4月4週 火曜日
村22
ダ15 フ1
魔100 中11
剣100 剣中11
採取28
草11 花5 実12
料理1
スキル。
それはまさしく、ファンタジーを象徴するもの。
いわゆる魔法だ。
何もないところから、火を起こす、水を出す。
怪我を癒す。硬い鉄を手を触れるだけで曲げる。それから、ドロップアイテムを瞬時に武器や防具にする。
スキルは、様々な超常現象を起こすことが可能である。
スキルは1つのジョブにつき、4種類存在する。
それは自由に付け替えたりだとか、そういうことができるものではない。完全に決まっているもの。
であるから、ジョブによっては、スキルも魔法的な要素が薄かったりもする。
例えば、戦士。
戦士のスキルは、自らのATKを上げる。DEFを上げる。
それから、仲間のATKを上げる。仲間のDEFを上げる。この4つ。上昇しているのは確かだが、目には見えないため、中々魔法とは思えない。
また、僧侶も。
僧侶のスキルは、HPを回復する。毒や麻痺などの状態異常を回復する、ただし強い毒や麻痺は回復しない。
範囲内のパーティーメンバーのHPを回復する。流血や欠損などの状態異常の回復をする、ただし酷い流血や欠損は回復しない。
確かにHP回復のスキルを使えるのだが、しかし、HPは傍から見えないし、治る流血や欠損というのも本当にわずかなものらしく、目に見え辛い。
一応、自然由来の毒などの回復も可能であるため、二日酔いや腹痛は治せたりする。それはそれで魔法に見えなくもないが、しかし、どちらかと言うとそれは薬だろう。
冒険者は、案外魔法っぽい。
冒険者のスキルは、白ゲートの中に、ダンジョンとは違う別空間を一定時間作り、少しの間休めるようにする。黒ゲートを出現させ、白扉の前へ行く。
黒いゲートがどちらの方向にあるか、道を表示する。黒ゲートの中に入ると、下の階へ行けるようにする。
火を起こしたりするわけではないが、ありえないことが起こるは起こる。
とは言え、ダンジョン外では何一つ使えないのだから、魔法とは言い難いかもしれないが。
スキルはこんな風に、ジョブによって大きく違い、魔法的でもないものも多い。
しかし共通しているのは、便利であること。
どのスキルも使えて損はない。
ダンジョンを生業にする者の生活も、そうでない者の生活も、どちらも豊かにしてくれるだろう。
だが、全ての者がスキルを使えるわけじゃない。
スキルを使うには、MPと、詠唱が必要だ。
「○○○○○○○○○○ スラッシュ」
ケビンさんがそう言って剣を振ると、剣の先から斬撃のようなものが放たれた。
それは数m先の、ホロードさんに襲いかかろうとしていた、アイアンバグという、鋼色のてんとう虫に当たり、その表面を切り裂く。
『ケビン
ジョブ:剣士
HP:79 MP:96
ATK:28 DEF:28
CO:--』
こんな風に。
MPは、どうやら100÷ATKを消費する。
ATKが28なら、3.57なので、4から2。
ATKが高ければ高いほど、MP消費が少なくなるという、またしても武器依存の項目。武器を買う金がなければ、スキルすらも使えない。
ちなみに、なぜ100なのかは不明。ただ、他のどのジョブでも同様に100である。
ヨランダさんのHPを回復させるスキルも、ライアスさんの攻撃力アップのスキルも100÷ATK。
しかしヨランダさんが、毒を治すために使ったスキルは、500÷ATKのMPを消費していた。
なので、値が100や500の理由は不明だが、ともかくスキルの種類によって決まるものだと思われる。いや、種類じゃなくて、段階と言った方が分かりやすいか。
4種類のスキルを、4段階のスキルと捉えれば、1段回目より2段階目の方が間違いなく強いスキルだ。MP消費が多くて当然。
だからきっと、1段回目が100、2段階目が500、3段階目4段回目はもっと、となっていくのだろう。
MPはそんな感じ。
詠唱は、アイテムボックスを使う際と、同じようなもの。
意味の分からない言葉の羅列。
発音を正確に文字で表記することは不明だが、アイテムボックスの詠唱は大体5文字、ケビンさんが使ったスラッシュ、つまり1段回目のスキルは10文字。状態異常を回復するキュア、2段階目のスキルは15文字。
どんどん長くなる。
そしてこの詠唱は、中々曲者。とにかく難しいのだ。
アイテムボックスを使う詠唱は簡単だ。俺も、ちょっと練習しただけでできた。
詠唱の文言自体は、使おうと思い浮かべれば頭の中に浮かび上がるため、後は唱えれば良いだけだし。
しかしスキルの方は……、比べ物にならないほど難しい。
練習しても、ちょっと無理だった。まあ、スキルが使えなくても問題ないさ。
「ヌンッ」
ケビンさんの剣士ジョブのスキル、スラッシュを食らい、アイアンバグは怯んだのか動きを止めた。
なお、「鳴き声!」というツッコミは我慢する。
異世界にはツッコミ文化がないので、変な人になってしまうから。
「た、助かったぜケビン!」
「良いってことよ」
アイアンバグが怯んだその隙に、尻餅をついていたホロードさんは立ち上がる。
そして己の武器である槍で、アイアンバグを突っつき、また戦いを続けた。
アイアンバグは、15階から出てくる魔物。
であるから、ここはダンジョン15階。
16階が最高階のカルモーダンジョンにおいて、最後から2番目という非常に高い階だ。
今日は、朝からこの階で戦っている。
「ふうー終わった終わった」
「いやあ、ちょっと焦っちまったぜ」
「ホロード。エトに良いトコでも見せようと思ったのか?」
「ち、ちげーよ。はっはっは」
ケビンさん達パーティーは15階でも戦っていたことがあるため、手慣れたものだ。
「うーん、ホロード、確かにエトの方が活躍してるかもしれないからな。良いトコ見せないとな!」
「ライアスまで何言ってんだ。そ、そんなんじゃねえってよ。はっはっは」
そして俺も、課金の力があるため、既に戦力になれている自覚がある。
「いやいや、自分なんてまだまだです。ホロードさんの戦いにも、勉強させていただいてばかりです」
ホロードさんの冒険者スキルを使い、白ゲートから休憩所に入り、小休止。
「エト、謙遜しなくて良いのよ? 私達なんて、万年10階のうだつが上がらないパーティーなんだから。ねえ?」
「おいおい。若いやつの前で夢のないこと言うなよ。それにカルモーダンジョンは16階までなんだから万年10階も当然だろ?」
すると、俺の日本人的な謙遜に、ヨランダさんがそう言うと、ケビンが笑って応え、
「ま、でもエトは才能あるよな。金が貯まったら、ジュザイムとかに行った方が良い。ダンジョンが2つあるし、どっちも50階越えてるからな」
そう続けた。
「ジュザイムですか?」
「ジュザイム。ジュザイム市だ。ここらの地方じゃ一番でかい」
「そうだなあ、カルモー村にいてもなあ。このダンジョンも、稼げないし迷惑だからって、討伐指定されてるダンジョンだし。それに討伐したら討伐したで村付きの仕事もなくなるし、先細りが見えてる」
「俺たちぁ、一生この辺りの階でうろちょろする感じだもんなあ。10年くらい頑張って金貯めて、そんで討伐したとしても、俺達いくつだ?」
「さあ? 一応最高到達は、30階なんだけどね。でも、このくらいが丁度良いわ」
周りの3人も、口々に似た様なことを言う。
「エトなら、もっと高い階で戦えるさ」
そして最後は、こんなことを。
小休止も終わり、再び俺達は15階の冒険を続けた。
5人パーティーで、後衛1人であるため、魔物が2匹でてくれば、それぞれに2人で相対する。
魔物が1匹なら、2人が相対、2人が休憩となる。
だから、戦いは凄く楽だ。
1人でやっていた頃とは全然違う。
また、俺以外のコンビネーションはバッチリで、魔物に次々と攻撃を加え、何かミスがあっても即座にカバーできている。
俺が入ると、それは少し崩れるが、それでも経験豊富であるからか、未熟な俺の動きにも上手く合わせてくれ、戦いは上手く回る。
こんな人達が、自分達は大したことがない、と言っている。
「ありがとよエト。でも、冒険者になってから、もう何年だ? 12くらいからやってるから、もう20年くらいか。随分やってる、こんくらいは誰でもできるようになるさ」
「俺とケビンは一緒に冒険者になってな。だからずっとパーティーを組んでる。そりゃあ動きも分かる」
「俺はヨランダと、それからミリアンって奴と元々6人くらいでパーティー組んでてな、でも解散して、こっちに加わったのさ。もう10年前くらいになるか? あん時俺達いくつだったっけ?」
「そうね、確かあれは大きい台風があった年だから、20……、ってコラ、年齢がバレんでしょうがっ」
確かに、この4人は、大きな才能を持ち合わせていない。
俺は、天才に憧れ、凡人に嫉妬して、ずっとそうやってきたせいか、見るだけで才能の有り無しを見分けられる。
もちろんパッと見で分かるとか、超能力じみてはいないが、何かやっている姿を見れば、普通に。
特に天才は、本当に光り輝いているように見える。
だから4人は、凡人だ。
天才でもないし、秀才でもない。別に駄目駄目なわけでもない。100人の人がいれば、40番から60番くらいの、本当に凡人だ。
光輝くところは何も無い。
けれど、けれども。
「そっか組んでからもう10年経つのか。早いもんだ。村付きにもなれたし。このダンジョンの討伐は、しても自分の首を締めるだけだろうが、今でも生活は安定してる」
「一回くらい、名を上げたかったけどな。ダンジョン討伐は名前が残るし、16階なら金貨1枚と銀貨60枚が貰える。凄いよなあ」
「それに確か、ブルーマンティスの2個上って言ったら、サファイアマンティスだろ? レアドロップなら、金貨80枚はするって聞くぜ?」
「うわっ。凄いわね。それだけあったら良い装備が買えるわ。良い装備さえあれば、ジュザイムとかでもやってけるかもね。20階層も中盤なら、魔物の取り合いとかもないだろうし」
「俺達がジュザイムか……。中々厳しいよなあ、契約で、このダンジョン討伐まではいなきゃいけないし。それからって考えると。まあ、でも、だから、エト、お前は頑張れよ。お前ならやれる。ちゃっちゃとこんなところから出て、そっちでもな」
ケビンさん達は、応援してる、と、そう言って笑う。
だから俺は、1つ提案してみる。
「じゃあ、もう今年か、今月か、とにかく即効でダンジョン討伐して、皆で一緒にジュザイムに行きましょうよ」
「え?」
4人に才能が足りないのなら、俺が補えば良いだけだ。
少なくとも俺には、100人の人がいても1番に、1万人いても3番か4番くらいになれるだけの才能がある。
驚く4人をよそに、なんとなく、俺は努力の意義を、生まれて初めて見出せた気がした。
お読み頂きありがとうございます。
佳境です。
頑張ります。




