5月3週 休日
村33 町12
ダ19 討伐1 フ6
人1 犯1
魔100 中11 上1
剣100 剣中11 剣上1
回復23
採取41
草14 花5 実17
料理3
石工2
木工5
漁1
体25
女5
ヘルプは、おおよそ周囲10km圏内の人の常識を表示する。
常識とはすなわち、全員に近い大多数が知っていることであり、知らなければ驚かれるような知識のこと。
だから誰もが知る当たり前が、ヘルプにはズラーっと書かれている。
ただし中には、知らなければ驚かれることであるのに、全員に近い大多数が知っているわけではない知識も書かれている。
例えば、職業の知識。
ダンジョンの魔物のリポップ時間は、一般常識ではないが、ダンジョンで生計を立てる冒険者ならば感覚的に大体は把握している。
知らなければ多いに驚かれ、本当に冒険者かと怪しまれるだろう。
他にも、男性の知識。
朝勃ちは男なら誰でも知っているが、女が知っているとは限らない。
きっと知らないことの方が多いだろう。
そのためそれらは、10km圏内の人の常識とはならない。
全員に近い大多数が知っていることではないのだから。
だがしかし、俺が知っていなくてはおかしいことだ。
冒険者であり、男である俺は、冒険者と男の常識を知っておかなければいけない。
だからこそヘルプには、それらの知識も書かれている。
俺が就く職業の知識、俺の性別の知識、他にも俺が知っていなくてはおかしいようなことが、色々と。
つまり、子供は知らないが、俺くらいの大人は誰もが知っている性行為についての常識も、もちろん書かれている。それも事細かに。
なるほど異世界は、地球に比べて随分お上品な世界のようだった。
セックスではない。おセックスだ。
時代背景が違うとは言え、地球はきっと原始時代の頃からお下品だっただろうに。江戸時代の頃には、タコに襲わせる触手プレイを閃いた国もあるくらいだからな。
その血を受継いでいるんだ。変態呼ばわりも仕方がないのかもしれない。
「科学が発展してないわ、魔物は出るわ。スキルなんて変なもんがあるわ、誰もが金で動くわ」
異世界に良いところはゼロだよ。
「そりゃあ、毎日起きたら涙も出てるわ。隣のおっさんにうるせえって怒られるくらいうなされるわ」
あまりにも多い違いと落差に、俺は思わず「はあ」とため息をついた。
けれども俺は、これからその違いを知っていきたいと思っている。
自分の常識ではなく、異世界の常識で生きよう、そんな風に考えている。
俺は部屋でしばらくヘルプを眺めた後、休日の町へ繰り出した。
採掘の音も聞こえなければ、鍛冶の音も聞こえなくなった静かなヘデラルの町。
俺が行った中で、最も人口が多いだけあって、休日の催しは一際多かった。
演劇、音楽、大道芸。
演説もあれば、何かしらの実験も行われている。
鎧を着た騎士が、馬に乗って行進する様子も見られた。もっともこれは、住民でも珍しいと目を輝かせる光景のようだったが。
演劇は聞くところによると、都会で今一番流行っている催し。
田舎ではまだまだ大衆には受け入れられていないし、良い台本も良い演者もいないが、それでもジワジワ広がってきているそうだ。
演目は歴史物ばかりで、脚本は必ず歴史上の戦争や個人の逸話を元に作る。
完全な創作というのは存在しない。そもそもそういった概念がないようだ。
そのためこの間俺が言われたロマール王も、過去に実在した人物である。100人の世継ぎを作った話が特に有名で、分かりやすくて下品なその逸話は、この町で受け入れられやすいからと演目にも入っており、実際に何度もやっている。今日俺が見た時も、ロマール王の絶倫話をやっていた。俺に言ったあの人も、これを見て知って言ったのかもしれない。
異世界のことを知っていくと、こういう発見もある。
ただ、これと一緒に思われたとか、いやこれより酷いと思われたんだっけ。……正直ショックだ。
「世界の女は俺の物だー、全員股を開けー」とか言ってたし、ロマール王、凄い最低の奴じゃん……。
音楽は、楽器もいくつかあるが、基本的には歌のこと。
歌の種類はそう多くなく、教会の歌、収穫の歌、この町の住人が知っているのはその2つくらい。ちなみにタイトルはない。タイトルがない理由を聞いてみたが、まずタイトルを付けるという概念がなかった。異世界には概念が何もない。
また歌にも演奏にも楽譜もなく、音階も定まっていない。
リズムは決まっているようだが、聞いている限りそれも厳密ではないようなので、全てが適当だ。
1回目聞いた時と2回目聞いた時で大きく違うのがなんだか許せない。初めて聞いた時の感動はどこへやら、といった感じだった。
大道芸は、色々なものも含んでの大道芸。
椅子を頭の上に乗せることも大道芸だし、ダンスも大道芸。地面に絵を書いて、色のついた石を並べるというのも大道芸。
大道芸なのかそれは、と思うものもあったが、見物人は喜んでいてお金も入れているので、まあ、大道芸なんだろう。
色々やっている。
他には、ゲームの大会のようなものも開催されていた。
削って形を整えた石を使ったゲームで、将棋やチェスのようなものが近いと思う。動かして取り合っている動きが目立つ。
ただ、ルールを聞いてもイマイチ理解はできない。
「だから、石があるだろ? 石を動かすんだよ。動ける方向には決まりがあって」
「その決まりってのが分からないんですけど」
「あん? そりゃあ……ほら、あの石は前に進むぞ。……あ、後ろか。まあそうやって動くんだよ」
「……」
聞く人が悪かったのか、そもそもファジーなものなのか。
ルールが明文化されていない異世界は、文化として完成された世界から来た俺にはちょっと理解不能なことが多かった。
異世界の常識で生きるということはすなわち、異世界の住人が楽しいと思っているものを楽しいと思えるようになろう、ということだ。
価値観を合わせ、同じ方向見て生きて、笑うタイミング泣くタイミングを揃える。
とどのつまり、異世界の住人に、俺はなろうと思ったわけだ。
しかし、
「……これ、楽しいですか?」
「え、楽しいだろ」
まだ、ちょっと早いかもしれない。
それからも町を練り歩いて、色々な催しを見たが……。
結論、異世界に楽しいものはセックスしかなかった。
異世界の住人になるという取っ掛かりがそんなものだとは、悲しい結論だ。
そうして俺は夜食を食べて、宿屋に戻ってまた眠る。
来週で5月が終わる。異世界生活2ヶ月。
短かったような、長かったような。
お読み頂きありがとうございます。
ブックマークや評価もありがとうございます。励みになります、そろそろ長い文章も混ざって来ますので、少しずつ面白くなっていく予定です。
さて、先日は大変失礼致しました。あと1話投稿しますと言っておいて、結局今日のこの時間になりました。本当にすみません。
なぜか私は後書きに、いついつ投稿する、あと何話で章が終わる、と書くと、破ってしまうようです。なのでこれからはあえて嘘を書こうかなと思います。
……、嘘が思いつきません。
そして多分次に投稿した時には、嘘をつくとかは忘れて普通に書いていると思います。本当にすみません。ともかく、本編を読んで頂き、そして長い後書きを読んで頂きありがとうございました。




