4月4週 土曜日 その3
村26
ダ19 フ1
魔100 中11
剣100 剣中11
採取28
草11 花5 実12
料理1
『サファイアマンティス
ジョブ:青宝石蟷螂
HP:58 MP:88
ATK:96 DEF:96
CO:--』
残る最後の敵、サファイアマンティスを4人で囲む。
俺が正面。
時計回りに、ライアスさん、ケビンさん、ホロードさん。ヨランダさんは、ケビンさんの後ろ辺り。
ただし囲むと言っても、サファイアマンティスから、距離は4m以上保っている。
これ以上近づけば、見えないほど速い攻撃が襲ってくるから、迂闊には近づけない。
「ふうー。行きます!」
しかし、俺はそう言って飛び込んだ。
サファイアマンティスは4mの射程圏内に入った俺に反応し、360°どこまでも回るような顔を向け、さらには体の向きも変える。
その動きは素早く、まだ俺は4mの内の1mほどしか進んでいない。
そして、赤い線を引き、攻撃を仕掛けてきた。
「今です!」
だから俺はそう叫ぶ。
「おう!」
「おおおー!」
「どりゃあ!
その声に合わせ、他の3人が走りこむ。
4mの距離だ。攻撃にさらされていなければ、1秒もあれば詰められる。
サファイアマンティスが俺に攻撃しているその隙に、3人は各々の武器を振って、サファイアマンティスにダメージを蓄積させた。
『サファイアマンティス
ジョブ:青宝石蟷螂
HP:47 MP:88
ATK:96 DEF:96
CO:--』
そして、すぐさま3人はその場から離れる。
サファイアマンティスは、攻撃を行った3人の方を向こうとしたが、今度は俺が攻撃を行う。
横っ面を見せようとしたそこへ、1発。2発。
だからか、サファイアマンティスは、再び俺の方へ向き直って、攻撃を行なう。
振り向きざまに放たれた赤い線は3本。
躱して、躱して。
「――っとお!」
「エト!」
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:39+20 MP:100
ATK:18+10 DEF:16+4
CO:--』
「だ、大丈夫です!」
最後の一発は、鎧を掠めていったが、しかし無事は無事。
掠ってもダメージは受けるので、無事と言えるのかどうかは分からないが、生きてはいるし、防具が壊れてもない。
『ケビン
ジョブ:剣士
HP:46+20 MP:39
ATK:28+5 DEF:25+5
CO:流血』
『ライアス
ジョブ:戦士
HP:30+20 MP:9
ATK:28+10 DEF:20+9
CO:流血』
『ホロード
ジョブ:冒険者
HP:25+20 MP:75
ATK:26+5 DEF:19+4
CO:流血』
『ヨランダ
ジョブ:僧侶
HP:100+20 MP:24
ATK:54+5 DEF:22+5
CO:--』
しかし、なんともまあ、全員ボロボロだ。
ライアスさんの盾や兜は割れて、既に捨ててしまっているし、ホロードさんの胴の防具も、完全にパックリ割れている。とても重そうだ。
『サファイアマンティス
ジョブ:青宝石蟷螂
HP:47 MP:88
ATK:96 DEF:96
CO:--』
だが、勝てる。
あと半分!
サファイアマンティスはATKもDEFも高く、鎌の振りは、未だ一度も目に捉えられていない。
攻撃の威力は強力で、まともに食らえば一発で防具が破壊される。
もし今戦っているのが、野生の、フィールドのサファイアマンティスだったなら、俺達は既に全滅していることだろう。
間違いなくそうだと思えるくらい、サファイアマンティスは強く、絶望的な戦力差がある。
しかし、今戦っているのは、ダンジョンのサファイアマンティス。
それも、思考回路が、ファミコンスペックのプログラムで動く、16階のサファイアマンティスだ。
とる行動も、とれる行動も全て決まっている。
特に攻撃対象の選択は、ガチガチに。
攻撃対象は、一番最初に自身の射程圏内に入った者。
その攻撃が終わるまでの間は、例え攻撃を受けようとも、攻撃をキャンセルしない。
攻撃後は、自身に攻撃してきた者の内、最後の者を攻撃対象にする。
だが、対象が射程圏外へ出ようと動いていれば追いかけず、現在自身に向かって来る者を優先し攻撃する。
だから、勝てる。
「今です!」
俺は再び叫ぶ。
「おお!」
その声に応じて、ケビンさん達がサファイアマンティスに向かって駆け、攻撃を行なう。
先ほど同様、3人に対して、サファイアマンティスは攻撃しない。
「よし、引くぞ!」
「おう!」
攻撃をしようと反転を試みても、すぐさま俺に攻撃対象を戻し、攻撃を仕掛けさせる。
俺には赤い線が見えるから、攻撃はそうそう食らわない。
今のところ、サファイアマンティスの攻撃はほとんどが空振り。
この戦い方を続ければ、必ず勝てる。
ゲームみたいなもんだ。
こうすればこうなって、こうしたらああなって。
この動きが来たら、あれがきて。こっちがこうすれば、あれをやめて。
最初、どんなに絶望的だと思おうが、必ずやりようはある。
RPGでは無理だろうが、アクションゲームでは例えば、上手い人なら初期装備でラスボスに勝つこともできる。
攻撃パターンを見切れば、攻撃を全て回避できるし、あとは微々たるダメージでもずっと当てていけばいいだけだからだ。
俺だって、最初は苦戦していたのに、今は裸装備でクリアできる、なんて遊びをしたこともある。
今もそんな感じ。
楽しくてたまらない。
「ガンガン行きましょう!」
「おー!」
さっきは、人間に勝てるようにできていない、と言ったが、あれは間違いだった。
ダンジョンでの戦いは、頭を使う人間だからこそ、勝てるようにできている。
サファイアマンティスのHPは、ついに30を切った。
だが、しかし。
残念なことに、これはゲームではなく、人生で。
そして、俺達もゲームのキャラクターではなく、人間だった。
サファイアマンティスは決まった行動を取るが、俺達が必ずしも同じ行動を取れるわけではない。
ゲームのキャラクターなら、攻撃後の硬直時間も、回避した際のロール幅も、毎度同じだろう。しかし俺達は毎回毎回バラバラだ。
間違った行動もする。行動に慣れが出て少し変えたりもする。疲れもある。恐怖を覚えることも。コケたりだってしてしまう。
ゲームではラグが出れば一気に負けてしまうことも多いが、人間の戦いは、どこにもかしこにもラグだらけ。様々な要因で、狂ってしまう。
そして一度狂ってしまったなら、それだけで死ぬのが人生だ。
「ぐああ!」
「ケビン!」
ケビンさんが、弾き飛ばされた。
攻撃にではない。方向転換する際の尻尾の振りというか、そんなようなものに。
なんともマヌケな言葉である。
だが、頭を上げれば4mを越すサファイアマンティスの体は非常に大きく、重い。尻尾がぶち当たるというのは、例えるなら自動車との衝突のような威力がある。
『ケビン
ジョブ:剣士
HP:46+20 MP:30
ATK:19+5 DEF:25+5
CO:骨折 流血 混乱』
数m飛び、ゴロゴロと地面を転がるケビンさんは、HPこそ減っていないが、腕は折れ、鼻から血をたれ流し、脳震盪でも起こしたように、動かない。
「大丈夫か!」
そんなケビンさんへ、ライアスさんが駆け寄った。
ケビンさんは、うめくような声を出す、が、やはりすぐには動けそうにない。
例え攻撃が迫っていても。
「――ライアスさん、ケビンさんを早く! スキルが!」
仲間への攻撃を示す黄色い線を見て、俺は叫んだ。
簡単なプログラムで動くダンジョンの魔物は、スキルを使うタイミングも決まっている。
サファイアマンティスは、対象が正面4mの距離にいて、そこから遠ざかろうとする場合、第二段階のスキルを使う。あの、両腕で抱き込むように伸びてくる攻撃だ。
そして、正面かどうか関係なく、自身から8m前後の距離で止まっている場合、第一段階のスキルを使う。あの、斬撃の攻撃だ。
ケビンさんの位置は、丁度そんな位置。
8m。
体の向きを素早く変更するサファイアマンティス。
攻撃を防ぐ為に、自らを攻撃対象にしようと、俺は再び射程圏内に足を踏み入れる。ホロードさんもマズイと思ったのか同様の考えで、槍を構え一気に突撃した。
「うおお!」
「でえええ!」
だが、俺は今まで、赤い線が引かれてから、怯ませる以外で、その攻撃が中止された場面を見たことがない。
赤い線が引かれたということは、攻撃が決定されたということに他ならない。黄色線も同様だろう。
だから、俺とホロードさんが必死になっても、攻撃を止めることはできなかった。
サファイアマンティスは鎌を振るう。
簡単な振りだったが、それだけで斬撃は放たれ、高速で、一直線に、ケビンさんの太腿を駆け抜ける。
「ぐああああ!」
『ケビン
ジョブ:剣士
HP:30+20 MP:30
ATK:19+5 DEF:18+4
CO:欠損 骨折 流血』
混乱は治ったものの、足の防具は壊れ、そして足は欠損状態に陥った。
ダンジョンなので、実際には無傷だが、太腿から下が無くなったと同様の扱いになるはず。それが回復するまでは、歩くことも不可能になるだろう。
状態異常がいつ回復するかは知らないが、すくなくとも10分20分の話ではない。今の戦いには復帰できない。
それどころか、近づかれれば確実に死ぬ。状態異常が回復する頃、生きているかすらも分からない。
「うおおおおー、来い、こっちだ化け物ー!」
「ホロードさん、下がって!」
それを察したのか、ホロードさんはサファイアマンティスに果敢に攻撃を仕掛けた。
だからサファイアマンティスは、攻撃目標をホロードさんに定め、当たり前のように、黄色い線を2本、ホロードさんにむけて引く。
「ホロードさん、早くっ。下がって、下がって下さい!」
俺は必死に叫んだが、ホロードさんの耳には届いていない。
サファイアマンティスの鎌が、ビクっと動くと、それはやはり目に見えない速度で振られ、2度、ホロードさんを切り裂いた。
「があ――!」
『ホロード
ジョブ:冒険者
HP:0+5 MP:70
ATK:26+5 DEF:13+3
CO:流血』
ホロードさんは宙を舞う。
しかし、まだ生きている。ギリギリだが、生きている。
けれども、ドサッと地面に落ちたそこは、サファイアマンティスから丁度4mほど。4mと少しの攻撃範囲を持つサファイアマンティスからすれば、そこは攻撃範囲内。
ホロードさんは、衝撃で武器も落とし、尻餅をついている。すぐには動けそうにない。そして、サファイアマンティスの攻撃と攻撃の間隔は、非常に短い。
もちろんホロードさんが立ち上がるよりも早く、次の黄色い線が2本引かれた。
「う、うわああああ!」
お読み頂きありがとうございます。
ブックマーク、それから評価もありがとうございました。嬉しいです。
今日中にもう1話投稿しようと思いますが、土曜日はまだ終わりません。おそらくその5までいきます。
長くなって申し訳ないです。
油断すると、すぐに長くなります。




