4月2週 月曜日 その2
ダ3 フ1
魔32
剣32
採取28
草11 花5 実12
料理1
ダンジョン1階には、部屋が1つと、通路が1つ。クレーアントは2匹。
それから、ボス部屋にキング1匹。
ボスを倒すと現れる、黒いゲートを通れば、2階へ。
2階の内観も、1階と全く変わらない。
通路の材質も質感も同じなら、高さや幅も同じ。
レンガ造りの通路と部屋。通路は高さも幅も3mで、奥行きが10m。部屋の大きさは、高さも幅も奥行きも10m。
ただし部屋は4つで、通路も4つ。
魔物の数は、クレーアント1、フトリポリ3。計4体。
階を上がるための黒いゲートは、ボスがいる階と異なり、魔物を倒さずとも常に存在している。
通路か部屋か、それも分からないが、ともかく歩き回っていれば見つかる。
その場所は、月から土曜日までずっと同じ位置。
月曜日に見つけたなら、以降、その場所に行けば、黒いゲートを必ず見つけられる。
しかし月から土まで、ということは、休日を境に場所を変えるということ。
今日は、どの階でも、上に行きたいなら、ゲートを探さなければいけない。
とは言え、2階ではすぐに見つかる。
4つの部屋が、2列ずつ。全体合わせて正方形になるよう並び、それを4つの通路が、ぐるりと回れるように繋がっているのが2階なのだから。
俺は、2階の魔物を全て倒してから、その道すがらで見つけていた黒いゲートまで戻って、3階へと上がった。
3階の内観もまた2階と同じ。
俺がいる場所は、10m四方の部屋。
ゲートを出たその場所から動いていないので、振り返れば、白いゲートがある。
それも同じ。
この白いゲートは、黒いゲートである入口と対になっている出口。
階を上がるため、もしくはダンジョンに入るために、黒いゲートを使用すると、必ずこちらの白いゲートから出ることになる。
2階に上がった際も、白いゲートから出ていた。
こちらの白いゲートもまた、黒いゲート同様、休日を挟むと、場所が変わっている。
3階は、部屋の数が9つ。通路の数が9つ。
やはり正方形になるように、3つずつが3列に並んだ配置である。
「っと、こっから向こうの部屋にはいけないのか」
3つずつ3列に並んだ部屋を、全て繋ごうと思えば、通路は12必要なため、2階と違って、ぐるりと回れるわけではない。
足りない3つの通路分、隣の部屋に行くために迂回しなければいけない場所があるのだ。
2階と違って、黒いゲートをすぐさま見つけられるわけじゃない。
けど、どうせ3階の魔物は全部倒す予定だから、やることは変わらないが。
そうして歩くこと数十秒。
通路に入ると、1匹の魔物が、向かいから通路に入ってきた。
『コガネオン
ジョブ:硬金虫
HP:100 MP:100
ATK:6 DEF:6
CO:--』
赤紫の光りを発してくる、体高2mはある、巨大なコガネムシの魔物。コガネオン。
3階から出現する魔物だ。
いつ見ても、眩しい、そしてデカイ。あと気持ち悪い。
俺は右手に持っていた剣を、正面に構える。
コガネオンは、俺を発見したのか、威嚇するように口を気持ち悪く動かす。
そして赤い線を俺まで引いて、のっそのっそと攻撃を仕掛けてきた。
俺は冷静に、コガネムシに向かって行く。
近づくと、そのまま45度ほど進む角度を変え、俺へ向かって攻撃を仕掛けようとしているコガネオンの後ろを取った。
ちなみに、俺の行動は全て、歩く、で行われている。
コガネオンは、一生懸命に俺の方を向こうと、方向転換を試みる。
しかしそれは、のっそのっそ、という効果音がとても似合う動き。
コガネオンは異様に遅い魔物だ。
だから俺は、コガネオンのお尻に向かって、撫でるように剣を振り続けた。
体を半分程こちらへ向けたら、またお尻の方へ。方向転換して、体を半分程こちらへ向けたら、またお尻の方へ。
コガネオンが、意表を突こうと、方向転換を先ほどとは反対回りで行ってきても、同様に。
『コガネオン
ジョブ:硬金虫
HP:0 MP:100
ATK:6 DEF:6
CO:--』
死ぬまで。
「……こんな弱い奴に、以前剣を折られたとは……」
コイツと出会ったダンジョン初日、俺は、その巨大さに驚いた。
なにせ、高さも幅も、2mくらいあるのだ。
体だけで言えば、キングアントよりも大きい。
しかし、動きが異常なまでに遅いことに、出会ってから1秒足らずで気付く。
だから俺は、高笑いしながら戦った。
余裕だぜ、と言わんばかりに。
だが当時の俺は、このように撫でて斬っても、ダメージが与えられるとは知らなかった。
そう、一撃一撃を全力で斬りつけていたのだ。
コガネオンは、確かに動きは遅い。
しかし、尋常でなく硬い。剣が、完全に弾かれてしまうほどに。
剣は4階に上がって戦った、6匹目で、折れた。
俺は昔から、少し調子に乗るところがある。
コガネオンの時のように、一旦驚いてしまったりなどした後は、取り替えそうと思うのか、特に。
若さゆえの過ちだ。
地球では良いが、異世界では命取り。武器が折れたらその瞬間ATKは1になる。あれは本当に怖い。
「○○○○○ アイテムボックス」
俺は、アイテムボックスを使うための、よく分からない呪文を唱える。
そして出現した、あまり大きくない黒いゲートの中へ、獲得したドロップアイテムを入れた。
それからも、3階にいる、6体の魔物を倒した。
これで、倒した魔物は、全部で13体。
稼ぎは、手数料を抜いても、ざっと銀貨4枚ほどになるだろう。
2日分の生活費になる。
しかし、こんな程度で満足していてはいけない。
「目指すは、一戸建て。さあ、4階だ」
俺は初日以降足を踏み入れていない、4階へ挑んだ。
部屋が16、通路も16。
魔物の数は、8。
そしておそらく、宝箱が4つ。まだとっていないので、とられていなければ多分ある。
新たに出現した魔物は、サイドビートル。
正面に角がついたカブトムシなのに、蟹歩きしかできない。神様のイタズラで生まれたとしか思えないような魔物だ。
体高20cm、角を含めた体長は50cmくらい。
よいしょ、よいしょ、とでも言うかのような横歩きで来たところを、俺は蹴ってみた。
すると、ひっくり返ったので、角を足で踏みつけていたら、身動きさせないまま倒せた。
3匹いたが、全部蹴ったらひっくり返せたので、コガネオンよりも弱かった。
逆に虚しい。
「合計で、銀貨6枚と銅貨55枚。手数料を差し引きまして、銀貨5枚と、銅貨89枚になります」
そして5時間にも及ぶ、壮絶な冒険の末、俺は、3日分の生活費、という莫大なお金を手にした。
「待っていろ一戸建て。貴様はもう目の前だ」
俺は、宿屋を予約し、荷物を置いて、定食屋で食事をして、エールを1杯飲んで、そして帰り道、道端で吐いた。
優しいお婆さんが、スコップで土ごとすくって、掃除をしてくれた。
田舎は良いところだと、改めて思った。
お読み頂きありがとうございます。
更新、頑張ります。