5月1週 休日
村30 町3
ダ19 討伐1 フ4
人1 犯1
魔100 中11 上1
剣100 剣中11 剣上1
回復6
採取35
草13 花5 実15
料理2
石工2
木工2
異世界に娯楽は、そう多くない。
しかし、人の心の安定のため、幸せのため、娯楽が一切ないなんてこともない。
心に余裕を持って町に繰り出したなら、娯楽は自然と目に入ってくる。
「へー、演劇とかあんのか」
街角に設けられた簡素な舞台で、3人ほどの演者が斬り合いを演じていた。
興味を引かれたので、俺は舞台の前に設けられた椅子に座る。
途端に小さな子供が駆け寄ってきて、「銅貨5枚です」と言ってカゴを差しだしてきた。俺は財布を取り出して、カゴの中に銅貨を5枚パラパラと入れる。さらに、それを確認して去って行こうとする子供を呼びとめ、ポケットにチップを突っ込んでやった。
ちなみに、演劇はよく分からなかった。
見始めてから30分ほどで終わったのだが、演技自体に難があったのか、ストーリーに難があったのか、あるいはそのどちらもか。面白いかったのかと聞かれると、どうにも……。
ただストーリーがイマイチだったことに関しては、座った時に既に佳境だったからかもしれない。
正しいストーリーを知らないため、本当に佳境だったのかどうかも不明だが、ともかく登場人物の関係が、全く分からなかった。どうしてそこまで恨みを持っているんだ貴様は、とずっと思っていた気がする。
もしくは、異世界の神話だとか、そんなものを題材にしたのか。
日本だったらヤマタノオロチをお酒で酔わして、とかそんな話を主体にアレンジを加えたようなもので、登場人物の紹介や因縁のストーリーをはしょっても、通じるものだったりするのかもしれない。
楽しみたいなら、異世界のそういうところも勉強しないと駄目なのか。なるほど。
めんどくせ。
……けど、した方が良いのかなあ。
俺はカーテンコールで出てきた演者達に拍手を送って、一緒に見ていた4,5人の客が立ち去っていくのを見てから立ち去った。
そうしてまた、町をキョロキョロと見回しながら歩く。
今度は歌声が聞こえてきた。
それは建物の中から。屋根の上には十字架が掲げられているので、教会だろうか。
十字架って部分は一緒なんだな、と不思議に思いながら、俺は立ち止まる。
そして何人かが教会の中に入っていくのと一緒に、俺も中へ入ると、奥に設けられた壇上の上では聖歌隊とでも言えば良いのか、そんな人達が歌っていた。
子供から老人までが、透き通るような声で。
ただ、歌は途中でよく止まるし、誰かが注意を受けてまた始まったりするので、本番じゃなくて練習のようだ。残念。
とは言え、割と聞ける。
まともな歌なんてここ1ヶ月全く聞いていなかったので、不覚にも感動してしまった。
歌か……。
カルモー村で、酒を飲んだ人が毎回歌いだす歌なら、なんとなく記憶にあるが……。しかしそれくらいで、あとは全然知らない。
生きていく上で、歌も覚えないといけないのか。
そう思って、次はなんとなく覚えてみようと聞いていたが、ふと、教会で奉られている神様が、俺に隕石をぶち当てて異世界に転移させた神様かもしれないことに気付いた。
段々イライラしてくる。
恨みが出てくる。
だから俺は悪態をつく前に教会を出て、そして再び町を彷徨った。
街角で絵を売っている人を見かけ、ジャグリングする人を見かけ、演説する人を見かけ。
色々なものを見ながらただひたすらに。
太陽の位置は、気付く度に変わっていって、疲れてベンチに座った頃にはもう、道路脇の建物に隠れて見えなくなるくらい傾いていた。
俺は、鬼ごっこに独自ルールを盛り込んで遊ぶ子供達を眺めながら一息つく。いや、一息というよりも、これはため息か。
昨日は人の仕事や生活を見て、今日は人の趣味や夢を見た。
しかし、どれだけ見ても、自分がしたいと思えることは見つからなかった。
何かを頑張ろうと思い至ることすらなかった。
彼等もまた、金貨80枚が貰えるなら人を殺すのだろうか、そう思うと、何かを積み上げる気には、やはりなれない。
元々、自分の才能の無さと才能の高さのせいで、積み上げる気がさらさらなかったのだから、余計にだ。
ため息の理由は、徒労と、あとは自分への落胆。
やっぱり俺は駄目人間だった。
金貨の手持ちが75枚もあるのだから、もっとはしゃいで、色々と夢を広げれば良いのに、何も無い。
天才とは言えなくても、秀才や優秀とは言えるのだから、もっと興味を持って、色々と挑戦してみれば良いのに、何もできない。
自分の人生が素晴らしいものだとは、到底思えなかった。
けれどまあ、だから、初志貫徹だ。
「課金を駆使して楽に生きていく。他人を見下しながら楽に生きていく」
流れ星に祈った通りのことをやろう。
「だからまずはこの金で装備を整えて。それからやっぱりダンジョンがある町に行くべきだな。目的地はジュザイム」
ここからだと1ヶ月近くかかるらしいが、まあ、問題ない。
「そこで、冒険者としてある程度の階で戦いながら、日々お金を貯めて。それでいつかはケビンさん達みたいに、村付き冒険者になれれば良い。いや、村は閉鎖的だから町付き冒険者の方が良いか」
他人に命を預けたりはできないから、ダンジョンにも1人で入ることになるけど、まあ、20階以下なら1人でもなんとかなるだろう。
1人じゃ駄目で、誰かと入ることになっても、レアドロップした品は向こうに渡すとか契約してれば、多分大丈夫。
「そして、いつか、庭付き一戸建てを買って、そこでゆうゆうと暮らそう」
才能はないし、努力もしないが、課金はある。
「さて、頑張ろうじゃないか。その第一歩として、明日は……、風俗に行こうっ」
鬼ごっこをする子供達に変な目で見られながらも俺は拳を掲げ、心に固く誓った。
お読み頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。




