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5月1週 金曜日

村30 町1

ダ19 討伐1 フ4

人1 犯1

魔100 中11 上1

剣100 剣中11 剣上1

回復6

採取35

草13 花5 実15

料理2

石工2

木工2

 睡眠時間の平均は、約7時間である。


 ただし個々人によって差は大きい。

 3時間しか眠らなくても良い、と言う者もいれば、12時間以上眠らないと眠くてたまらない、と言う者もいるだろう。


 また、同じ人でも毎日まばらである。

 7時間睡眠の次の日は8時間睡眠だったり、5時間睡眠の次の日は9時間睡眠だったり。


 平均はあくまで平均。


 何が言いたいかと言うと、2日間ロクに眠っていなかったのだから、10時間12時間、それ以上眠っても良いじゃないか、ということだ。


 陽が傾き、すっかり夕方になった頃、俺はようやく目覚めた。


「うお、もう夕方じゃん……。――って遅刻! あ、いや、異世界か。そっか」


 1人になって安心したのか、ベットに入った瞬間眠りに落ち、今の今まで一度も目を覚まさなかった。

 これぞ爆睡、と言える睡眠である。

 これだけ眠れば頭がボンヤリしたり、寝すぎで逆に辛かったりするものだが、なんだか体の中に溜まっていた眠気が全部とれた気がして、気分は案外爽快だった。

 起きた瞬間は寝過ごしたような感覚があって、とんだ勘違いもしてしまったが。


「それにしてもスゲー寝たな」

 西側にのみ設けられた窓から、太陽が見えているのだが、もうしばらくすれば山に消えて行きそうな位置なので、きっと夕方にしても遅い時間だろう。

 5時か6時か、もしかして7時とか? 眠った時間にすると、もしかして20時間近くいくのか?


 流石に寝すぎかな。

 頭はスッキリだが腰は痛い。


 目をこすった両手をそのまま上げて、背骨をぐいっと伸ばすと、気持ちの良い音がバキバキと鳴った。

「1日が完全に潰れたな、まあやることもないから良いけど」


 俺はベットから降りて、首を曲げ、肩を回し、全身をゴリゴリ鳴らしながら歩く。

 目的地は部屋の隅に置かれた水瓶。


 口呼吸になっていたのか、喉が渇いている。

 水瓶には水がたっぷり入っていた。昨日部屋に入った時に汲んでもらって、それから少し飲んだだけなので、ほぼ満杯だ。

 テーブルに置いてある水筒を水瓶の中に沈めると、ブクブクと空気の泡が出ると共に、どんどん水が入っていく。


 目一杯入ったところで水筒を上げ、その半分ほどを一気に飲む。残る半分は部屋の中を眺めたりしながらゆっくり飲んだ。

 ふと、昔の俺なら、入れて1日経った水なんて飲まなかっただろうな、と思った。人間生きてれば慣れるもんだ。


 水だけじゃなく、固いベットにもこれだけ眠れるほど慣れてきたし、普段の生活というか、例えば食事にも慣れた。


 空になった水筒をテーブルに置いて、着替えもしないまま宿の外に出た。

 そしてそのまま適当に歩いて、見かけた食事処へ入る。

 陽が落ちる前の一番込み合う時間帯であるため、店は満員御礼だったが、丁度席が1つ開いたのでそこに座る。

 店員を呼んで注文したところ、注文の仕方が拙かったからか、初めての客かと聞かれ、「じゃあ適当に持ってくるわ」と適当に持ってこられた。


 持ってこられた料理は、やはりマズイ。

 この店の名誉のために言っておくが、カルモー村の定食屋よりは随分美味しいと思う。

 ただ、どうしても味は薄く、そして臭みがある。あと肉は固くゴムのようで、野菜類なんかは逆にシャキシャキ感の欠片もない。カルモー村が下の下だとすれば、ここは……、ここもまあ下の下だな。


 まあ、しかし慣れた。

 全然食べられる。


 ちなみに、俺が最初に注文した品は、適当に持ってこられた中に1つもなかったが、まあこういうところも慣れた。


 また、言われた料金が、隣で同じ物を頼んでいた人に比べて割高だった気がしたので、「なんか自分のだけ高くありません?」と店員に聞くと、嫌な顔をされて値段を正常に訂正されるのも慣れた。

 いやこれは初めての経験だったが。

 まあ、世の中世知辛いと言う意味では慣れた。


 ムカツク店員にはチップを少なめに渡し、関係ない店員にはニコニコ笑顔でチップをたんまり渡し、俺は店を出る。これで次来る時は丁寧に対応してくれるだろう。世の中金だからな。


 店を出ると丁度、夕陽が消えていく時間だった。

 世界は夕暮れ色から夜の色へと変わっていく。

 綺麗な空だ。

 景色だけは良いよな、異世界。


 上を見上げて歩いたからか、何かしらに1回躓いて、俺は宿屋に戻った。

 ロビーで店主から、「明日は雨らしいから、窓閉めといてくれよな」と言われたので、部屋に戻ったらまず窓へと向かう。


 窓は入口から一番遠い場所に、50cm×50cmくらいの小さなものが1つ。

 俺の概念で言えば、これは窓ではなく穴だ。ガラスどころか、木すら存在しないただの開口部である。

 しかしまあ窓なので、部屋に立てかけられている木の板を穴にはめ込めば、閉じることができる。これがいつか窓に進化するのだと思えば、なんだか感慨深いような……、さっさと窓になれや、と思うような……。


 俺は窓を閉じる前に、そこから町の景色を眺めた。

 ここは3階なので、それなりに町の中でも高い建物である。見晴らしは良い。もちろん一番高い建物では全くないので、見渡せるわけではないが。


「明日から何しよっかなあ」

 数分間ボケーっと眺め、俺は呟いた。

 本気で、することがない。


「仕事……。つってもなあ」

 ボンヤリ眺めていた目を、今度は何かに注視するように色々向けてみた。人の営みは色々あり、仕事も色々ある。しかし……。


 俺は床に立てかけてある板を持ち上げ、窓を閉じた。


 そして水瓶の水を、幾分か手桶に移し、手桶の水で顔を洗う。

 ついでにタオルを濡らして体を拭いた。


 大分サッパリしたところで、俺はベットに入った。

 相変わらず固いベットだ。

 慣れたと言っても、やっぱり柔らかいベットが良い。物心ついた頃からのマットレス民である高貴な俺だ、長時間眠っただけで体がバキバキ言う固いベットなんでやめて欲しいね。


「……マットレス民ってなんだよ。ふふ」

 自分で考えた語句に自分で笑って、俺は天井を見上げた。

 点が3つあったら顔に見える現象をなんて言うんだっけ。スマホがないから調べられない。


 なんだっけなあ。

 天井をそのまま眺めながら、俺は考え、呟いた。


「元の世界に戻れないかなあ……」


 それは小さな呟きだった。

 色々ゴチャゴチャと考えて、その一角にひっそりあっただけの思いで、俺の総意ではない。


 けれど、ホームシックというやつだろうか、この間からずっと恋しい。

 頭の片隅から、そんなことがずっと消えない。

 呟いてしまってからは、それもひとしおだ。泣きそうなくらい消えてくれない。


 ……けれど、それでも、残念ながら、そんなものないことは分かっている。いや、俺にとってないことは、だな。


 俺は文系理系の選択では理系を選んだが、物理が得意なわけじゃない。

 世界を渡る方法に関しては、多分量子力学の分野なんだろうが、そんなもの高校生に分かるわけもない。


 もし、そんなものを俺が実現できるとしたら、他の誰かがとっくに実現してしまっている。

 異世界でも、元の世界でも。

 だが元の世界にはなかった。あったとしても俺は知らなかった。だから異世界にもないし、あったとしても知ることはできない。


「ここで生きるしかない、生きるしかないのか」

 何をして生きれば良いんだろう。


「つか5月なのに暑……」

 俺は、天井を見上げる目を閉じた。

お読み頂きありがとうございます。

久しぶりの投稿です。これからも頑張ります。

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