4月3週 木曜日
村17
ダ11 フ1
魔100 中8
剣100 剣中8
採取28
草11 花5 実12
料理1
ダンジョンではもちろん、命の危険がつきものである。
命を賭して、魔物を倒す。そうやってお金を稼ぐ場なのだから、当然のことだ。
しかしダンジョンにおいて、最も命を脅かす存在とは、魔物ではない。
仲間である。
魔物のATKとDEF、つまり実力は階によって決まっている。
ATKやDEFが見えない者でも、そんなことは知っているだろう。
魔物の実力自体は、その魔物の種族によってまた異なるため、ATKやDEFが同じでも違うが、しかし、驚愕するほど違うわけでもない。
だから、予めどれくらいの危険度があるか分かっている。
予め、どれくらいの実力をもっていれば良いか分かっている。危険なことは、そう多くない。
もしピンチに陥ったとしても、走って逃げれば良いだけだ。
欠損の状態異常を足に受けていれば走り辛いだろうが、そうでないなら白いゲートまで全力疾走して、そして飛び込めばそれで簡単に逃げられる。
簡単に逃げられないのは、ボス戦くらいだ。
ボス戦には制限時間がついていて、その制限時間が過ぎると、強制的にダンジョンから出されてしまうのだが、逆に言うとそれまでは出られない。
逃げ回るには、中々長い時間である。
しかし、ボスには、自ら挑まねば、出会うことすらない。
通常の倍のATKとDEFと、さらなる行動パターンを持っているボスに挑むのだから、誰しもが相応の準備は事前にするはずだ。しない奴は、天才じゃないのに自分の才能を鼻にかける奴くらい。
ボス戦を重く捉えていれば、逃げなければならなくなること自体、稀である。
だから、魔物との戦いは、慢心せず無理もしなければ、命の危険はない。
けれど、仲間は違う。
仲間の裏切りは違う。
確かに、仲間のATKやDEFは、装備している武器防具から大体分かるだろう。
実力もいつも一緒に戦っているのだし、分かる。足の速さにもよるが、逃げて逃げきれないこともない。
それでも、仲間の裏切りは違う。
仲間の裏切りは、必ずと言って良いほど、最悪のタイミングでくるに違いない。
魔物に挟まれた時とか、白いゲートから遠い時とか、何かに気をとられている時とか、HPが残り少ない時とか。
前と後ろから攻撃されれば、ダメージは尋常でなくなるし、逃げられもしないだろう。
白いゲートから遠ければ、逃げている間攻撃され続け、死ぬかもしれない。
何かに気をとられていれば、首を斬られる。ダンジョンではそれでも死なないが、首を斬られた欠損の状態異常は、首から下全てが動かなくなるというもの。そうなれば死ぬしかない。
HPの残量は分からないだろうが、何度も攻撃を食らった頃合を見計らってこられれば、かなり厳しい。一回の攻撃で死ななくても、数回攻撃されれば死ぬかもしれない。
仲間からの裏切りを、想定内と考えている者はいないだろう。そんな仲間は仲間と呼ばない、むしろ敵だ。
仲間に裏切られる、というのは、いつだって想定外のことである。
だからこそ、裏切られれば、ほぼ確実に死ぬ。
だから、ダンジョンにおいて、最も命を脅かす存在とは、魔物ではなく、仲間である。
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:100 MP:100
ATK:18+5 DEF:20
CO:--』
ダンジョン6階から挑戦し、7階へ。
ATKが8も上昇したからだろう、7階の魔物をあらかた倒し終えた後も、体力HP共に余裕があったため、俺は8階に挑戦した。
そしてゴキブリと、いや、シャープクローチと死闘を繰り広げる。
俺の兄貴分、ケビンさんが勧めるだけあって、シャープクローチはあまり強くない。ドロップアイテムの売値が半分以下のクレーアントの方が、よっぽど強いくらいだ。
だから、肉体的にはキツクない。
肉体的には……。
精神的には……。
途中、見慣れてマシになったが、よくよく考えた結果、見慣れたことにもショックを受けた。
ゴキブリに慣れてきただなんて、おぞましい。
ゴキブリを気持ち悪いと思えない人生は嫌だ。
もっと綺麗なものだけを見て生きていく人生を、俺は生きたい。一体いつになったら俺の異世界生活に潤いがやってくるんだよ。
誰かと辛さを分かち合いたい。
そんなことを思いながら、結局8階の魔物を、あらかた片付けた。
ドロップアイテムは大量。それらを騎士団詰所に持ち込み売却する。
「はい、確認しました。コガネオンの外殻が1、羽が1枚。レッサートンボの羽が3枚、ブラウンスパイダーの糸が7に、足が1、ポイズンスパイダーの肉が1つ。パンチングモスの羽が5枚で針が4つ。それからシャープクローチの油が8つですね。合計で銀貨19枚と銅貨50枚ですね」
手数料を抜いて、銀貨17枚と銅貨55枚を手にした。
最高記録。
心の中でガッツポーズをして、俺は定食屋に向かう。
そして、決して美味しくはないが、豪勢な食事に舌鼓を打っていると、
「お、エト、今日は金持ちそうだな」
ケビンさんが話しかけてきた。
待ち合わせをしているわけではないが、科学技術が進んでいないこの異世界では、火を起こすのも面倒で、薪で火を燃やし続けるにも金がかかる。
そのため、定食屋で飯が出てくる時間は、大抵決まっていて、利用する全員が、ほぼ一同に会する。
だから、いつものことだ。
「こんばんわ。ついに8階まで行きましたよ」
俺は、ケビンさんにそんな風に応え、雑談が始まった。
そして、
「そっか、8階でそんくらい稼げるようになったか。じゃあエト、良かったら、俺達のパーティーに入らないか?」
「え?」
「俺達は普段13階か14階か、そのくらいで戦ってるんだが、8階を1人で戦えるんなら、十分やってけると思うんだ」
「え、あっと」
「普通、パーティーってのは信頼できる相手とだけで組むから、昔馴染みってのが多いんだが、俺はエトは信用できると思う。どうだ?」
「そ、あの」
「ま、考えといてくれ。明日明後日と俺達は隣村まで行かなきゃいけないからいないし、月曜日までに決めてくれたら良い。仲間になろう、待ってるぜ」
そんな風に、雑談は終わった。
仲間、仲間?
仲間、俺に、仲間?
お読みいただきまして、誠にありがとうございます。
これからも頑張ります。
タイトルは刻一刻と変わっていきます。すみません。しっくりくるタイトルを見つけられるまで続きます。すみません。




