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123/144

7月2週 月曜日

村35 町49

ダ40 討伐1 フ13

人1 犯1

魔100 中13 上1

剣100 剣中13 剣上1

回復73

治療76

採取100

草25 花5 実49

料理8

石工4

木工25

漁1

歌3

体55

女7

 岡目八目という言葉があるように、自分のことを正確に理解することは、中々難しいものだ。

 人の良いところや悪いところならいくらでも言えるが、自分自身の良いところや悪いところは、すぐには言えないものである。


 俺の良いところってどこだろう。これから頑張るべきものってなんだろう。

 俺はそんなことを考えていた。


 戦いの最中に。


 だから、振られたナイフが、俺の手の甲を掠めていった。

「――っと! いっ――、当たっちった」

 直撃は躱したのだが、ギリギリ手の甲に触れ、一文字に傷が付く。血がジワリと滲み出た。

 傷の深さは1mmか2mmか。ナイフで斬られたにしては傷は深くない。だが、ジンジンと燃えるように熱く痛む。


「大丈夫ですかエト様!」

「大丈夫大丈夫このくらい。……油断したなあ」

「相手がゴブリンとはいえ、油断禁物です。来ますよ!」


『ゴブリン

  ジョブ:小鬼

  HP:100 MP:100

  ATK:2 DEF:1

  CO:--』


 敵はゴブリン、3匹。

 馬車から降りて、休憩をしようとしたその瞬間、突如現れ、そして襲いかかってきたのだ。


 馬車に乗っている間は、鎧を装備しない。防具を装備すると、体重が200kg300kgになるので、馬車を引く馬の負担になってしまうためだ。

 普通は、軽い防具を購入して、移動中も身につけるものなのだろうが、俺達は結局買わずにきてしまった。しかし、休憩に入れば、鎧を装備する。ダンジョン用の重い鎧だ。休憩中はどんな防具を身につけようが、馬の負担になるようなことはない。襲われる確率が一番高いのは休憩中なので、それで良いと思っていた。


 しかし今回は、休憩に入ろうとした瞬間、つまり、鎧を装備する前にゴブリンに襲われてしまった。

 普段なら手の甲は、手甲か何かで守っているため、斬られてもなんともないのだが、そういうわけで露出しており、流血を許してしまった。


 俺はこれからだ、と思った翌日に怪我をするなんて、なんてツイてない!


 俺は手の甲から流れ出る血を、チラリと見て確認し、ゴブリンへと目を向け直す。

「この!」

 そして、怒りを込めた蹴りを打ち込んだ。


 鎧を装備していないため、俺の体重はそのまま、90kgくらい。

 蹴りの威力はいつもと比べれば限りなく貧弱だった。だが、ゴブリンのような小さな生き物には、それくらいで十分脅威足り得る。


「――い!」

「ギャギャ!」

 ゴブリンは脇腹に決まった蹴りに、少し吹き飛んでから転び、1回転2回転。


「ギャ……」

 ヨロヨロと起き上がると、脇腹を抑えながら逃走を開始した。

 3匹いたゴブリンの内、1匹が逃げ出したことで、もう1匹も逃げ出す。残る1匹は、既にアンネに殺されてしまっているので、これでゴブリンはいなくなった。


「ふう……終わりましたよ。――もう大丈夫です! 出てきて大丈夫ですよ!」俺は馬と一緒に隠れていた行商人に声をかけた。

「おおー、そうか、あー、ビックリした。いや、ゴブリンなんて簡単に倒せるんだけどな。普段なら。今日はちょっと朝から腰が痛くてよお、ほら、嫁さんと久しぶりに会ったから。分かるだろう? だからちょっと戦いたくなくてなー、本当は余裕なんだけどな」

 聞いてもいないことまで喋る行商人に、「分かります分かります。強そうっすからねー」と適当に相槌を打つ。


 しばらく言い訳を聞くと、行商人は満足したのか、「休憩終わったら声かけてくれよ。あんたらに合わすよ」と言って、興奮する馬を宥めに向かった。

 俺はそれを見届け、すぐに反対側を向いた。アンネの元ヘ行かなければならないからだ。


 街道で魔物を倒したなら、その死体を街道から離した場所に持っていかなければならない。馬車が通っても大丈夫なように、他の魔物が食べに来ても大丈夫なようにするため。ただ、その作業を、今はアンネ1人に任せてしまっていた。

 ゴブリン1匹なので、1人でできない作業ではないから、俺は、もう終わったかもな、申し訳ない、と思いながら、アンネの元ヘ向かった。


 しかし作業は、全く終わっていなかった。

「エト様」

「え、なに?」

 アンネは、馬車の荷台の方に行っており、荷物の中から水筒を取り出し、俺の方へやってきた。


「手を」

「手?」

「はい。失礼します」

 アンネは言うや否や、俺の怪我した手を自分の方へと引っ張り、傷口を観察する。


 そして、水筒の水を口に含むと、その傷目掛けてペッと吐き出した。

「汚え!」

 俺は避けた。何をする!


「避けないで下さい。こうしておかないと、傷口が悪化しますよ。特にゴブリンのナイフは、掠っただけでも死んでしまうことがあります」

「ああー、感染症とかってこと? 怖っ! ……でも、あれだぞ、アンネ。舐めたら消毒できるとか言うけど、あれって逆にばい菌つくこともあるから、最近はあんまり推奨されてないぞ」

「くちゅくちゅ。ぺっ」

「冷た! 話聞けよ……、汚い……」


「あと、足。ゴブリンを蹴った時、痛がってましたよね。その後も少し引き摺ってましたし、痛めましたね? ねんざですか? 縛って固めますので、少し腰掛けて下さい」

「捻挫あんのね、異世界も。というかよく見てたな……。別に良いよ、大したことないだろうし」

「いけません」


 アンネはそう言うと、無理矢理俺を座らせようとした。

 なんだか恥ずかしかったので、「課金があるから、課金。そっちでなんとかするって」と言って、それを躱した。


「えーっと、ナイフのは……、消毒もか」

『キリキズナオールスコーシ 銅貨30枚』

『キズグチキレイナール 銀貨1枚』

 まずはそれを購入。アイテムボックスに入っていたのは、絆創膏と、プラスチックボトルに入った液体タイプの消毒液だった。なんでだよ。


 絆創膏は、5枚入り。使用期限は1週間。

 消毒液は、結構な量が入っていて、使用期限は1ヶ月。使いきれはしないだろう。銀貨1枚は高い。

 俺だけに使うのは勿体ないので、アンネの怪我も探して使っておいた。足に、枝で切ったらしい傷ができていたので。


「それと、足は……」

『イタイノトンデーク 銀貨5枚』


「こっちは高いし、治るわけじゃなさそうだから」

『サッキイタメタトコナオールスコーシ 銅貨60枚』

「こっちかな?」


 購入すると、アイテムボックス内に、湿布が追加されていた。

「湿布か……」俺は呟く。なんか、世界観がなあ。この、剥がした後の透明なフィルムとか、どう処理すりゃ良いんだろう。

 ともあれ、効果は凄まじい。貼った瞬間から効き始め、あっという間に痛みはなくなった。


「よし。これで良いだろ?」訝しげに見ていたアンネに向かって、俺は言う。

 課金は本当に凄いな。継続的にお金を稼ぐようなことには向かないが、こういう緊急時は非常に役に立つ。


 これからの未来、ってことを思うなら、課金についてもよく考えた方が良いかもしれない。

 まだ異世界に慣れていないので、どの程度大っぴらに使って良いのか分からなくて、我のために課金しておれルートを避けるため、積極的には使えなかったが、何か方法を……。


 身体能力を一時的に上げる課金を使って、強大な魔物を倒すとか。

 ATKDEFを上げて、ダンジョンの高い階に挑むとか。何か……。


 あ、土壌を改善する課金を使って、農業をするとかもあるのか。うーん、でも冒険者で行くって決めてるからなあ。それに、農業は運の要素も強いから恐い。農協がないから、天候次第で死ぬみたいだし。飢饉は怖い。

 何か、今以上に活かす方法はないんだろうか。町についたら、結局あのATK+5のスプレーとかしか使わないと思う。ちょっと勿体ない気がした。


「治ったようですね」俺が手足をプラプラさせたのを受けて、アンネは言う。「しかし、ゴブリンごときにそれほど怪我を負わせられるとは」

「フィールドで戦った経験ってほとんどなくてねー」

 俺は言い訳のように答えた。


「確かにダンジョンと戦い方は違いますが。ゴブリンと戦ったこともないのですか?」

「……ない……、わけじゃないけど。どうなんだろ、あるよ。あるある」

「装備などはされてましたか? どういう場面でです?」

「さあ、どういう場面だっけ」

 しかし次の言葉にはとぼけて答えた。あまり思いだしたくない記憶だったから。


「それより、ゴブリンの死体を片付けよう」

 俺はすぐに話を変え、死んだゴブリンの元ヘと向かった。


「私がやっておきますよ」と言うアンネを制し、2人で一緒にゴブリンの死体を運んだ。

 腕を握り、引き摺るように。


 ゴブリンの腕は、生暖かく、ぶよぶよしていた。

 腕を掴んでいたので、手は歩く度にブラリと揺れていた。そのため、たまにだが俺の腕にもその手が当たった。その手がバッと掴んでくる、ようなことはもちろんない。手は、まったく力が入っていない、例えるならゴムまりというか、祭りですくった水風船のようなものだった。

 ああ、もう生きてないんだな。俺はそう思った。


 俺達はそれを、街道から少し外れた茂みに放り込んだ。そして、街道についた血を、土を盛って消していく。

 ゴブリンの痕跡は、どこにもなくなる。


「エト様、顔が真っ青ですよ」

「大丈夫。大丈夫だ。全然」


「先ほどゴブリンとの戦いを聞いた時、濁していましたが、それと関係あるのですか?」

 アンネが心配そうに探ってくる。

「ないない。違う違う。ただ単純に死体が気持ち悪かっただけ。なんであんなブヨブヨしてんだろうね」

 俺は触っていた方の手を、ブンブン振りながらそう答えた。


「俺、こうやってダンジョンの外で戦う人、向いてないわー」

「そのようですね」

 アンネは即答した。否定してくれよ、と少し思わないでもなかった。


「というか……、いえ、今は良いですか」

「なに?」

「いえ、なにも」


 アンネが言いかけ止めた何かが気になるが、気分の悪さが勝ったので、俺は会話を続けず、課金リストを開いた。

『キブンアガールスコーシ 銅貨10枚』

 そして隠れて1本飲む。少し元気が出てきた。


「トートサスさん、休憩終わりましょう。こっちはもう大丈夫です。行きましょう行きましょう。いざ、トルポ山道町へ!」

「お前が仕切るなよ。でもまあ、行くかー」


 トルポ山道町は、俺が見た異世界の町の中で、最も大きく栄えていた。

 色々見て回ろうかと思ったが、気分が悪かったので、俺はすぐに宿で眠った。疲れもあったのか、爆睡だった。何度か、アンネが枕下に立って、お腹を鳴らしている音が聞こえたが、起きてやらなかった。

 お金持ってるんだから、自分で食べに行け!

お読み頂きありがとうございます。

ブックマークや評価、ありがとうございます。励みにしています。


早く投稿する詐欺を、依然として続けている状態です。先の展開が決まっているのですが、そこまで書いたら良いのか迷っています。力がないなりに、少しでも面白くを目指し、奮闘していますが、やはり力がないため難しく……。

大変ご迷惑をおかけしております。


スピードも心がけ頑張ります。

読んでいただいてありがとうございました。

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