4月4週 木曜日
村24
ダ17 フ1
魔100 中11
剣100 剣中11
採取28
草11 花5 実12
料理1
異世界では、生活格差が非常に激しい。
日本でも格差格差と問題になっているが、それ以上だ。
下を見れば限りない。
そこら辺でのたれ死んでいる人が、うようよといる。年老いて働けなくなった父や母を、自らの手で捨てに行く者も、あとをたたない。
しかしだからこそ、上を見ても限りない。
上の生活は、まさに天上人の生活。とても豊かなものだ。
そういった生活は、只人にはなんの関係もない。
生まれか、才能か、運か、そのいずれか、もしくは全てに秀でていない限り関係ない。
けれども、そんな生活を送りたいと思わない者もいないだろう。
「よっ、ほっ」
そのために、俺は今、頑張っている。
村から出たすぐのところにある、切り株ばかりの林。そこで、俺は剣を振る。
今日は木曜日。
ケビンさん達パーティーにとっての休養日。
本来休養日は、休日のことを意味するが、ケビンさん達は村付き冒険者。
休日はダンジョン前で張り込みをしなければいけない。
賑わっているダンジョンであれば、魔物がほとんど排出されないので、休めるのだろうが、カルモーダンジョンは閑古鳥が鳴いている。泣き喚いている。
大量排出からもう3週間が経ち、先週は1匹ずつ時間をおいて、5回ほど出てきたらしい。
フィールドのクレーアントはそこそこ強い。
ATK26DEF20もだが、普通に顎の強さやパワーも。
油断していれば、1匹相手だろうと、死ぬ可能性は十分にある。
そんな魔物を、いつ出てくるか分からないと待ち続けるのだから、身も心も疲れるだろう。
それを休養日と呼ぶことはできない。
そのため、月火水、金土休、その中日である木曜日に、休養日を設けているのだ。
それでも月に1度か2度は、木曜日にフィールドで狩りを行うそうだが。凄いバイタリティだ。
とは言え今日はそれもなく、完全な休養日。
だから、ケビンさんはヨランダさんと家にこもり、ライアスさんは釣りに、ホロードさんは……、何をしているのか知らないが、ともかく皆、思い思いに休んでいる。
そして、俺は、訓練に励んでいる。
剣を振って、剣を振る。
構えて、振って、構えて振って。
素振りをしているわけではない。
これは、仮想敵と戦っている。シャドーボクシングならぬ、シャドー……、シャドー……。シャドーボクシングと同じやつだ。
異世界に来て、かれこれ1ヶ月。
その間に戦った敵を思い浮かべ、戦っているのだ。
フィールドのクレーアント、ダンジョンのクレーアント、キングアント。
コガネオン、レッサートンボ、ブラウンスパイダー、ポイズンスパイダー、ゴキブリ。ライアスさん。
しまった、1人仲間が入ってしまった。
まあ、良いか。奴も敵だっ!
ともかく俺は今、そうやって練習している。
中々、実りある練習だ。流石シャドーボクシング。
異世界にシャドーボクシングがあるのかは知らないが、ないのなら、是非導入したいね。
流行らせたい。
むしろ流行らせなければならない。なぜなら、達人のシャドーボクシングは、戦っている相手が見ている人にも分かると聞くが、俺は達人じゃない。
きっと戦っている相手は、見ている人に分からないだろう。
つまり、見ている人は、きっと、俺をさらなる変人と認定する。
悲しいかな。
まあ、良いか。
いや良くはないな。
ともかく俺は、練習を続けた。
敵対者を思い浮かべ、そして、赤い線、青い線を意識して。
シャドーボクシングなので実際には、赤い線も青い線も見えていないが、頭には必ず思い浮かべる。
そしてそれに沿うように防御をして、それに沿うように攻撃をするのだ。現在の練習において、この意識こそが、最も重要なもの。
課金による赤い線と青い線は、凄い。
いや、凄いなんてもんじゃない。
あれに従うだけで、どんな人でもどんな化け物にでも、勝利を収めることができるだろう。
どれだけ才能がない凡才でも、天才と同じ成果を生み出せる。もしかすると、天才にだって打ち勝てるかもしれない。
あれは凄いもんだ。
だから、戦いにおいて、赤い線が来たら躱し、青い線が見えたら攻撃する。
これに徹するのが一番強い。
徹したからこそ、俺はポイズンスパイダーに勝利でき、昨日も活躍できた。
そのため、これからはそれを念頭において戦う。
今日の練習内容も、全ては赤い線青い線に素早く反応するための練習である。
条件反射、脊髄反射、なんと言うのかは分からないが、そのレベルで動けるよう、習得したい。
「よっ、ほっ。とうっ! 良い感じだな」
俺は、剣を振りや体の動きが、どんどん良くなっていることを感じ、そんな自我自賛をした。
……けれど、そんな言葉とは裏腹に、もしかすると浮かない顔をしているのかもしれない。
やはり、物悲しいものはある。
赤い線や青い線に反応するだけ、ということはつまり、俺の意思や技術は必要ない、ということだ。
これから積む経験も、戦いには必要ない。
新たな技を身に付けたとしても、戦いには活かせない。
結局線を辿れるかどうかのみが、俺の実力で、それ以外のことは一切関係ない。
強くなりたいと俺は努力しても、これから何一つ実らない。
でも仕方がない。
赤い線や青い線を無視して、それより良い結果を残すだなんてことを、俺はできないのだから。
自分で考えて、赤い線青い線を、ただの指標のように思っていたのなら、俺はポイズンスパイダーに殺されていたし、ケビンさん達に夢も見せられない。
俺ができないのが悪い。
才能がないのが悪い。
まあ、問題ない。
俺は浮かない顔を、普通の顔に。そして、やる気に満ちた顔に変えた。
努力が叶うとか、そんなことに、未練はないと言ったら嘘になる。嘘になるが、諦めるのには慣れている。
それに、線に従う人生を選んだ方が豊かな暮らしが待っているのだ。金が稼げるからな。
1年限定だが、少ない努力で豊かになれるのなら、そちらの方が良いに決まっているじゃないか。
「とう! せい! なん! ぼく!」
俺は思いを断ち切るように。
そして、これからの未来に思いを馳せるように。
ケビンさん達と一緒に、世界に羽ばたいて行くような、多分そんなことはないけど、そんな風な思いを馳せて、とにかく剣を振った。
才能がある程度あって良かった。
多分1日で凄く強くなれた。
拝啓神様。
異世界で楽に生きるが良いと言っていたが、確かに、異世界では楽に生きられそうです。
「いや、飯はマズイしトイレも臭いからそんなことはねえな」
こうして休養日は過ぎていく。
明日は16階を目指すらしい。とても楽しみだ。
お読みいただきましてありがとうございます。
また、ブックマーク、評価、感想、そしてレビューをありがとうございます。
これからもより一層頑張りたいと思います。
そろそろ一章も終わります。
よろしくお願いします。




