7月2週 火曜日
村35 町50
ダ40 討伐1 フ13
人1 犯1
魔100 中13 上1
剣100 剣中13 剣上1
回復78
治療76
採取100
草26 花5 実49
料理8
石工4
木工26
漁1
歌3
体55
女7
トルポ山道町のように、町の前に2文字の言葉がつく場合は、人口が2000人から3000人ほどいる。
つまり、ヘデラル坑道町と同じ規模の町だ。
しかし、発展度合いで言うのなら、トルポ山道町の方がとても栄えている。雲泥の差と言っても良い。
この町を見れば、ヘデラル坑道町は、ただただ人口だけが増えたような、秩序も何もない辺鄙な場所のように思える。トルポ山道町、流石は山の向こうとこちらを繋ぐ中継地点。
滞在期間が長いと嬉しいな。色々と見て回ってみたい。
そう思っていたからか、行商人達に、キュレトン方面へ乗せていってくれと頼んで回ったところ、快く受けてくれた人が、休日に出発すると言っていた。
「私はこの町でも店を持ってるので、やることもありましてね。顔を出さないといけないんですよ」
聞くと、結構大きな商家の人。
「しかし、本当に良いんですか? 僕らで。聞いた話じゃ、専属の護衛の人がいるとか」俺は周囲に聞いた話を受けて、そう聞いた。だからあの人は無理だよ、と言われていたのだ。
「ええ、いつもの護衛もいるんですけどね、5人。ただ、実はその内2人がこの度結婚するとかでね、お互いの実家に挨拶に行かなきゃならなくて」
異世界でも結婚前の挨拶ってやるのか。
外国もあるのかな? あるんだろうなあ、意外とどこも一緒なんだな。ちょっと面白い。
「そりゃめでたいですね」
俺がそう言うと、商家の人はニコっと笑う。
「ありがとうございます」
ポッチャリしているからか、人に好かれそうな笑顔だと俺は思った。
「そういった理由で、丁度2人分、席が空いてたんですよ。私は馬車2台で行きますので、おそらくお2人は別々の馬車に乗って護衛する、なんて形態になるんですけど、大丈夫ですか?」
「なるほど、そういうことだったんですね。全然大丈夫です、って、自分だけで言ってもアレですけど。一回その人達と顔合わせとかしといた方が良いですかね?」
「あー、是非お願いしたいです。冒険者ギルドで、ラケーロ家の護衛って言えば分かると思います。今はいないかもしれませんが。この町の町付き冒険者です」
「分かりました。ありがとうございます。お願いします」
俺はそう言って、アンネと2人頭を下げ、冒険者ギルドに向かう。
受付で聞いたところ、言われた通り、その冒険者達はいなかったので、伝言だけを残すことにした。
「明日の朝、また来るので、その時に伝言残しておくように言っておいて下さい」
「かしこまりました」
受付のお姉さんは、事務的ながらも丁寧な言葉遣いで了承してくれた。俺とアンネは、再び頭を下げ、冒険者ギルドをあとにする。
「エト様は本当に社交的ですね。冒険者登録はしておられないのでしょう? 我がもの顔でしたね」
そうして歩いていると、アンネからそんなことを言われた。
「あ、駄目だっけ? 登録してなかったら使っちゃ。いや、伝言くらい別に良いんじゃなかった?」
「ええ全然良いです、が、登録していないと、なんとなく居辛くありませんか?」
「分かる分かる。それは思う、でもまあ、気にしないことにしてるよ」
「それで本当に気にしないでいられるというのは凄いですよ。サッパリした性格と言っておられましたが、本当のようですね」
「そんなこと言ったっけ? まあ、そうだけど。え、それサッパリ関係あんのか? なんか鈍いだけじゃ……」
俺達はそれから、防具を売る店を回った。
トルポ山道町には、防具専門店だけでも3件。防具以外も扱う店を含めたなら、8件もあった。凄まじい店の数だ。流石は都会。
「店にいつも置いてるのは少ないけどな。ダンジョンねえから、常に置いといても売れねえからよ。大体は注文受けてから、材料発注してって感じだ。……大体1週間くらいかかるかなあ」
ただ店の品揃えに関しては、テトン町の方が多かったように思う。
いや、馬車に乗る人が身につける用の防具に関しては、こっちの方が多いか。
なら、問題ないと、俺とアンネは1件の防具専門店で、防具を選んでいった。
キュレトン市までの道のりはまだまだ長く、防具が必要になる場面は多く予想されるため、頭、胴、腕、腰、足の全ての部分の防具を購入する。言っちゃ悪いが、お金はあるのだ。
生活に使う資金でもあるので、なるべく節約して無駄遣いは避けたいが、ここはケチれない。今までケチってたけど。失敗!
「どんなのが良い?」
「ダンジョンで使う物より、ATKとDEF……ですか? それが低くて構いません。大体、5階か10階で使う武器防具で十分です」
フィールドでは、その程度の防具でも、十分な防御力になるらしい。
まあ確かに、弱い魔物相手にはこれで良いし、強い魔物相手なら防具がどんなものでも死ぬし、良いんだろう。いや、良くはないと思うが。
俺達は1時間ほど見て回り、一箇所銀貨20枚程度の防具を、それぞれ購入した。ちなみに、俺が神様から貰った初期装備より、少し弱いくらいだった。
神様は俺の防具を金貨1枚くらいでそろえたらしい。安上がり。なんて野郎だ。
少し教会に寄って文句でも言おうかと考えたが、さすがに罰当たりだと思ったので、教会はスルーして昼食へ。
評判を聞かず、自身の鼻と、アンネの腹に賭けて店を選んだ。
割と、当たりだったと思う。
異世界の食事も中々慣れてきた。日本に戻ったら、多分何もかも美味すぎて泣くと思う。それくらい慣れた。
昼食中、俺達は基本的に無口で食べる。
ただ、今日はなぜか2人してよく喋った。そしてそんな中で、俺は衝撃の事実を知った。
「しかしエト様。探検者が不向きと言っていたのに、また護衛を引き受けるのですね?」
「探検者? ああ、冒険者のダンジョン入らない版のことか。いやだって、護衛じゃないと馬車乗れないでしょ」
「おそらくこの辺りからは、乗り合い馬車が出ていると思いますよ? おそらくですが」
「乗り合い? 乗り合いタクシー、的な?」
「タクシーがなんなのか知りませんが、町から町へ、馬車が定期的に出ているんです。お金は多少高くつきますが、護衛がいますので戦う必要がありません」
「マジか。知らなかった……。そんなもんないって、俺、前に言われたんだけど」
「あっちは田舎ですから、移動する人がおらず、採算が合わないのでしょうね。知らなくとも無理はありません」
「町を移動するのは、落伍者くらいだって」
「そんな田舎の風習も残っているのですか。私の母国では、求める物がある町へ移住するのが当たり前でしたよ? 町によってはない施設や盛んな業種が山ほどありましたし」
「えー……」
「まあ、この辺りも、そんな風習があるのかもしれませんが。しかし、キュレトン市ではそんなことを言っている者はいませんでしたよ。乗り合い馬車はありましたし、私が母国から来たルートでも、そうでした」
「……前、アンネ、馬車に乗っけてくれる人がいなくて移動が大変だったって言ってなかった?」
「冒険者で、お金に余裕はありませんでしたし、仲間にビーストがいましたので、倒した魔物はアイテムボックスで持ち帰れましたから、護衛の方が良かったんですよ。エト様もそれはできますが、人前ではやらない方が良いですし、お金には余裕がありますよね?」
衝撃の事実とは、フィールドで戦う必要のない移動方法があるということ。
町を出て他の町に移り住むのは、落伍者くらいというのは、田舎の風習だということ。誰に言われたか忘れちゃったけど、あいつは田舎者だったのか。まあ、今まで行った町は全部田舎だから、田舎者か。くそ、田舎者がっ。
俺はヘルプを開いて、色々と調べてみた。
異世界の常識は既に身についたと思っていたから、最近は開いていなかったのだが、見るとどうやらヘルプには俺の知らないことがずらりと載っているようだった。
「ちょっと移動するだけで常識変わりすぎだろ……。日本なんてどこ行っても変わんないぞ……、知らねーけど」
俺はため息をつく。今度からマメに調べようと思った。
「今回の護衛が終わったら、そっちも探してみるか。あーでも、防具無駄になるのか、いや、防具って使いこんでなかったらそこまで値段落ちないっけ?」
「そうですね」
「なら、やっぱり探そう。キュレトンに近づいてく内に、いつか見つかるだろ」
「今回はどこまで行くのでしたか、サンクェルス古城町でしたか」
「そうそう。大きい城があるらしい。見たことある?」
話は弾み、食事を終えてからもしばらく席に座っていたのだが、後ろから店主が睨んでいるのに気づき、俺達はそそくさと席を立つ。
気まずかったが、しかし、アンネとの会話はそれからも続いた。
終わったのは、眠る直前。
俺のベットと反対向き、頭の上に頭があるような並びに置かれた布。それがアンネのベット、というか布団。
会話がしやすい位置にあったので、それぞれ入ってからも、俺達は会話を続けた。
3週間近くもずっと一緒にいて、よくぞここまで話すことがあるものだと思ったが、よくよく考えれば、俺達はお互いのことを何も知らない。
アンネも、俺が別の世界から来たことは知っていても、その異世界がどんなところか、俺が何をしてきたのか、そしてこの異世界に来てから何をしていたかなど、何も。
俺だって、アンネの過去は何一つ知らない。ちょいちょい武家の娘というワードが出てくるため、良いトコのお嬢さんなのは理解しているが。
そのため、俺達の会話は尽きなかった。
「でさあ、俺はその時……アンネ? 聞いてる? アンネ……」
「すー。すー」
「寝たのか。ふわあー、俺も寝よ。おやすみ」
俺は雨音を子守唄に、心地よい眠りについた。
お読み頂きありがとうございます。
また、ブックマークや評価もありがとうございます。かなり増えていてビックリしました。これからも頑張ります。
少し所用があり、長らく更新できなかったのですが、終わりましたので、これからは頑張って更新します。と言いつつまた急に更新しなくなったりすることもあるかと思いますが。なんだか自分でも信頼できなくなっています。
ともあれ頑張ります。明日は投稿すると思いますので、どうぞ宜しくお願いします。