表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/144

4月4週 水曜日

村23

ダ16 フ1

魔100 中11

剣100 剣中11

採取28

草11 花5 実12

料理1

 フィールドの魔物を倒し、稼ぐ者は、探検者と呼ばれる。


 ダンジョンの魔物を倒し、稼ぐ者は、冒険者と呼ばれる。


 名前は違い、やることも違い、求められる力も違う。


 しかしそのどちらの人生も、脆く儚い。


 金がなければ何もできず、才能がなければ何も叶えられない。


 日々貯蓄しコツコツと金を貯め、日々鍛錬しコツコツと力を強め、そうして、さあ、いざ新天地へ、そう思っても、年齢による時間制限がきっと通り過ぎている。


 俺は良い。

 別に良い。


 小学6年生の頃、少年野球で、生意気にも関東の代表に選ばれた。

 都道府県選抜ではチームのエースとして、それなりに勝っていたため、生意気じゃないかもしれないが。


 でもあの頃俺は、自分のことを天才だと思っていた。やっぱり生意気だったかもしれない。

 だって、小学4年生で野球を始めて、投手を始めたのは、5年生の冬かそれくらいだ。それで代表に選ばれるのだから、小学生の頭ならそう思う。


 そうして俺は、関東代表チームの練習に参加した。


 しかしそこで、俺は、自分が天才じゃないことを悟った。


 同じポジションだった。

 一目見た時、思わず目を奪われた。多分、周りの大人もそんな感じだっただろう。


 俺は、そいつに追いつこうと練習を頑張った。

 けれど、どんなに練習を頑張っても、そいつには勝てる気一つしなかった。


 多分、試合の成績で考えたら、俺の方が防御率は良かったと思う。勝率もそうだと思う。

 相手をするチームは代表チームなのだから、どこも強い。その中で俺の方が良かったのだから、おそらく当時は、俺の方が投手として上手かったのだろう。完成していたのだろう。


 それでも、俺が悩むことを、そいつは当たり前のようにできて、そいつが悩むことを、俺は理解もできなかった。

 才能の違い、というのは、誰の目で見ても明らかで、同じブルペンで投げていても、誰も俺の方を見はしなかった。


 だから俺は、その時から諦めている。

 色々なものを。


 だから俺は良い。

 別に良い。

 努力が報われなくても構わない。そんなもんだ、仕方がない。


 俺は、自分の人生に、たった一つの誇れることすらなくても、そんなもんだと諦められる。


 けれど思うのは、だからこそ、天才の人生が、輝いていなくてはいけない、ということ。

 そして、凡人の頑張って頑張って頑張った人生が、輝いていなくてはいけない、ということ。


 俺は、凡人がする努力よりも、圧倒的に少ない努力で上に行き、あざ笑いたい。

 「その程度かぼんくら共め」と、煽りに煽りたい。


 凡人のゴールも、俺のゴールも、『ここから先は天才しか進めません』と、そんなことがかかれたマスだ。

 クソみたいなマスだ。

 そこにようやっと辿り着いた凡人を、嘲笑するように笑いたい。ご苦労様でしたと声をかけてあげたい。なおも進もうとする、文字すら読めない凡人を、顎が外れるほど笑ってやりたい。


 だが、同時に、そんな凡人が羨ましくてたまらない。

 そんな人生を歩みたいんだと、心の底から叫んでしまう。


 だから、凡人が、頑張って頑張って頑張った人生は、輝いていなくてはいけない。俺が憧れてしまうほど、輝いていなくてはいけない。

 凡人には、例え報われることがなくても輝いてしまうほどに、努力してもらわなくてはいけない。


 諦めるのは俺だけで十分だ。

 凡人の人生は、例え何一つ叶わなくても、努力と活力と夢に溢れた、素晴らしいものではなくてはいけないのだ。


『キジョウ・エト

  ジョブ:異世界民

  HP:100 MP:100

  ATK:18+10 DEF:20

  CO:--』


「ケビンさん、行きましたよ!」

「おう!」


 だから俺は今、猛烈に頑張っている。


 ケビンさんに向かって、14階から出てくるホッパグラスホッパーというバッタの魔物が迫る。

 ホッパーグラスホッパーは、体高こそ20cmくらいだが、長さは1mを越え重量も結構あり、そしてかなりのジャンプ力を持っている。


 攻撃方法は、そのジャンプ力を活かした突進で、足か腹、どちらか目掛けて頭突きをかましてくる。

 その飛翔速度は結構速く、飛ぶと思ってからほぼ一瞬で着弾するため、防御は難しい。


 それゆえに4人の間では、結構強い魔物扱い。

 ライアスさんが盾に身を隠し防ぐしかなかった。


 しかし、


「腹です。今!」

「どりゃあ!」

 今回は、ケビンさんが、剣で、攻撃によって受け止めた。


 そしてそのまま、ケビンさんは剣で3度ほど攻撃。

 直後、俺も参戦し、5度ほど攻撃。大ダメージを与える。


「おおお! できた! できた? できたぞ!」

「すげーな」

 後ろで休憩中のライアスさんとホロードさんが感嘆の声をあげる。


 俺とケビンさんもあげたいが、戦闘中なので我慢。


「エト! 行ったぞ!」

「大丈夫です!」


 ホッパーグラスホッパーは、今度は俺の元ヘ。攻撃体勢を取る。

 しかし赤い線が見えている俺には、どこへ攻撃が来るかなんぞ、手に取るように分かる。


 俺は突進による頭突きを躱し、すれ違いざまに斬りつける。

 そうしてホッパーグラスホッパーは、自らの突進の勢いそのままに、壁に頭をぶつけた。


 どうやら、それでも怯むようだ。

 俺はすかさず攻撃。1発、2発、3発、4発斬りつけた。


 そこへさらにケビンさんが走り込んできて、剣を振りかぶる。


 しかし、それは当たらない。

 11階からは、魔物も攻撃に対し回避行動を取るようになっている。怯みからギリギリ回復していたホッパーグラスホッパーは横っ飛びして、ギリギリではあったが、ケビンさんの剣を躱した。


 だから、俺は横っ飛びした場所にまわりこんでいる。

「せやっ」


 そして、強烈な攻撃で怯ませる。

 そこからまた3発ほど攻撃して、ケビンさんと交代。今度はケビンさんの攻撃もしっかりと命中した。


 俺は頑張っている。

 自分への攻撃の赤い線、自分からの攻撃の青い線。

 味方への攻撃の黄色い線、味方からの攻撃の緑の線。

 課金の力を使いこなし、まるで天才がパーティーに入ったかのような成果を生み出している。


 だから、今日のこのパーティーは、昨日よりも随分強くなった。

 だからか、小休止の時間は、昨日よりも笑顔が多くなった。


「何匹倒した? もう40越えたか? まだまだ行けそうだな」 

「俺達、本気でやったら、こんだけやれるんだな」

「30代だからって、勝手にセーブしてたけど……、いやあ、若い奴が入るってすげえな」

「あんたら凄いわ」


 水を飲み、干した肉などを口に入れながら、4人は口々に嬉しそうに話している。


「本当に構えたところに来てな。こう」

「これで俺も随分楽ができる。見ろ、いっつもこの軽快な動き」

「はっはっは」

「なにやってんのもう」


 このまま乾杯でもしそうなテンションだ。


 これが、俺の頑張った成果か。


「ん? なにやってんだエト。1人でにやけて」

「え? にやけてましたっ?」


「こっちに来い、お前のおかげだ。凄いなエト!」

「っとと」


 ケビンさんにからかわれ、ライアスさんに肩を組まれる形で引き寄せられる。本当に乾杯しそうなテンションだ。


 多分、定食屋に行ったら、実際に乾杯するんだろう。

 20年来の友がいて、10年以上組んでいただけあって、4人は気心が知れている。良いパーティーだ。最高のパーティーだ。

 乾杯の時も、俺に酒は飲ませてくれないだろうが、本当に。


「それで、どうです? ダンジョン討伐、行けそうじゃありません?」

 だから俺は、4人の人生が輝いているものであれば良いと思う。

 夢に向かって努力できる人生であれば良いと思う。


「15階でこれだけやれるんだから、16階のボスも絶対行けますし、装備さえ整えば20階以降でも戦えますよ!」

 だから、4人が口を揃えて行け行けと言ってくる、他の町のダンジョンへ、一緒に行こうと、また言った。


 返事は、すぐには貰えなかった。

 けれど皆、真剣に悩んでくれた。早急に出す答えてでもないから、それで良いと思う。


 だから、俺は頑張るだけだ。

 行けると思えるように、行きたいと思ってくれるように。自分達には、こんな大きな夢が見られる、と思ってもらえるように。


 そうして、ダンジョンでの活動を終え、俺達は騎士団の詰所でドロップアイテムを換金し、そして定食屋へ。

 1人頭、銀貨8枚を越える大きな稼ぎに盛り上がり、またまた豪勢な食事をとった。


 ちなみにやっぱり、酒は飲ませてもらえない。

お読み頂きありがとうございます。

感想もありがとうございました。


これからも頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ