワーフのアイテムボックスにも入ったので15kgもなく、運べないことはないだろうが、わざわざ乗せてくれる行商人がいるかは、きっと聞くまでもないだろう。
置いていき、行く先々の町で毎回作ってもらうことも考えたが、ここ以外の町ではあまり金属製品を見かけなかった。
この先手に入るかどうかは分からない。
そんな時、俺には課金があったことを思いだした。
調べてみると案の定、アイテムボックスを増やせる課金アイテムが存在した。
課金では世界を制したりピンチを脱したりすることこそできないが、痒いところに手は届く。
ちなみに俺が、実際に購入したのは、ドワーフのアイテムボックスではなく、
『カクシュゾクアイテムボックス 金貨10枚』
こちらの全ての種族のアイテムボックスが扱えるようになる、高いがお得な課金アイテム。
おかげで、エルフのアイテムボックスの木、ビーストの魔物、オーガノイドの石、マームの水、などなど。
ありとあらゆるものをアイテムボックスに入れられるようになった。
もちろん、ドワーフの金属も。
これでどこでも風呂に入れる。
とても嬉しい。
とは言え、少し後悔もしている。
金貨10枚は、地道に稼ごうと思ったら、相当辛い。
一生頑張っても貯まるか分からない。ダンジョンでの稼ぎは、ATKとDEFが高ければ高いほど、高い階で戦えるため、初期投資ができればたくさん稼げるのだろうが、しかし技量か仲間かどちらか欠ければそれでも無理だ。
この万能のアイテムボックスを利用すれば、多少稼ぐことができなくはないだろうが、しかしたかが知れている。
それに容量が増えたわけではないのだ。
アイテムボックスの容量は、年齢×年齢。
16歳のヒューマンなら、16種類のアイテムをそれぞれ16個ずつ入れられるアイテムボックスになる。
16歳のドワーフなら、16kgまでの金属塊をそれぞれ16個ずつ入れられるアイテムボックスになる。
そして16歳の俺のアイテムボックスは、各種族の16歳が入れられる物を16個ずつ入れられるアイテムボックスになっている。
つまりまあ、課金で手に入れたアイテムの容器や、金貨60枚以上をアイテムボックスに入れている現状、取捨選択をしなければ、何も入れられない。
さらに残念な情報だが、アイテムボックスが使える期間は、課金アイテムの美味しいキャンディーが入っていたビニール袋の説明書きを読むと、1年間となっている。
元を取るなら、この1年で、取らなければいけない。果たして元が取れるのか。……取れないだろうなあ。
まあ、課金は投資とは違うから、まず元を取るって考えがおかしいのかもしれない。
「今はとにかく、風呂に入れることを喜ぼう」
俺は、アイテムボックスからレンガをいくつか取り出す。
そして、ドラム缶を載せる土台を作った。もちろん、火が燃やせるように土台の間は開けて。
ドラム缶を載せたら、その中にアイテムボックスから水を出して貯めていく。水は町を出る途中の井戸で、汲んだ井戸水。
自分で井戸水を組み上げてはならず、それを専門にやる人に頼まなければいけないので大変だった。
アイテムボックスの存在がバレちゃいけないので、桶に水を入れてもらって、その人から見えないところに行って、アイテムボックスに収納し、「すみませんこぼしました」と言って戻ってまた汲んでもらわなければならなかった。
なお、10回近く繰り返した結果、最後の方は、汲む人が泣きそうになっていて、申し訳なかった。
でもそうしなかったら、俺が100リットルほど汲んで来なければいけないところだった。良かった思おう。……ん? アイテムボックスがあれば、どこかの川か沢にでも行けばすぐ汲めたのか? ……。うん、良かったと思おう。
そして、土台の隙間に、拾ってきた木の枝もがさっと放り込み、以前購入した課金アイテムで火を点けた。
火は徐々に大きくなり、モクモクと煙を出して、ドラム缶を、そして水を温める。
「どれくらいで温まるのか分からないけど、いやあ、完成だ!」
両手を上に掲げ、背筋をグーッと伸ばす。
それを機に、ストレッチのようなことを始め、薄っすらと汗をかき、シャドーボクシングに移行したところで、一旦ドラム缶に腕を入れてみた。
「お、風呂だ風呂」
まだちょっとぬるいが、しかし、この手を包む温もりは、紛れもなく2ヶ月振りの風呂だった。
俺は誰もいないことを再び確かめ、服を脱ぎ捨てて行く。
レンガに足を置き、足をドラム缶の中に入れる。ドラム缶の高さは70cm。股下よりも断然低いので、簡単にまたげる。ただ最近チンコがめちゃくちゃでかくなってきたので、前かがみになると触れてしまいそうだったのが怖い。
俺はチンコを手で横にどけながら、足をどんどん入れていった。
温かさが肌を通り肉を通り骨を通り、全身に広がっていく気がする。それがあんまりにも気持ち良く、俺はどんどん足を沈め、そしてようやく足はドラム缶の底に触れた。
「ふうー、気持ち良い。――あっつ!」
しかしその瞬間、ザバーンとお湯が溢れるのも厭わず、俺は足を引っこ抜いた。
「あっつ! あっつ! え? あっつ!」
ドラム缶の底は、超熱かった。
「え、なんで? あっつ……、火傷は? してない、か? え、めっちゃ熱い……」
茫然自失。そんな言葉が似合う表情を、きっと俺はしていることだろう。
めっちゃ熱かった。
「五右衛門風呂って、こんな熱いの?」
俺は再度足を踏み入れた。底は……、「あっつ」やはり熱い。
「もしかして足踏みするように入るとか? 交互に踏んで……。いやそれで済む温度じゃないような気もするけどなあ。体を浮かして入るとか? 縁持って。縁も割と熱んだけど……まあやってみるか」
そうして、俺は五右衛門風呂を初めて体験した。
しかし、ともかく熱かった。
常に足を浮かせていなくてはならず、少しバランスを崩して背中をつけば熱い。縁を持っている手も、どんどん熱くなってくる。
「んで、目が痛い。煙が目に染みる。木の枝は湿ってたら煙多いんだっけ? そう聞いたな。ヤバイミスった、目が痛い、目が痛い、ああああー」
最終的には、こんなドラム缶ここに棄てていってやろうか、と思うほどだった。
アイテムボックスの課金が勿体ないので、きっちりレンガも含めて回収したが、損した気しかしない。こんなんじゃあ、泣きながら必死に水を汲んでくれたあの人に申し訳が立たない。
「全然風呂の中で体をこするとかできなかったし」
ドラム缶に残っているお湯は汚れていたので、綺麗になったんだとは思うが、なった感じはしない。
脇の臭いを嗅いでみて、無臭は無臭、しかし、不安。
「一応これ使っとくか」
『カラダノニオイトール 銅貨20枚』
『カミノケキレイナールスコーシ 銀貨3枚』
カラダノニオイトールは、制汗スプレーっぽかった。いや、まんまだ。
そしてカミノケキレイナールスコーシは、トリートメントっぽかった。いや、まんまだ。
だから使えなかった。濡らした髪にお使い下さいって、普通にトリートメントじゃねえか。
「……」
もしかして。俺は似た名前のアイテムを購入していく。
『カラダキレイナールスコーシ 銀貨1枚』
「石鹸じゃねえか!」
『カミノケヨゴレオトーススコーシ 銀貨1枚』
「シャンプーじゃねえか!」
『カミノケヒキシメールスコーシ 銀貨2枚』
「コンディショナーじゃねえか!」
課金アイテムは、痒いところに手が届く。
が、しかし、なにか納得がいかない。損した気がする。
だからかは不明だが、町に戻って、水を汲んでもらったあの井戸の通りを通る際、あの人がもの凄くガン見してきたが、俺はそれを一切見返すことができなかった。ゴメンなさい。
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