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4月2週 水曜日

ダ5 フ1

魔54 中5

剣54 剣中5

採取28

草11 花5 実12

料理1

 村付き冒険者。


 それは、村から給与を貰える冒険者のことで、いわゆる公務員のような存在である。


 村付き冒険者は、ダンジョンが溢れないように、平日はダンジョンに入る。

 そして休日は、溢れてきても良いように、ダンジョン前で生活する。


 また、村で食料が足りなくなったなどがあれば、狩りや採取にも出かける。

 他にも、村の者がはぐれたとかでも捜索に行くし、隣村へ行きたいと言えば護衛もする。


 村を助けるための、何でも屋のようなものだ。


 基本的に、冒険者というのはそこを目指すらしい。

 不安定で、怪我をすれば収入がなくなり、歳老いても収入がなくなる冒険者。

 給与が貰える安定した村付きは、魅力的なんだろう。


 また、こういった小さな村では、村付きは1組だが、大きな町、都市であれば、2組3組、10組なんてこともある。

 仕事は分散され、のんびりもできるんだとか。


 羨ましい。

 俺も、のんびりしながらお金を稼ぎたい。


 今現在の貯蓄は、銀貨3枚しかない。

 また、稼ぎに行かなければ、明日にはご飯も宿もなくなる。のんびりなんていつできるんだろうか。


 俺は今日もダンジョンへと向かった。


 すると、いつもと時間帯を変えていたからか、道中、林で、他の冒険者と偶然一緒になる。


 この村には、2組の冒険者パーティーがいるのだが、その内、村付き冒険者の方。

 ケビンさんという、異世界転移初日のクレーアントとの戦いで、俺の命を救ってくれた、命の恩人がリーダーを務める方だ。


 メンバーはケビンさんと、林から焦って飛び出してきた男の人と、もう1人、あとは女の人1人。


 2組の冒険者パーティーは、どちらもダンジョンの10階以上をメインに戦っているそうだが、ケビンさん達は、14階や15階をメインに戦っているらしく、とても強い。


 ちなみに、もう1人男の人、ミリアンさんがいたのだが、クレーアントとの戦いで亡くなってしまった。


 だからかどうかは分からないが、ケビンさんは俺を見かけると、付き合いの長い友人に出会ったかのように、気安く声をかけてくれる。


「ようエト。この時間に珍しいな、順調か?」

「おはようございます、順調ですよ」


 年齢が倍近い人に、こうやって話しかけてもらえるのは、存外嬉しいものである。


 ケビンさんと、いつも通り雑談をする。

 定食屋ではよく会うので、近況のほとんどは話している。


 剣を折ったことも。

 牛小屋で寝たことも。


 ケビンさんは、その度に笑って、なにかとアドバイスをしてくれたり、飯を1品奢ってくれる。


「金を稼ぐなら、やっぱり8階からだろうな。シャープクローチのドロップアイテムは油なんだが、銅貨80枚で売れる」


 そして今回も、そんなアドバイスを貰った。

 他のドロップアイテムが、銅貨20枚くらいであったりすることを思えば、相当魅力的な稼ぎかもしれない。


「明日は、俺達はダンジョンに入らない日だし、8階まで連れてってやろうか?」


 俺は、それにお願いしますと答える。

 そしてダンジョン入口で別れを告げ、各々、ダンジョンへと入って行った。


 いつも通り、そこは1階。


 ダンジョンは、行ったことのある階なら、ダンジョン入り口から、いきなり入ることができる。

 例えば俺なら、4階などへも。


 だから、ケビンさんも8階に連れていってやろうか? と言ったのだ。1階から8階まで一緒に、という意味ではなく、入口から8階へ行くだけなら、さして手間もない。


 しかし、8階か……。


『クレーアント

  ジョブ:酸蟻

  HP:100 MP:100

  ATK:2 DEF:2

  CO:--』


 この、ATKとDEFは、階数の2倍の数値になるから、8階だと16になる。


『キジョウ・エト

  ジョブ:異世界民

  HP:100 MP:100

  ATK:10 DEF:20

  CO:--』


 明らかに俺よりも、ATKが高い。


 気軽に言われてしまったため、こちらも気軽に返事をしてしまったが、果たして俺は8階で戦っていけるのだろうか。


「一先ず、じゃあ、今日は5階に挑戦してみよう」


 そして、俺は、今日も1階から順に、魔物を倒していく。


 2階。

 3階。

 4階。


 2匹、4匹、6匹、8匹、ボス1匹の合計21匹。


「はあ、はあ」


 休憩を入れながらでも、さすがに疲れてしまった。


「……魔物は復活まで24時間かかるんなら、今日中は復活しないってことだよな。ちょっと寝るか」


 俺は横になって目を瞑る。

 魔物は復活しないし、他の冒険者は10階以上で戦うため、入ってくることもない。誰かに襲われることはない、と。


 ただ、そうは言っても、眠りに落ちることはできない。

 30分ほどごろごろしただけで、起きることにした。

 床も硬いし。


 しかし、疲れは幾分かとれたような気もする。


 ストレッチをしたあと、黒いゲートに入って、俺は5階へ向かった。


 すると、ゲートから出て、目を開けたその瞬間に、目の前に魔物がいた。

 この、すぐいるパターンはやめて欲しいな。ビックリする。


『レッサートンボ

  ジョブ:劣蜻蛉

  HP:100 MP:100

  ATK:10 DEF:10

  CO:--』


 魔物は、5階から出てくる新しい魔物だ。

 全長30cmほどのトンボ。


 やはり気持ち悪い。

 いや、今のところ断トツで気持ち悪いかもしれない。


 元々、俺はトンボの構造を気味が悪いと思っていた。


 小学生のころから、トンボを捕まえて遊ぶ同級生達をドン引きしながら見ていたことを覚えている。

 いや、それはそいつが、頭をむしってトンボを飛ばしていたからかもしれないが。


 ともかく俺はトンボのことを、気味が悪いと思っている。

 だからか、その大きなトンボは、さらに気味が悪い。


 近づきたくないと思える嫌悪感によって、見ているだけで、腰が引ける。


 とは言っても、形状は変わらないのだろう。羽が1枚少ないような気もするが、それくらい。

 そして、サイズは確かに大きいが、クレーアントやフトリポリ、コガネオンに比べれば小さい方だ。


 だが、しかし気持ち悪い。


 蟻よりも、生物としての構造の意味が分からないからだろうか。

 顔がどっちを向いているのかも分からないまま、しかしトンボは俺を見つけたのか、攻撃体勢に入った。


 俺は、鞘に収めていた剣を慌てて抜き放ち、トンボに向けて構える。


 その瞬間、トンボから、攻撃を示す赤いラインが引かれる。

 ラインは、トンボの顔の位置から、地を這うように、俺の足に繋がっており、トンボは、トコトコトコと歩いて俺の足へ向かってきた。


「いや、飛ばないのかよっ」


 思わずそうつっこみながら、俺は剣を振り下ろし、その攻撃を止めた。


「エッ」


「鳴き声?」


『レッサートンボ

  ジョブ:劣蜻蛉

  HP:95 MP:100

  ATK:10 DEF:10

  CO:欠損』


 頭ではなく、その前足? に剣を受けたトンボは、くしゃみのような鳴き声を出して、赤ラインを消し去る。

 そしてどうやら、状態異常、欠損を受けたようだ。


 欠損とは、文字通りの手足などの欠損のこと。

 トンボは前足? に剣を受けたので、そこが欠損したのだろう。


 ラッキーだ。

 これで楽になる。


 とは言え、見た目にはなんら異常はない。

 ダンジョンでは、体の部位が千切れるなんてことはない。かすり傷一つ負わないのだから。


 目の前にいるトンボも、剣を受けた足をきちんと残しており、全部数えれば6本の足がある。


 見れば見るほど、気味が悪い。数えなければ良かった。


 ともかく、ダンジョンでは、欠損をすることなどありえない。

 したがって、欠損とは、フィールドでの痛みと喪失を伴う状態異常とは異なり、ただ、その部位が、一時的に動かせなくなる状態異常のことである。


 どちらにせよ、数ある状態異常の中でも、凶悪な状態異常と言える。


 俺は素早く2度の、軽い追撃を行うと、トンボの欠損したであろう側へ回り込んだ。


 トンボは、俺を正面に捉えるため、方向転換をしようとしたが、足が1本欠損しているため、そう速くは動けない。


 戦いにおいて、できないことがある、というのは、致命的な弱点になり得る。

 それをまさに体現するかのように、俺はさらなる追撃をトンボへと加えた。


「エッ」


『レッサートンボ

  ジョブ:劣蜻蛉

  HP:70 MP:100

  ATK:10 DEF:10

  CO:欠損』


 まあ、虫がこんな鳴き声を出すのかどうかも知らなかったし、6本足の虫が、1本の足を失ったからと言って、動きを鈍くするのかも分からないが。

 虫のことなんて知らん。


 ちなみに、もっと勉強しておけば良かった、とはあんまり思わない。不思議と。

 

 そこからも普通に戦って、俺は勝利を手にした。


 なお、所要戦闘時間は10分ほど。欠損がいつまで続くのかは不明だが、10分程度では治らないらしい。戦いの最中は常に欠損状態。


 レッサートンボ、クレーアントよりかは弱かったかな?

 元々の動きや強さは分からないので、欠損の効果はあったのか、なかったのか分からないが。


「でも5階も、なんとかいけるか? 5ダメージだから、20回攻撃すれば倒せるんだし、まあ」


『キジョウ・エト

  ジョブ:異世界民

  HP:51 MP:100

  ATK:10 DEF:20

  CO:--』


「でも、死なない内に帰ろう」


 そうして、俺は5階を歩き、クレーアントやレッサートンボ、フトリポリとは戦わず、コガネオンやサイドビートルなど、弱い魔物だけと戦った。


「はい、確認しました。クレーアントの外殻が4、キングアントの外殻が1個。フトリポリの足が6。コガネオンの外殻が5、羽1枚。サイドビートルの羽が7に、レッサートンボの羽が1枚ですね。合計で銀貨7枚と銅貨5枚になります。手数料を差し引きまして、銀貨6枚と銅貨34枚になります」


 夕方になってから戻ってきた俺は、初めて、銀貨6枚越えを記録した。


 頑張れば頑張るほど、稼ぎというのは、増えていくもののようだ。


 俺はお金を受け取り、密かな充実感と共に、


「すみませーん、剣が折れたんで新しいの下さい」


 新しい剣を手に入れた。


 今日の稼ぎは、銀貨-1枚と銅貨-66枚である。


 この世から、コガネオンを絶滅させようと思った、今日この頃。

お読み頂きありがとうございます。

これからも頑張ります。

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