4月3週 火曜日 その1
村15
ダ9 フ1
魔100 中6
剣100 剣中6
採取28
草11 花5 実12
料理1
異世界はファンタジーの世界に見える。
けれども、世知辛いものだ。
誰も彼もが、夢を見れるわけではないのだから。
ダンジョンにおいて、ATKとDEFの値は重要なものである。
それは与えるダメージにも、受けるダメージにも直結し、戦い方や稼ぎまでをも決める。
ATKとDEFとは、武器と防具の種類によって決まるものである。
例え生涯の全てを剣に捧げようが、職人が丹精込めて作ろうが、何も変わらない。
武器や防具を手に入れるには、金が必須である。
金がなければ、購入することはできない。
つまり、ダンジョンにおいて、金はなによりも重要である。
金がないのなら、ダンジョンで夢を見ることなど到底できない。
地獄の沙汰も金次第というが、まさかファンタジー世界にまで通じることわざだとは思わなかった。
いや、よくよく考えてみれば、ゲームのRPGなんかも、金にあかせて武器防具を買えば大分強くなる。
ファンタジーは元からそうなのかもしれない。
もし、金に頼らず強くなろうと思ったのなら、攻撃回数を増やし被弾回数を減らすことが求められる。
半分のATKしかないのなら、倍の攻撃を。
半分のDEFしかないのなら、半分の被弾を。
それは口で言うほど、易いものではない。
だからそれをするためには、あるものが必要になる。そう、才能が。
才能がなければ、上手く立ち回ることはできない。
つまり、ダンジョンにおいて、才能は金に次いで重要である。
金もなく才能もないなら、やはりダンジョンで夢を見ることはできない。
地獄の沙汰も金次第というが、ファンタジーの世界だからか、金がなくとも才能があれば、なんとかできるらしい。
いやあ、良かった良かった。
とは、もちろん、決してならない。
ダンジョンにおける実力とは、金と才能。
それを世知辛いと言わず、なんと言うのか。
さらに言えば、俺には課金の力もあるため、金=力の図式がさらに強くなる。
地獄の沙汰も金次第ということわざが、まさか近年の課金システムにまで通じることわざだとは思わなかった。
まあ、よくよく考えてみれば、ゲームのRPGなんかも、最近は課金しないと強くなれない。
ファンタジーは元からそうなのかもしれない。
でもゲームなんかには才能は関係ないから、そこは異世界の方が世知辛いな。
いや、けどゲームにだって才能とかはあるな。プロゲーマーだっているくらいだし。
じゃあもう世の中全部、世知辛いわ。
しかし、しかしだ。
世知辛いとはつまり、裏を返せば、金と才能を持っている奴には優しい。ということに他ならない。
だから、才能がある俺に、この世界は合っているのかもしれない。
ダンジョンでは最近、夢を、多少は見られる。
『ポイズンスパイダー
ジョブ:痛毒蜘蛛
HP:75 MP:96
ATK:24 DEF:24
CO:--』
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:65 MP:100
ATK:10+5 DEF:16
CO:流血 毒』
今は少し、現実を見た方が良いと思うが。
ここは、ダンジョン6階、ボス部屋。
目の前にいるのは、6階のボス。ブラウンスパイダーの強化版であるポイズンスパイダー。
俺は、5階6階の魔物をあらかた倒し終えた後、この化け物に戦いを挑んだ。
唯一の扉つきである、ボス部屋に入った、ということだ。
一先ずの目標はゴキブリの出る8階なのだから、いつかはここのボスも倒さなくてはいけない。ならのりにのってる今日にしよう、そう思って。
確かに5階6階と戦って、疲れてはいたし、HPも80くらいには減っていた。
しかし、最近、戦い方を変えたおかげで、ブラウンスパイダーとの戦闘はとても楽なものになっている。
体高20cmで踏みつけやすく、骨折もしやすいブラウンスパイダーは、最早カモと言えるくらい、簡単に倒せていた。
だから、そう思った。
疲れていても、HPが減っていても、その強化版であるボスは楽に倒せる。余裕だと。
しかしそれは、間違いだった。
間違いなく、間違いだった。
ポイズンスパイダーは、体高1m20近くもある巨大蜘蛛。
足の太さは俺の足ほどに太く、牙も同じくらいの太さという、肉食感が強い姿をしている。
「ジュアアー」
鳴き声も、なにやら怖い。
ブラウンスパイダーから、1段階強くなっただけで、こんなのになるのか。
ちょっとダンジョンを作った奴は頭がおかしいんじゃないか?
ポイズンスパイダーは、俺に赤い線を向けて歩き出す。
足を動かすスピードは速くないが、体が大きいため迫ってくるスピードは速い。
そして顔の位置が高いため、赤い線が向かってきているのは、俺の腹部辺り。
さっき噛まれたが、今までで一番痛かった。
一発で流血の状態異常にもなったし。
また、頭の位置が高いと、攻撃も止め辛い。
今までの魔物は、全て頭が足元にあって、強い攻撃は全て振り下ろしだった。振り下ろしなら自分の体重を上手く使える。
だが今回は腹の高さに顔があるのだ。
攻撃は振り下ろしじゃない。自分の体重を上手く使えない。
だから、腹付近の高さに対しての攻撃では、どうしても威力が不足する。攻撃してもポイズンスパイダーは止まらない。
俺は青い線に沿うように、剣を振る。
ポイズンスパイダーはブラウンスパイダー同様に、少し膨れた軌道で攻撃を行なってくるのだが、真正面にしっかりと捉えて。
そのため攻撃は直撃した。
その顔を斬りさいた。
けれど、赤い線は消えない。ポイズンスパイダーの噛み付きを、俺はまたしても腹部に食らう。
「ジュッ!」
『ポイズンスパイダー
ジョブ:痛毒蜘蛛
HP:69 MP:96
ATK:24 DEF:24
CO:--』
「いってえ!」
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:56 MP:100
ATK:10+5 DEF:16
CO:流血 毒』
毒はまだ続いている。
毒は、その時の噛み付きで食らったダメージと同等分だけのHPが減る。
確かあのスキル攻撃で、HPが74から66に減ったから、8ダメージだ。つまり、毒によって俺のHPは58まで減る。
今回の噛み付きダメージは7だったので、それをさらに引けば、もう51だ。
流血が終わるのは、流血開始から長くて15分。
戦闘において15分なんて、全部と考えて良いだろう。だから、この戦闘中、俺のDEFは16のまま。
ATK24で攻撃されれば、計算上ダメージは7.5。
HP51を、ダメージの7.5で割ると、6.8。
俺はあと7回攻撃を食らうと死ぬ。
対するポイズンスパイダーは、17回攻撃されなければ死なない。
このまま斬り結んで、毎度相打ちになれば、俺の方が先だ。
ゆっくりとだが、自分の死が見えてきた。
夢なんて見ている場合じゃない。現実を見なければ。
というか、HPが見えるってアレだな。なんか死刑台の階段が見えてる気分になるな。
課金してそんなもん見てんのか俺は。
悲しくなってくる。
あと凄く痛い。
防具の鉄じゃない部分を噛んでくるせいで、とても痛い。俺の防具は胸部分が鉄だが、腹部分は革だ。食い込んでくる。
鉄部分を噛んでくれ。
俺が数歩距離を取ると、ポイズンスパイダーは再び、歩いての噛み付き攻撃を仕掛けてきた。
「ふっ!」
今度は負けるわけにはいかない、と、俺は渾身の力で攻撃。
顔目掛けて、斜めに斬り下ろした。
握力の限り柄を握っていなければ、剣が弾き飛ばされそうだ。
「ジュッ!」
しかし、その甲斐もあってか、攻撃を食い止めることに成功。
だが思い切り攻撃をし過ぎたせいか、怯んでいる最中にできた攻撃は1発だけ。それも手打ちだったからか、HPを減らせなかった。
疲れている体で、力を込めたのだから、次の動きができないのは当然かもしれない。
お互いに死ぬまで、俺はあと7回。ポイズンスパイダーは16回。
俄然不利なまま。
どの攻撃を行なうかの選択は、ブラウンスパイダーと似ている気がするから、行動は操れる。
けど、その行動を止められなければ意味がない。
今の状態がそうだ。
勝ちたいのなら、生きたいのなら、止められるだけの力を持たなければならない。
しかし、天才でもない限り、急に成長する可能性はない。
天才でもない限り、新たな閃きが起こる可能性はない。
ダンジョンは世知辛い。
夢を見られるのは、金がある者と、才能がある者だ。
どちらもないのなら、ファンタジー世界のダンジョンでも、見えるのは現実ばかり。
だから、多分。
少しの金か、少しの才能がある奴が、一番早く死ぬのだろう。
夢を叶える力もないのに、夢を見てしまうのだから。
遅くなりました。
これから頑張ります。




