4月2週 金曜日 その1
ダ7 フ1
魔83 中6
剣83 剣中6
採取28
草11 花5 実12
料理1
異世界との違いは、多岐に渡り、その中には感性も含まれる。
簡単に言うと、異世界でゴキブリは、あまり嫌われていない。
嫌われているのは、スライムだ。
そもそもゴキブリを街中で見かけること自体少ない。残飯を漁っているのは、全てスライム。
1匹いれば30匹と言われるのも、同じくスライム。
異世界の住民であれば、スライムに対しては物心ついた頃から嫌悪感を示す。
心の弱い者なら、近づいてきただけですっとんきょうな声をあげることだろう。
定食屋に出現したスライムを、俺が「なんだこれ」と言って素手で掴んだ時には、店中に悲鳴が響き渡ったくらいだ。
俺からすればスライムは、可愛らしい姿である。
小学生の頃に作って遊んでいたスライムを思いだすような。触り心地もまた面白く、多少は濡れるが無臭で、思わず頬ずりしてみたくなる質感と柔らかさもある。
だが、異世界の人にとっては違う。
おぞましく、気味が悪い。
生理的な嫌悪感すら引き起こす、異色の生物。
育ちによる感性の違いというのは、意外と大きい。
だからこそ、ケビンさんは、高値で売れるドロップアイテムを落とす相手、という俺の願いを叶える相手にゴキブリを選んだ。
ゴキブリのことを気持ち悪いだとか、思っていないから。
俺が嫌われたわけではなくて良かった。
良かったが……。そうか、俺がスライムを素手で触れるように、皆ゴキブリを素手で触れるのか。
異世界とはげに恐ろしき場所なり。
昨日俺は、スライム手づかみ事件という騒ぎがあった定食屋で、ケビンさんに侘びを入れた。
せっかく8階に案内してくれたのに、8階には行かないことにしたため、優しさを無下にしてしまうという結果になったからだ。
いつも奢ってもらっているというのに、その体たらく。
怒られたり、不機嫌になられたり、最悪嫌われてしまったりするのだろうか。そう思っていた。
けれどもケビンさんは、「その武器じゃやっぱキツかったかあ」と、むしろすまなさそうにするだけ。
稼ぎも少なかったろ、と再び奢ってくれたのだ。
確かに、ATK10の武器で、DEF16の敵と戦うのは、少々無理がある。1発3ダメージは厳しいと思う。
だが、本当の理由は、ゴキブリが気持ち悪かったからだ。心苦しい。
だからというわけではないが、俺は、目標を8階に行くことに設定した。
具体的な行動としては、今日は、5階からスタートしようと思う。
5階は、レッサートンボが出てくる階。魔物のATKとDEFは10。
俺のATKと同じであるため、ダメージは5。20回も攻撃しなければいけない階。
レッサートンボのドロップアイテムの売値は銅貨40枚なので、稼げるほどに戦おうと思うと、中々大変な階であると思う。
稼ぐだけなら、1階から戦うのが一番良い。
しかし、それじゃあ、いつまで経っても上の階に上がれないのではない。
武器=強さなのだから、良い武器を購入できたなら、上の階でも戦うことはできるだろう。
だが、武器=強さなのだから、慣れていない階に行き、折ってしまえばまたやりなおしだ。
「なら、無理矢理にでも高い階に行って、厳しい戦いを体に慣らした方が良い」
弱い武器でも戦えるように。
弱い心でも、虫にビビらないように。正直、未だにクレーアントは少し怖いのだ。そちらにも慣れていかないといけない。
レベルがあるなら、こんな苦労もなかっただろうに。
力も心も、きっと順調に強くなっていくんだろう。そんなに楽なことはない。
どうしてレベルがないんだ、異世界。
この異世界はちょっと、俺の肌に合わない! チェンジで!
とは言え、レベルがないのは異世界人も全員同じだ。この苦労をしているのは、きっと俺だけではない。
けれども、そんな彼等にはなくて、俺だけが持っている力は存在する。
『アタックツヨクナールスコーシ 銀貨1枚』
課金、という力が。
……なんか嫌な力だな。
俺は、ダンジョン5階に入り、周囲に人も魔物もいないことを確認。
そして、課金画面を表示し、アタックツヨクナールを選択。
押してみると、購入画面に切り替わる。
選択肢の『はい』を押すと、アイテムボックス内の通貨を使用するか、と聞かれたため、再び『はい』を選択。
『アタックツヨクナールスコーシ、を購入しました』
そして、実にアッサリと購入は完了した。
ああ、してしまった、という妙な罪悪感と共に、妙な高揚感を感じる。
開放感、とも言い変えられるかもしれない。
実は、ずっと使ってみたかったのだ。この課金機能を。
自分だけに与えられた力。異世界生活の生命線。いざと言う時の切り札。
俺にとって課金とは、そんな力だ。
使ってみたい欲に駆られるのは、人として当然のことじゃないだろうか。ワクワクしてきた。
俺は早速自身の情報を見てみる。
ヘルプの情報によると、ATKが5、上がっているはずだ。
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:100 MP:100
ATK:10 DEF:20
CO:--』
「……? ……。……?」
しかし、上がっていなかった。元の10のまま。
俺は眉間にシワを寄せながら首を傾げる。
内部数値的なものが上がっているんだろうか。
一先ず俺は、それが正解だと考え、魔物を探した。幸い、25部屋25通路の中に、魔物は10匹。歩けばすぐに見つかる。通路の先には、レッサートンボ。
赤い線が俺の足元目掛けて走り、その線にクロスするように青い線が走る。
既に戦いに慣れた俺は、もう焦らない。青い線に剣が沿うように、レッサートンボを叩いた。
「エッ」
『レッサートンボ
ジョブ:劣蜻蛉
HP:95 MP:100
ATK:10 DEF:10
CO:--』
5ダメージ。
俺は怯んだレッサートンボに対し、3回の追撃を行う。
結果、3回の追撃全てで、HPを減らすことに成功した。
『レッサートンボ
ジョブ:劣蜻蛉
HP:80 MP:100
ATK:10 DEF:10
CO:--』
20ダメージ。
結論、ATK÷DEF×5がダメージなので、俺のATKは10のままだ。
……不具合、か? 異世界に来た意味が、完全に消失したぞ。
と、そんな疑問も抱いたが、すぐに解決する。
レッサートンボを倒した後、もしやと思い確認してみたのだが、どうやら課金は、プラスを与えるアイテムを、購入するもののようだ。
俺の体に、そのままプラス効果がかかるわけではない。
アイテムボックスに、課金アイテムが転送され、そのアイテムを使うことで効果が得られるのだ。
だから、アイテムボックスを恐る恐る開けたなら、見慣れぬアイテムが入っていた。
それは、
「スプレー?」
ヘアスプレー缶、と言おうか、まさにそんな形のもの。
缶に使用方法や効果が書かれていたので読むと、武器にスプレーして使うらしい。本物のスプレーのようだ。
振ってみると、確かにカラカラとスプレーらしい音がした。
ちょっと意味が分からない。
武器にシューっと振りかけてみると、確かに本当にスプレーだった。
意味が分からない。
『キジョウ・エト
ジョブ:異世界民
HP:95 MP:100
ATK:10+5 DEF:20
CO:--』
だが、効果は本物。
缶に書かれた効果を読むと、スプレーは1回使いきりだが、効果は3日持つ。
ヘルプにはATKが5上がるとしか書かれていなかったため、1日で終わると勝手に思っていた。嬉しい誤算である。
スプレーは、もうガスすらも出しきったのか、ウンともスンとも言わない。
しかし、消えることもなく、そのまま。
課金アイテムの入れ物は、使い終わった後も残るらしい。
課金のリストを見てみたが、詰め替えはない。
……これは、異世界にはないであろう物を手に入れたことを喜ぶべきか、それともゴミが残ったことを悲しむべきか。
使い道はないよな。
異世界に不燃物を捨てる場所があるのか?
もしかすると課金する度に、いらないアイテムが増えていくんだろうか……。
アイテムボックスは16種×16個だから、まだ余裕はあると言っても、どんどん増えていくと困る。
無闇に捨てると、未知の物体、ということで変なことが起こりそうだ。
そこから課金能力がばれて、地下牢で我のために一生課金しておれ、ルートに入るかもしれない。恐ろしい。
が、どうすれば。
スプレー缶の再利用ってどうするんだろう。
穴を開けて割り箸を突き刺してロボットにしたことはあるが……、それは再利用と言えない。
まあ、今は一先ずその問題は置いておく。
ともかく、現在の俺は、ATKが15になった。
5しか増えていないが、1.5倍ではある。先ほどのレッサートンボにも、20ダメージのところ30ダメージ与えられる。
これは大きな違いだ。
俺はなんだか強くなったような気がして、剣を何度も振る。
そして、5階、6階と全ての魔物を殲滅するために、意気揚々と進んだ。
お久しぶりです。
忘れられていなければ、幸いです。
書き方を、大きく方向転換致しました。今後、こちらの感じで進めたいと思います。
順次、1話から書き直します。ご迷惑かけて、申し訳ございません。
ただ、また書き方を大きく変更をすることも、もしかするとあるかと思います。そんな時は、迷走っぷりを笑って頂ければ幸いです。
書き直しました。迷走っぷりはいかがでしょうか。
この迷走が、激走であることを祈るばかりです。
応援よろしくお願い致します。




