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4月4週 金曜日

村25

ダ17 フ1

魔100 中11

剣100 剣中11

採取28

草11 花5 実12

料理1

 ダンジョンにおいて、部屋と通路の数は、階の二乗と決まっている。


 しかし、ボスのいる階だけは、そのどちらにもプラス1される。


 ボス部屋と、そこに行くまでの通路があるからだ。


 そしてダンジョンにおいて、部屋と通路の大きさは、階によって決まっている。


 1階から10階なら、幅、奥行き、高さ、それぞれ10mの部屋と、3m10m3mの通路。

 11階から20階なら、それぞれ20mの部屋と、6m20m6mの通路。


 しかし、ボス部屋と、そこに行くまでの通路だけは、その2倍の大きさがある。

 1階や6階は、20mの部屋で、6m20m6mの通路。そして、11階なら、40mの部屋と、12m40m12mの通路。というように。


 ダンジョンには法則があり、それは全ダンジョン共通のものだ。

 ところが、ボスが関わると、その法則は少し変わる。


 1階から10階は、連続攻撃ができないのに、ボスだけは2回連続攻撃ができる。

 ATKやDEFは、階の2倍のはずなのに、ボスだけはそのさらに2倍のATKとDEFを持つ。


 そんな風に、プラス1や2倍されるのだ。


 厄介なことである。


 だが、予想はできる。


 だからこそ、俺は最終階、16階のボスに挑みましょうと言っていた。


 16階のボスのATKとDEFは64。

 半端じゃなく高い数値で、ATK28で攻撃しても、2ダメージ。反対にDEF28に攻撃されれば、11ダメージ。

 こちらが、最大の5回連続攻撃を決めても10ダメージで、あちらが最大の3回連続攻撃を決めてくれば33ダメージ。


 少し、差は大きいが、必ず勝てる。


 1回の攻防で10ダメージを入れられるのなら、10回チャンスがあれば良い。

 回復役の回復は、1回に1か2しか回復しないが、それだけ回復できれば、33ダメージは3度まで食らえる。4人いるのだから、合計で12回の攻撃が耐えられるというわけだ。


 10回のチャンスを作るのはとても簡単。

 誰か1人が、無防備にも攻撃を食らっている間に、他の3人でタコ殴りにする。そんな頭の悪い戦い方ですら、余裕で勝ちきれのだ。


 HPが見え、ATKDEFが見える俺だからこそ、導き出せるその勝利。

 俺が、16階のボスに挑みましょうと言ったのも、それが理由である。絶対に勝てる、そう考えてのこと。


 しかし、違った。

 俺は間違えた。


「――……」

 俺は、絶句していた。


 今朝早く、俺はいつ通りに目覚め、顔を洗うなどしてから、ケビンさん達と合流。

 一緒に朝食をとってから、装備を着たりなどの準備をして、いつも通りにダンジョンの黒いゲートに入った。


 いつもと違うのは、階だけ。

 一昨日、15階で、今までにない戦果を挙げられたことで、リーダーのケビンさんから、「16階に行こう」という提案があったのだ。


 16階に出てくる魔物は、ブルーマンティスというカマキリ。

 ケビンさん達いわく、鎌による攻撃が速く、防御も的確な、非常に強い魔物。数ヶ月前に1度挑戦したらしいが、その時も苦戦を強いられたため、それ以降は挑戦しないようにしていたのだとか。


 だが、再挑戦を決意。

 ブルーマンティスのドロップアイテムの売値は、銀貨1枚と銅貨60枚。その他の魔物に比べ、一際高い。倒せれば稼ぎも随分上がるため、もしかすると、ずっと行きたかったのかもしれない。


 夕食時に熱い思いを語られ、全員一致で、16階にやってきた。


 そして、ゲートから出た瞬間。

 本当に、出たその瞬間、目の前に、ボス部屋へと繋がる通路があった。


 1階2階3階辺りでは、ゲートから出た瞬間に、次のゲートがあったりボス部屋があったりは珍しくない。

 しかし16階は、256の部屋256の通路があるから、非常に珍しい。


 だから、


「これは……」

 ケビンさんは目をまん丸にして驚く。


「ボス部屋? こんなこともあるんだな」

 ライアスさんも同様。


「おおおスゲーな。珍しいこともあるもんだ。俺は2回目だけどな」

「それは階段じゃなかった? ボスは初めてでしょ?」

 ホロードさんとヨランダさんは、なんとなく嬉しそう。


 しかし、


「――……」

 俺は、絶句するしかなかった。


 間違いに気付いたからだ。

 計算が、根本から狂っていたことに、ようやく気づいたからだ。


 ダンジョンの法則は、ボスが絡むと変わる。それは正しい。

 変わるが、プラス1か2倍なので、予想できる。それも正しい。


 しかし、俺達が挑もうとしていた相手は、ただのボスではない。


 ダンジョン最終階の、ラストボスだ。


 ラストボスには、ボスの法則、プラス1か2倍の法則は当てはまらない。


 なぜなら、俺の目の前にある通路は、幅18m、奥行き60m、高さ18。そう、通常の3倍の大きさだった。


「こんな偶然もあるんだなあ。ってまあ、20階以下じゃ、無い話でもないんだっけ? 縁起物とか言われるのは、21階からか?」

「ああ、あのー、神様の……、なんだっけ? まあそう言われるやつだろ?」

「お前らそういうのよく知ってるよな。全然知らねえ」

「私は……、聞いたことあるような……、ないような……」


 ダンジョン最終階のラストボスに、普通のボスの法則が当てはまると思う方が馬鹿だ。

 当てはまるのは、おそらく、プラス2か3倍の法則だ。


 だから、攻撃回数は、きっと4回で、ATKDEFは96。

 こちらの攻撃は、5回連続でも7ダメージしか与えられないのに、向こうの攻撃は、たった一連の攻撃を受けてしまえば70ダメージにもなる。


 あまりにも馬鹿げた差だ。

 倒すには、15回、5連続攻撃をしなければいけない。

 そして、各自1度しか攻撃を受けてはいけない。


 きっと、毎度毎度、ボスは最大回数の攻撃をしてくるわけではないだろう。ポイズンスパイダーも、基本は1回攻撃だった。

 最終階のボスも、基本は2回攻撃かもしれない。

 だが、それでも、たまにはしてくるだろう。その時、HPが70以下なら、即死だ。


 それに、おそらくお供の魔物が2匹いる。

 11階では、ボスの他に、もう1匹魔物が出てくるのだ。プラス1の法則があるのだから。そして、最終階のボスにはプラス2の法則があるのだから、プラス2、2匹だ。


 ATKDEF96の化け物1体だけでも勝てないのに、そこに、ATKDEF32とは言え、ケビンさん達から強いといわしめる魔物2匹。


 絶対に勝てない。

 どう計算しようが勝てるわけがない。

 机上の空論だと笑われてしまうような計算ですら、そこには何一つ見出せない。


 俺は、果てしなく間違っていた。


「エト。……エトっ? おいエト!」

「え、あ、はい!」


 大きな声で呼ばれて、俺は顔を上げた。

 何度も呼ばれていたのだろうか、気が付かなかった。


「大丈夫か?」

「は、はい。全然……、なんでした?」


「いや大したことじゃないんだが、階段を上がったそこに、次の階段やボス部屋があることを、なんて言うんだっけって。忘れちまったからさ」

「あー、っと、すみません。分からないです」

「そっかそっか。すまんな」


 ケビンさんは、うーん、と指を顎に当て首をひねりながら、ボス部屋までの通路を進む。

 この通路に、魔物は入ってこないから、休憩には持ってこい。もうちょっと考えるつもりなのだろう。


 他の3人も同様に通路へと入って行く。

 ケビンさんのように悩んでいないが、最終階のボス部屋を見つけられた喜び、のようなものはあるらしい。少し楽しそうだ。


 だが、俺には、ケビンさんのようにくだらないことに悩む余裕も、他の3人のように非日常の偶然を楽しむ気持ちもない。

 あるのは、ダンジョンを討伐しよう、と言った意見を、どうやって取り下げるか、だけ。


 挑めば、確実に負けるのに、挑むわけがない。

 命は一個しかないのだ。


 しかし一昨日はあれほど挑もうと言っていたのだ。急に意見を変えるのもおかしい。

 理由を説明できれば良いのだが、ATKがDEFが、などと言っても通用しないだろう。頭のおかしいやつと思われるだけだ。……既に思われているかもしれないが。


「そうだ! 導きだ」


 すると、ケビンさんが大きな声で言った。考え事の答えを思い出したらしい。


「ああ、確かそんなんだったな」

「あー、みちびきか。あー、そういうやあなんか。なあ? ヨランダ」

「いや、私は聞き覚えなかったわ。知ったかぶりはよしなさい」


 3人も同調する。

 いや、2人は知らないようだ。ちなみに、俺ももちろん知らない。


「……導きは、確か、行けってことなんだったよな」

「そうだが、ケビン?」


「ああ、ライアス。俺は。……、皆、聞いてくれ、今日、ブルーマンティスと戦ってみて、戦えると感じたなら、明日、ダンジョン討伐に挑まないか?」 


「え?」


「皆、俺達も、変わる時がきたんだ。目の前にあるんだから、魔物と戦って消耗したりしない。これはチャンスだ。一世一代の。なあに、駄目そうなら、逃げ回れば良い。なんとかなるだろ」


 ケビンさんは言う。


「ケ、ケビンさん?」


「エト。お前が背中を押してくれた、ありがとう」


 俺の肩に手を乗せ、そんなことを。


 俺は以前、ポイズンスパイダーに挑んだ際、情報収集不足を悔やんだ。

 天才ではない俺には、ピンチや力不足を覆す力がない。勝てるだけの用意をして、勝てる戦いをしなければ勝てないのだ。


 だが、俺は、またしても情報不足のまま、皆にダンジョン討伐を勧めた。


 調べれば分かっただろう今持っている情報によれば、勝てる要素は何もない。

 勝てるだけの用意も、勝てる戦いもできない。


 天才なら乗り越えられる試練なのかもしれない。

 だが、ここには天才の1人もいやしない。


 凡人には、それが勝てる勝負になっているのかどうかすらも、分からない。


 馬鹿な話もあったものだ。


 俺は彼等に、ただ死ねと勧めたのだ。


「よし行こう!」

「ああ、やったるぜ!」

「行きましょう!」


 3人は口々にそう言った。


 止めようと試みても、できない。

 それどころか、俺を置いて、4人で行くつもりだったらしい。


 俺は若くて、才能があるから、もしかしたら死ぬかもしれない戦いには連れていけないと。

 そんなことを言われては、止められるはずもない。


 明日、俺達は、一緒に16階のボス、ダンジョン最終階のラストボスに挑む。


 ……。


 ダンジョンにはもちろん、命の危険がつきものである。


 命を賭して、魔物を倒す。そうやってお金を稼ぐ場なのだから、当然のことだ。


 しかしダンジョンにおいて、最も命を脅かす存在とは、魔物ではない。


 仲間である。

お読み頂きありがとうございます。


ブックマーク、そして評価、ありがとうございます。

これからも頑張ります。

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