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5月1週 木曜日

村30

ダ19 討伐1 フ4

人1 犯1

魔100 中11 上1

剣100 剣中11 剣上1

回復6

採取35

草13 花5 実15

料理2

石工2

木工2

 魔物が闊歩する異世界。


 魔物は動物より遥かに強く強靭で、そして獰猛である。


 もちろん、全ての魔物が人を襲うわけではない。

 中には草食であったり、臆病であったり、蚊や蝿ほどに体が小さく弱い魔物もいる。肉食でも、人のような大きな生物を獲物に選ばない魔物もいる。

 しかしやはり、人を積極的に襲う魔物も少なくないのだ。


 人々は、魔物から己が身を守らなければいけない。


 そのためには、住処である集落を、ぐるりと柵などで囲うことが、手っ取り早い。


「おお、見えた見えた。あれがヘデラルだよ」


 沈みかけた太陽を左に見ながら、おっさんが指差すその先には、長さ2mほどの丸太が地面に突き刺さる形で、いくつもいくつも並んでいた。

 乗り越えて入れないようにだろうか、丸太の上は尖っている。


 ヘデラルとは、ヘデラル町。

 俺とおっさんが目指す町だ。


「へえー、ほんとに丸太で柵を作ってるんですね」

「言ったろ? カルモーの柵はしょぼいよ。まあヘデラルも、反対側は農場になってて、そっちはただの結った柵だけどな。いつか全部丸太にするらしいけど、何年先になることやら」

 おっさんはそう言って、手綱を一度振った。


 馬車を引く馬は、トコトコと走るそのスピードを今一度早め、ヘデラル町に続く土の道をぐんぐんと進んだ。

 そうしてヘデラルが見えてから10数分後、俺とおっさんはようやくヘデラル町に到着する。


 長かった。

 長い旅路だった。


 昼頃には到着する予定だったのに、大幅に遅れてしまった。途中で雨が降って、立ち往生してしまったのだ。

 小雨なら強行したのだろうが、あんな土砂降りではどうにもならない。


 仕方なく雨宿りができる洞窟へ避難したのだが、濡れた体の俺とおっさんは寒さに体を震わせていた。


 課金アイテムを使えばそれを解消できたが、しかし、みるからに怪しい物を見知らぬおっさんの前で使うわけにもいかず、

「おい、エト。毛布が1枚ある。こっちこい」

 おっさんと一緒に毛布にくるまった、あの3時間は、長かった……。


 長い旅路だった。

 こんなことなら、歩けば良かった。

 まさかおっさんと濡れた体のまま肩を合わせなければならないなんて。本当に長かった……。


 ……ただ、一番長かったのは、やはり夜だ。

 俺はほとんど眠ることができなかった。


 殺されるんじゃないかと、常に思っていたからだ。


 10年20年の関係が、金によってあっさり覆る瞬間を、俺は目の当たりにしてしまった。人の裏切りは、どんな関係にも起こり得るのだと知ってしまった。

 そうしてそれを知ってなお、見知らぬ人の前でグースカ眠れるほど、俺は図太い神経を持っていない。


 だから昨日の旅の間は一睡も、それどころか一昨日同じ部屋に泊まった夜も、俺は眠れていない。

 長かった。本当に長かった。

 洞窟の中、濡れた体で肩をあわせている間も、おっさんと体をくっつけている嫌悪感などよりただただ、おっさんが武器を持ち斬り付けて来たらどうしようと、そんな恐怖ばかりを抱いていた。


 ……俺は、随分嫌な人間になってしまったらしい。

 それが悲しく、虚しい。俺は一生、人の裏切りに怯えて生きていくのだろうか。


 ……。俺は心の中で1つため息をつき、忘れよう、そう思った。

 全て。


 俺には金貨80枚が待っている。

 一生遊んで……は暮らせないが、数年は豊かに豊かに暮らすことができる金だ。

 きっと楽しいことはたくさんできる。


 そうやってマイナスのことばかりに囚われるのは、人生の損失だ。

 楽しく、そして楽に俺は生きる。


 いやしかし、濡れたおっさんと肩をあわせるのはこれっきりにしたい。

 馬車移動がメインの異世界で、馬車移動までもがトラウマになりそうだぜ。


 そんなことを考えていると、馬車は、町の入口で立ち止まった。

 隙間なく並ぶ高さ2mの丸太が、4mほど間隔を開けたこの入口。

 そこには、カルモー村の騎士よりかは身軽な装備をした2人の男が立っている。彼等がここの門番なのだろう。


 男の内1人が、おっさんに向けて、「よっ」と声をかけた後、俺の方を向いて、

「見ない顔だな」

 と言った。顔を覚えているらしい。凄いな。


「ああっと、自分は――」

「こいつはあれだ、この前までカルモーにいた奴でな、乗せてきてやったんだ」

 俺が自己紹介でもしようかと声をあげると、俺の変わりにおっさんが色々と答えてくれた。


 どうやら俺の経歴を勘違いしているようで、説明には間違いも多いが、俺自身も俺の経歴をどう説明すれば良いか分からないので、ありがたい。非常に助かる。

 ただ、同情の目で見るのはやめろ。もう俺は貧乏じゃないぞ。


「ヘデラルは初めてだそうだから、説明してやってくれ。多分なにも分かってないだろ。それじゃあエト、俺は商品を卸してくるから、ここでな」

「ああ、ありがとうございました」

「なあに、金は貰ってんだから。また都合が合ったら乗っけてやるよ」


 俺が馬車から下りたことを確認すると、おっさんはそのまま馬車を走らせていった。

 町は、カルモー村の何倍の大きさもあり、それなりに入り組んでいる。馬車の走る音は聞こえるが、すぐに姿は見えなくなる。

 多分もう会うことはないんだろうな、なんとなく思った。

 まあ、惜しむ気持ちは全くないので、思っただけだが。


「そんじゃ、説明してやろう。ヘデラルの入町税だが――」

 そうして俺は、門番の男からヘデラル町の説明を受ける。


 町に入るための税金は、滞在期間によって違うこと。そしてその滞在期間によって、使える宿屋や施設が違うこと。

 あとは町での注意事項に、おすすめの宿屋、飯屋。近づいてはいけない場所。騎士団詰所と冒険者ギルドの位置。それから娼館の場所。


「俺のお気にに手を出すなよ?」

 そんな夢みたいな施設が、どうやらこの町にはあるらしい。カルモー村にはそんな気配すらなかったもんな。なんて素晴らしい町だ。


 俺は、多分それなりに気持ち悪い笑いをして、男に別れを告げた。

 が、引き止められ、「ん」と手を出される。俺は銅貨を1枚ずつその手の上に置いていき、都合5枚目で、「それじゃあヘデラル町にようこそ、ま、自由にな」と、解放された。


 人の優しさには金がいる。やっぱりどこもクソみたいな町だぜ。


 しかしまあ、銅貨5枚程度の小銭はくれてやろう。

 俺は今から大金を手にするのだから。


 ウキウキと浮つく心で、教えてもらった騎士団詰所に向かい、受付風のお姉さんに持っていた木板を提出した。


「ああ」

 と、お姉さんは得心のいったとでも言うような声を出し、「こちらへどうぞ」そう言って別室に案内してくれた。


 応接室のようなあまり広くない部屋で、俺は待たされる。

 待つこと数分。

 その数分は人生で一番長かった気がする。それに殺されるのではないかと、不安になるような数分間であった。「お待たせしました」そう言って入ってきたお姉さんに、危うく惚れるところだった。


「こちらが、青宝石蟷螂の青宝玉、通称ブルーサファイアの代金になります。金貨80枚。そこから手数料を引きました金貨72枚です。お確かめ下さい」

 アイテムボックスからせっせと出された金貨がテーブルに並ぶ。


 え、手数料引かれるの? と、衝撃を受けたが、まあ致し方ない。

 72枚でも大金には違いない。


 事実、凄かった。

 金貨1枚の大きさは、直径3cm、厚さ5mmほど。小さいと言えば小さいが、72枚もあればそれなりに存在感はある。

 いや、それなりにどころか、一言で言うと壮観だ。


「おほー!」

 むしろ一言そう言ってしまったくらいだ。はしたない真似を致しました。


 いるのがお姉さんだけで良かった。

 ただお姉さんは20歳そこそこの綺麗な人なので、割と恥ずかしいは恥ずかしい。

「分かる分かる」と微笑んでくれたので助かった。俺がイケメンじゃなければ、きっとそうは言ってくれなかったに違いない。世の中は世知辛いからな。


「○○○○○、アイテムボックス」

 顔を赤くしているだろう俺は、72枚あるのを確認後、アイテムボックスを開く。

 入れたい物に手をかざせば勝手に入るため、72枚はすぐさま収納できた。


 金貨銀貨銅貨は、おそらくどこかの魔物がダンジョンで落とすのだろう。ヒューマンのアイテムボックスになら収納可能だ。

 そのため、金貨72枚という、持ち運びが大きさ重さ共にかなりの負担になる物でも、楽に持ち運びができる。


 ふと、ヒューマンが世界の覇権を握っていなければ、通貨も違ったのだろうか、と思った。

 金貨銀貨銅貨をアイテムボックスに入れられるのはヒューマンだけ。できればお金はアイテムボックスに入れられる物にしたいだろうから、覇権をとった種族のアイテムボックスに入る何かしらが、通貨になる。

 エルフなら木。ドワーフなら鉄。


 まあ、考えても意味のないことか。

 とりあえず、ヒューマンが世界の覇権を握っている異世界で良かった。生きやすい。


「ありがとうございました」

 俺は応接室の椅子から立ち上がり、

「またのお越しをお待ちしています」

 お姉さんに見送られ、その部屋から、そして騎士団詰所からも出た。


 ……一応、尾行はされていないことを確認。

 そうして太陽が沈んだ頃になって、俺は門番の男が言っていたオススメ宿の門を叩く。


 「うーい」そんな挨拶をする無愛想な店主の宿屋は、1泊銅貨20枚の雑魚寝から、銀貨2枚の部屋まで広く取り揃えていた。

 俺は空き部屋の中から、銀貨1枚の1人部屋を借りた。


 案内をしてくれる従業員の後ろについて、3階に上がり、部屋を開け、従業員にチップを払い、扉を閉めて鍵も施錠。

 そして間を置かず、部屋の隅にあったベットにダイブ。


「痛い……」

 ゴン、と思わぬ硬さに鼻を打ち鼻をさするが、しかし、眠い……。


「大金手にしたばっかで落ち着かないけど、やっぱ2日寝てないと……」

 ひと仕事終えた。ひと息ついた。

 そんな感覚もあってか、俺はすぐさま深い眠りに落ちる。

お読み頂きありがとうございます。

また、ブックマークや評価いただきまして、本当にありがとうございます。


誤字を教えて下さった方も、ありがとうございました。


読んで下さる方のため、これからも頑張ります。

つまらなければ、どんどん言って下さい。その分面白いものを書けるよう努力致します。

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