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4月2週 木曜日

ダ6 フ1

魔79 中6

剣79 剣中6

採取28

草11 花5 実12

料理1

 敵からの攻撃や、訪れる危険に対しては、赤い線が。

 自分から攻撃できる、隙に対しては、青い線が。それぞれ見える。


 しかし、線の種類はまだ2つ存在する。


 それは、パーティーを組んだ際にのみ見える線。


 色は、黄色と緑。


 黄色は、味方への、敵からの攻撃や、訪れる危険に対して。


「さっきも言ったように、シャープクローチは速いが、こうやって片足を出すと、そこ目掛けて噛み付きにくることが多い」


 緑は、味方から攻撃できる、隙に対して。


「そこをタイミングよく引いて――、叩くっ。よっ、せいっ、どりゃっと。こんな感じの連続だな」


「はあー、やっぱり、上手いもんですね。凄いっす、流石」


 俺は今日、ケビンさんと2人でダンジョンにやってきた。


「じゃあ、エトもやってみろ。多分、あとちょっとで倒せるから」

「はい」


『シャープクローチ

  ジョブ:速御器噛

  HP:8 MP:100

  ATK:16 DEF:16

  CO:--』


 ここは8階。

 敵は、ゴキブリ。


 昨日、ケビンさんに、お金がなかなか稼げない、と相談した。

 すると、「8階に出てくるゴキブリが高値で売れるドロップアイテムを落とすから、連れて行ってやる」と言ってもらえた。


 だから今日は朝早く起き、ケビンさんと朝食をとった後、ダンジョン8階へと連れてきてもらったのだ。


 5階までしか辿り着いていなかったから、一気に3階もジャンプしてしまったことになる。

 6階にはボスもいるので、ボスもスルーできている。

 得をした。


 しかも、8階に送り届けてもらうだけかと思ったら、「1匹くらい、倒し方見せてやるよ」と、実演つき。

 凄く得をした。


 1回の攻防を見せてもらっただけでは分からなかったので、3回も実演してもらった。

 凄い、流石、と言うと、サービスが多かった気がする。

 やはり、村人とは違って、外様の冒険者や騎士は優しい。田舎者は田舎にこもってろ。いやここ田舎か。


「えーっと、足を出して、噛み付きにこさせて……」


 俺は、頭の中で、先ほどのケビンさんの動きを思い浮かべる。

 そしてぶつぶつ呟きながら、残るHPが少なくなったゴキブリと相対し、左足を前に出した状態で、剣を構えた。


 剣を振り下ろす際、俺は基本的に右足を前に出して、右斜め上から左斜め下へと振り下ろす。

 だから、今の左足を前に出した状態では、上手く剣は扱えない。


 だが、ゴキブリに上手く攻撃を当てるには、先ほどから何度もケビンさんがやってくれたように、前に出した足を引きながら、剣を振り下ろす必要がある。


 そのため、左足をあえて前に出し、引きながら、右足を前に移すわけだ。


 タイミングが難しく、慣れが必要な妙技であるかもしれない。


 けれども俺には、初心者パックの赤い線がある。


 俺が前に出した、左足目掛け、赤い線が見えた。


 ゴキブリの攻撃。

 この赤い線は凄いもので、攻撃してくる軌道はおろか、そのタイミングまで完全に把握できる。


 ゆえに、ゴキブリがいくら速く動こうとも、俺からすれば意味がない。

 当たるタイミングが分かるということは、そういうことだ!


「あああ、痛い痛い」


 しかし悲しきかな。

 なぜだかは分からないが、俺が後ろへ引いた左足に、ゴキブリは追いつき、噛み付きを成功させてしまった。


 クレーアントの噛み付きよりは痛くないが、なんだろう……、不思議な感覚。


「あっはっは」

 ケビンさんは笑っている。


「くっそー!」


 顔が熱く、耳が赤くなっているのが分かる。

 俺はそれを打ち消すように、ゴキブリを剣で叩き、口を離させ、そのまま剣で2回斬りつけた。


『シャープクローチ

  ジョブ:速御器噛

  HP:0 MP:100

  ATK:16 DEF:16

  CO:死亡』


 ゴキブリのHPが0になり、状態が死亡状態に変わる。

 そして、その一瞬後、1つのドロップアイテムを残して、光の粒子へと変わり消えていった。


『速御器噛の油

  ランク:8』


「少し、足を引くのが遅かったな。ま、シャープクローチの噛み付きは、痛くないだろ? これで銅貨80枚は美味い。ほら」


 前半をほんの少し笑いながら、後半をゴキブリのドロップアイテムを拾いながら言うケビンさんは、ドロップアイテムを俺に投げて渡す。


「あ、ど、ども。え、ケビンさんが倒したみたいなもんじゃ?」

 俺はゴキブリの油、なにやら袋に包まれているものをキャッチし、そう聞いた。


「良いんだよ、持ってけ持ってけ。……昨日、剣折ったみたいだしな」

「う」


「コガネオンの洗礼だな。俺も若い頃、何本剣を折られたからか、いっそ剣士ジョブから戦士に転職して、槌でも持ってやろうかと思ったよ」


 しかし、ケビンさんは、また笑って、そんなことを言う。

 とてつもなく優しい人だ。


 底抜けに良い人だと言えるかもしれない。

 流石、異世界に来てから俺が、兄貴のように慕っている人。ちなみに鎧の騎士の人は、兄貴2号である。


「あはは。ありがとうございますっ」


 俺は、ケビンさんのネタに笑うと、勢いよく頭を下げて礼を言った。

 そしてネタネタした嫌な感触のそれをアイテムボックスにしまう。


「それじゃあ、俺は戻るけど、頑張れよ。あと、無理はすんなよ、無理だと思ったら、また下げれば良いんだからな」


 ケビンさんはそう言って、俺の背中をバシバシ叩く。

 そして俺達がいた通路の先の部屋にある、白いゲートに入っていった。


 俺のために、なんて優しい。

 俺も大人になったら、あんなことができる人になろう。そう思った。


 しかし。


 しかし。


 もう1つだけ、俺は今、思うことがある。


 ケビンさんが、確実に白いゲートから出て行ったのを確認し、俺は大きく息を吸い込んで、叫んだ。


「ゴキブリは気持ち悪い!」


 気持ち悪-い、気持ち悪-い、気持ち悪-い。


 ダンジョンに音は反響せず、少し離れただけで何も聞こえなくなるが、俺の心には十分響く。


 現代人に、1mの大きさのゴキブリは奇天烈過ぎる。

 見た目も、動きも、黒光りも、何もかも。


 よく見かけたゴキブリが、そのまま大きくなったのがシャープクローチだ。

 俺は5cmサイズどころか、2cm1cmサイズのゴキブリですら、家で見かけたら逃げ惑っていた。なんならコオロギからも逃げる。


 凍らせるスプレーを駆使しても敗北を喫したことも何度となくある。

 そんな相手と気軽に戦わそうとしてくるとは……。


 俺はもしかしてケビンさんに嫌われているんだろうか……。

 恐ろしいな、異世界。いや異世界関係ないか。人間関係こええ……。女子だけの話だと思ってたよ。


 ともあれ俺は、吐き出さなければ気が狂ってしまいそうだった感想を、ひとしきり叫ぶ。

 その後、自分の顔を力強く叩いた。


 ダンジョンでは、自分を殴っても怪我をしないため、本当に強く。

 それで、気合を入れた。


 せっかくの兄貴分が、案内してくれた階、実演してくれた敵、ここで踏ん張らなければ、男がすたる。


『シャープクローチ

  ジョブ:速御器噛

  HP:100 MP:100

  ATK:16 DEF:16

  CO:--』


 部屋の中に佇む、敵。

 俺の心に潜む、敵。


 その2つに、打ち勝つのだ。


「いくぞ」


 俺は戦った。


「でやあああ」


『シャープクローチ

  ジョブ:速御器噛

  HP:97 MP:100

  ATK:16 DEF:16

  CO:--』


「せえええい」


『シャープクローチ

  ジョブ:速御器噛

  HP:95 MP:100

  ATK:16 DEF:16

  CO:--』


「どらああああ」


『シャープクローチ

  ジョブ:速御器噛

  HP:91 MP:100

  ATK:16 DEF:16

  CO:--』


「ひいい」


『キジョウ・エト

  ジョブ:異世界民

  HP:92 MP:100

  ATK:10 DEF:20

  CO:--』


 ひいいって言ったらもう駄目だ。


 とりあえずそこそこ頑張って倒した。


 けど明日は、1階から冒険をしよう。

 俺は、そう決めた。

時間がある時に、全話大幅に書き直すかもしれません。


もう少し淡々と、感情の抑揚が出ないような話にしたいな、と考えています。

できるかどうかは分かりませんが、頑張ります。


書き直しました。これで頑張ります。


これからもよろしくお願いします。

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