4月4週 水曜日
村23
ダ16 フ1
魔100 中11
剣100 剣中11
採取28
草11 花5 実12
料理1
フィールドの魔物を倒し、稼ぐ者は、探検者と呼ばれる。
ダンジョンの魔物を倒し、稼ぐ者は、冒険者と呼ばれる。
名前は違い、やることも違い、求められる力も違う。
しかしそのどちらの人生も、脆く儚い。
金がなければ何もできず、才能がなければ何も叶えられない。
日々貯蓄しコツコツと金を貯め、日々鍛錬しコツコツと力を強め、そうして、さあ、いざ新天地へ、そう思っても、年齢による時間制限がきっと通り過ぎている。
俺は良い。
別に良い。
小学6年生の頃、少年野球で、生意気にも関東の代表に選ばれた。
都道府県選抜ではチームのエースとして、それなりに勝っていたため、生意気じゃないかもしれないが。
でもあの頃俺は、自分のことを天才だと思っていた。やっぱり生意気だったかもしれない。
だって、小学4年生で野球を始めて、投手を始めたのは、5年生の冬かそれくらいだ。それで代表に選ばれるのだから、小学生の頭ならそう思う。
そうして俺は、関東代表チームの練習に参加した。
しかしそこで、俺は、自分が天才じゃないことを悟った。
同じポジションだった。
一目見た時、思わず目を奪われた。多分、周りの大人もそんな感じだっただろう。
俺は、そいつに追いつこうと練習を頑張った。
けれど、どんなに練習を頑張っても、そいつには勝てる気一つしなかった。
多分、試合の成績で考えたら、俺の方が防御率は良かったと思う。勝率もそうだと思う。
相手をするチームは代表チームなのだから、どこも強い。その中で俺の方が良かったのだから、おそらく当時は、俺の方が投手として上手かったのだろう。完成していたのだろう。
それでも、俺が悩むことを、そいつは当たり前のようにできて、そいつが悩むことを、俺は理解もできなかった。
才能の違い、というのは、誰の目で見ても明らかで、同じブルペンで投げていても、誰も俺の方を見はしなかった。
だから俺は、その時から諦めている。
色々なものを。
だから俺は良い。
別に良い。
努力が報われなくても構わない。そんなもんだ、仕方がない。
俺は、自分の人生に、たった一つの誇れることすらなくても、そんなもんだと諦められる。
けれど思うのは、だからこそ、天才の人生が、輝いていなくてはいけない、ということ。
そして、凡人の頑張って頑張って頑張った人生が、輝いていなくてはいけない、ということ。
俺は、凡人がする努力よりも、圧倒的に少ない努力で上に行き、あざ笑いたい。
「その程度かぼんくら共め」と、煽りに煽りたい。
凡人のゴールも、俺のゴールも、『ここから先は天才しか進めません』と、そんなことがかかれたマスだ。
クソみたいなマスだ。
そこにようやっと辿り着いた凡人を、嘲笑するように笑いたい。ご苦労様でしたと声をかけてあげたい。なおも進もうとする、文字すら読めない凡人を、顎が外れるほど笑ってやりたい。
だが、同時に、そんな凡人が羨ましくてたまらない。
そんな人生を歩みたいんだと、心の底から叫んでしまう。
だから、凡人が、頑張って頑張って頑張った人生は、輝いていなくてはいけない。俺が憧れてしまうほど、輝いていなくてはいけない。
凡人には、例え報われることがなくても輝いてしまうほどに、努力してもらわなくてはいけない。
諦めるのは俺だけで十分だ。
凡人の人生は、例え何一つ叶わなくても、努力と活力と夢に溢れた、素晴らしいものではなくてはいけないのだ。
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:100 MP:100
ATK:18+10 DEF:20
CO:--』
「ケビンさん、行きましたよ!」
「おう!」
だから俺は今、猛烈に頑張っている。
ケビンさんに向かって、14階から出てくるホッパグラスホッパーというバッタの魔物が迫る。
ホッパーグラスホッパーは、体高こそ20cmくらいだが、長さは1mを越え重量も結構あり、そしてかなりのジャンプ力を持っている。
攻撃方法は、そのジャンプ力を活かした突進で、足か腹、どちらか目掛けて頭突きをかましてくる。
その飛翔速度は結構速く、飛ぶと思ってからほぼ一瞬で着弾するため、防御は難しい。
それゆえに4人の間では、結構強い魔物扱い。
ライアスさんが盾に身を隠し防ぐしかなかった。
しかし、
「腹です。今!」
「どりゃあ!」
今回は、ケビンさんが、剣で、攻撃によって受け止めた。
そしてそのまま、ケビンさんは剣で3度ほど攻撃。
直後、俺も参戦し、5度ほど攻撃。大ダメージを与える。
「おおお! できた! できた? できたぞ!」
「すげーな」
後ろで休憩中のライアスさんとホロードさんが感嘆の声をあげる。
俺とケビンさんもあげたいが、戦闘中なので我慢。
「エト! 行ったぞ!」
「大丈夫です!」
ホッパーグラスホッパーは、今度は俺の元ヘ。攻撃体勢を取る。
しかし赤い線が見えている俺には、どこへ攻撃が来るかなんぞ、手に取るように分かる。
俺は突進による頭突きを躱し、すれ違いざまに斬りつける。
そうしてホッパーグラスホッパーは、自らの突進の勢いそのままに、壁に頭をぶつけた。
どうやら、それでも怯むようだ。
俺はすかさず攻撃。1発、2発、3発、4発斬りつけた。
そこへさらにケビンさんが走り込んできて、剣を振りかぶる。
しかし、それは当たらない。
11階からは、魔物も攻撃に対し回避行動を取るようになっている。怯みからギリギリ回復していたホッパーグラスホッパーは横っ飛びして、ギリギリではあったが、ケビンさんの剣を躱した。
だから、俺は横っ飛びした場所にまわりこんでいる。
「せやっ」
そして、強烈な攻撃で怯ませる。
そこからまた3発ほど攻撃して、ケビンさんと交代。今度はケビンさんの攻撃もしっかりと命中した。
俺は頑張っている。
自分への攻撃の赤い線、自分からの攻撃の青い線。
味方への攻撃の黄色い線、味方からの攻撃の緑の線。
課金の力を使いこなし、まるで天才がパーティーに入ったかのような成果を生み出している。
だから、今日のこのパーティーは、昨日よりも随分強くなった。
だからか、小休止の時間は、昨日よりも笑顔が多くなった。
「何匹倒した? もう40越えたか? まだまだ行けそうだな」
「俺達、本気でやったら、こんだけやれるんだな」
「30代だからって、勝手にセーブしてたけど……、いやあ、若い奴が入るってすげえな」
「あんたら凄いわ」
水を飲み、干した肉などを口に入れながら、4人は口々に嬉しそうに話している。
「本当に構えたところに来てな。こう」
「これで俺も随分楽ができる。見ろ、いっつもこの軽快な動き」
「はっはっは」
「なにやってんのもう」
このまま乾杯でもしそうなテンションだ。
これが、俺の頑張った成果か。
「ん? なにやってんだエト。1人でにやけて」
「え? にやけてましたっ?」
「こっちに来い、お前のおかげだ。凄いなエト!」
「っとと」
ケビンさんにからかわれ、ライアスさんに肩を組まれる形で引き寄せられる。本当に乾杯しそうなテンションだ。
多分、定食屋に行ったら、実際に乾杯するんだろう。
20年来の友がいて、10年以上組んでいただけあって、4人は気心が知れている。良いパーティーだ。最高のパーティーだ。
乾杯の時も、俺に酒は飲ませてくれないだろうが、本当に。
「それで、どうです? ダンジョン討伐、行けそうじゃありません?」
だから俺は、4人の人生が輝いているものであれば良いと思う。
夢に向かって努力できる人生であれば良いと思う。
「15階でこれだけやれるんだから、16階のボスも絶対行けますし、装備さえ整えば20階以降でも戦えますよ!」
だから、4人が口を揃えて行け行けと言ってくる、他の町のダンジョンへ、一緒に行こうと、また言った。
返事は、すぐには貰えなかった。
けれど皆、真剣に悩んでくれた。早急に出す答えてでもないから、それで良いと思う。
だから、俺は頑張るだけだ。
行けると思えるように、行きたいと思ってくれるように。自分達には、こんな大きな夢が見られる、と思ってもらえるように。
そうして、ダンジョンでの活動を終え、俺達は騎士団の詰所でドロップアイテムを換金し、そして定食屋へ。
1人頭、銀貨8枚を越える大きな稼ぎに盛り上がり、またまた豪勢な食事をとった。
ちなみにやっぱり、酒は飲ませてもらえない。
お読み頂きありがとうございます。
感想もありがとうございました。
これからも頑張ります。




