4月2週 金曜日 その2
ダ7 フ1
魔84
剣84
採取28
草11 花5 実12
料理1
2時間ほどかかって、5階の魔物10体、全てを倒す。
「ふう」
だから疲れて、俺は息を吐き、その場に座りこむ。
ATKとDEFがダメージを決める以上、攻撃しなければいけない最低回数は決まっている。
1体につき、14回。
全力の攻撃は、その内4回か5回。
10体倒した、ということは、40回から50回の全力攻撃を行ったということ。
凄く疲れた。
ヘトヘトになるはずだ。
それも戦いなのだから、武器を振る以外のこともしている。
魔物からの攻撃を回避し続けることも必要だ。時には受けて我慢することも。
また、探すのも手間である。
1番疲れるのは探すことではないか、と思うくらいに。
5階は25部屋25通路。
こうなってくると、隣の部屋同士でも繋がっていない方が多くなる。
行きたい場所に行くことはできず、地図もないので、自分がイマイチどこにいるかも分からない。
とにかく適当に歩くのだが、魔物とて移動する。
偶然にも、俺の1部屋後ろを歩いていた、なんてこともあるだろう。
最後の1匹2匹は、アイテムボックスを開いて、まだ倒していないよなと何度も確認するほど、見つからなかった。
もう……疲れた……。
けれども、俺は行かなければいけない。6階に。目指すはゴキブリなのだから。なんて嫌な目標だ。
俺は1時間ほど座ったり、横になったりして休憩をとる。
そうして、息も整い、むしろ暇を感じ始めた頃、6階に上がった。
各階毎に新たな魔物が出現しているため、6階でももちろん新たな魔物が出現する。
一番近くにいたのは、フトリポリという2階のダンゴムシだったが、その次に遭遇したのは、見たことのない魔物。
蜘蛛だ。
『ブラウンスパイダー
ジョブ:毒蜘蛛
HP:100 MP:100
ATK12 DEF:12
CO:--』
その名もブラウンスパイダー。
茶色の蜘蛛。毒蜘蛛だ。
毒か……。
そう言えば以前、受付のお姉さんが、毒攻撃をしてくる魔物もいるから気をつけろ。と言っていた。
頻度は低い、とも言っていたが、そうか。
毒か……。
ブラウンスパイダーは、体高20cm体長は40cmほどで、足を広げた幅はそれよりも少し大きいくらい。
足は8本、目はたくさん。
肉食ゆえの牙がついていて、顔は、そんなに凶悪だったのかと思うほどに、いかめしい。
俺は500円玉サイズの蜘蛛でさえ、見かけたなら腰を抜かすほど驚くわんぱく少年だった。
いや、500円玉サイズは言いすぎた、50円玉サイズだな。50円玉サイズでも俺は退治するのは無理だった。
しかし、なぜだろう。
散々虫を見てきて、巨大ゴキブリまで見たからだろうか。
ブラウンスパイダーは、今までの虫の中で、一番大丈夫かもしれない。
よく見れば可愛さとてある気がする。
……いやそれはないな。
ブラウンスパイダーから、赤い線が伸びる。
それは俺の足元目掛けた攻撃。ブラウンスパイダーは、8本の足を器用に動かして、俺へと迫ってきた。
蜘蛛とは案外飛ぶように走る。
ブラウンスパイダーの足はかなり速い。
5mほどの距離があったにも関わらず、距離を一息で詰めてきた。
しかし、攻撃を食らうことはない。
赤い線も青い線も、どちらも攻撃のタイミングも示してくれるため、赤い線が引かれた段階で分かる。
また、タイミングは線を見ていれば100%分かるのだから、足が速くても、攻撃を防ぐのに苦労することはない。
「ヴゥッ」
『ブラウンスパイダー
ジョブ:毒蜘蛛
HP:94 MP:100
ATK12 DEF:12
CO:--』
だから、俺は比較的簡単に、攻撃を剣で止める。
直線で進んで噛み付きに来る、という動きは、クレーアントからこっち、散々やっている。
ダンジョンの10階以下の魔物は、頭がファミコンスペックなのか、動きのパターンがまるで少ない。余裕だ。
昼むブラウンスパイダー目掛けての3連の追撃も、見事に決まった。
左から右へ、右斜め上から左斜め下へ、そして突き。
確かに、たまには攻撃を食らってしまうこともある。
ただ、あれはほとんど疲れが原因だ。
魔物を何十体も倒していれば疲れる。攻撃のスピードも遅くなり、青い線からずれることも増えてくる。
仕方ない。
日に日に体力は増えていっているので、もうしばらくすれば改善されると思う。
たまには疲れが原因でないダメージもあるが。
そんなときの原因を、強いてあげるのなら油断か。
戦闘中に別のことを考えるのは危険だ、とあれほど思うにも関わらず、たまに別のことを考えてしまう。
異世界についてはまだまだ未知のことが多いため、考察するのがクセなのだ。
なまじ、自身のDEFが高く、HPや赤い線青い線が見えるせいで、緊張感が足りていないのかもしれない。
俺のDEFは20。
HPが見えているために、攻撃を食らったとしても、ダメージがほとんどないことが分かってしまう。
ATK12の6階の敵からでも、
「いってえ!」
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:81 MP:100
ATK:10+5 DEF:20
CO:--』
3ダメージしか食らわない。
事前に16ダメージ食らっているのは、ご愛嬌。
3ダメージしか食らわなければ、あと20回以上攻撃を食らっても死にはしない。
赤い線青い線が見えている以上、ボケーッとしていても攻撃の瞬間は分かるのだし、20回も攻撃を食らうことはありえない。
フィールドの魔物のように、たくさんいて囲まれたなら別だが、ダンジョンでは魔物は1匹。
俺のように、連続攻撃を行なうのなら別だが、10階まで、魔物は連続攻撃をしないのだとか。
死ぬわけがない。
だから油断してしまう。今も油断してしまっていた。反省しよう。
まあ、おそらくだが、6階では、いやブラウンスパイダーと戦う際は、もう油断しない。
なぜなら、ブラウンスパイダーの噛み付きはクレーアントより痛い。
泣きそうなくらい痛い。
「いてえ……」
あれだけゴツイ牙がついているだけのことはある。
足の鎧は革製だが、その上からでも泣きそうなくらい痛い。……痛い……。
俺は足から口を離したブラウンスパイダー目掛けて、4度攻撃し、即座に離れる。
『ブラウンスパイダー
ジョブ:毒蜘蛛
HP:56 MP:100
ATK12 DEF:12
CO:--』
そうして俺は、それから3度の攻防を行なうも、攻撃を食らうことなく、見事勝利した。
『毒蜘蛛の糸
ランク:6』
ドロップアイテムは、綺麗な糸。
毒蜘蛛の、とついているのに、普通の白い糸だ。
量はそうないが、中々手触りもよく、綺麗である。
しかし、そう言えば、蜘蛛の糸がえんぴつくらいの太さになると、飛行機でも止めるとかなんとか、そんなことを聞いた事がある。
凄い物を手に入れてしまった……。
……まあ、売値はゴキブリのドロップアイテムの銅貨80枚以下なのだろうが。
糸をアイテムボックスにしまう。
そうしてそれからも俺は、6階の魔物を順調に倒していく。
ATKが10であれば、1回のダメージは、4.1667。
しかしATKが15であるため、1回のダメージは、6.25。
わずかな違いに思えるが、1.5倍、2分の3、と考えると、かなりの違いが見えてくる。
単純に考えて、2分の3回の攻撃で倒せる。10の労力で、15体倒せる。ということなのだか。
ATK+5は、課金と言うには、いささか弱いものなんじゃないか、と思っていた。
けれど、この序盤においては、相当役に立つ。
『アタックツヨクナール 銀貨5枚』
スコーシではなく、無印のこちらを使ってみても良かったかもしれない。昨日はそんな金なかったが。
ちなみにこちらはATK+10。
ATKの上昇効率は悪いかもしれないが、それ以上に稼げる可能性は十分ある。
課金、中々良い能力のようだ。
まあ、だからって異世界に来れて良かった、とは思わないが。
ともかく、俺は頑張った。
課金が使えるということが分かって、元気も出た。疲労というのは、案外気分的な要素も多い。
半分の6匹も倒す頃には、結局疲労困憊になっていたので、もう諦めて帰ったが、それまでは元気に戦えた。
剣も折らないように、ブラウンスパイダーから攻撃を食らわないように、その2つにも気をつけられた。
一歩前進、一歩成長、そんなことが感じられる。
レベルがないので、数字になってあらわれはしないが。
「はい、確認しました。クレーアントの外殻が1、フトリポリの足が3個。コガネオンの外殻が1、羽が1枚。サイドビートルの羽が2枚に、レッサートンボの羽が6、ブラウンスパイダーの糸が2個ですね。合計で銀貨5枚と銅貨45枚になります」
この世界での成長を数字で見るには、やはり金だろうか。
いや、しかしそれだと、1階から上がって行った時よりも少ないので、成長できていないことになる。
お金なんてね、所詮金なのさ。
「手数料として銅貨55枚頂きます」
いつも通りに1割、端数切り上げの手数料を取られ、俺は異世界生活13日目を締めくくる。
しかしよくよく考えると、1割はやばい。
金は大切だよ。なによりも。
お読み頂きありがとうございます。
できる限り毎日更新を目指します。
今日は4月14日、4月2週目の日曜日ですので、むしろそれに追いつき追いこせるようには。
これからもお読みいただけると幸いです。よろしくお願いします。




