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121/144

7月1週 土曜日

村35 町48

ダ40 討伐1 フ12

人1 犯1

魔100 中13 上1

剣100 剣中13 剣上1

回復68

治療76

採取100

草25 花5 実44

料理7

石工4

木工22

漁1

歌3

体55

女7

 働かざるもの、食うべからず。

 異世界においては、絶対の法則である。


 科学技術が発展しておらず、農法や酪農の方法なども広まっていない異世界では、食料が限られている。

 つまり、働いていない者にわけ与えられるほど、作ることができないのだ。


 働かざるもの、食うべからず、とは、人の良識を試すものでも、働けという意味合いでもない。ただただ単純に、その分が不足する、という意味である。


 だから、異世界に生きる人々は、食べられるように働かなくてはならない。

 それは、農業者でもそうだし、冒険者でもそう。

 奴隷でもそうだし、そして、盗賊でもそうだ。


 サンリュー村から、キュレトン方面に行く行商人は大勢いたのだが、ほとんどの人は、お代なんていらないから乗っていってくれ、と言ってくれた。

 理由を聞くと、どうやら、サンリュー村から、次のトルポ山道町との間には、近頃盗賊が出没しているらしい。


「襲われるとは限らないんだけど、一応な」

 市にて、乗っけてくれる予定の人が、店を出していたため、俺は話を詳しく聞かせてくれと頼んだ。


 俺は今まで、盗賊を1度も見かけていない。

 なぜなら、俺が辿ってきたルートを、盗賊が根城にしていたとしても、食べ繋げられるほど、馬車が通らないからだ。


 もちろん馬車1台には、食料が大量に積まれてはいる。盗賊は1人ではなく4人5人のチームを組んでいるが、2週間分くらいにはなるだろうか。

 しかし、2週間に1台の馬車を襲うというのは、行商人の数に対してあまりにも大きい。

 カルモー村とヘデラル町を繋ぐ行商人なんて、1人しかいなかった。一回の襲撃で全滅だ。盗賊はそこで餓死するだろう。


 そして、馬車の数がそれだけというのは、決して珍しいことじゃない。

 小さな村には、1人いるかいないか。ヘデラル町やテトン町には、10人かそこらの行商人が常にいたが、しかし赴くルートはバラバラで、それぞれのルートで考えたなら、やっぱり1人か2人まで減るだろう。


 しかし、ここサンリュー村は、村ではあるが、去年まで町だったほどに栄えた村であり、山の中腹にて、山向こうとこちらを繋ぐ役目を担う、重要な拠点の一つだ。馬車の数は、今までより倍ほどもある。

 また、行商人のルートは、キュレトン方面の山向こうに行くか、ヘデラル方面へ山を下るか、ほとんどその2つに限られるため、同一ルートを多数の馬車が使う。


 盗賊がいても、おかしくないのだろう。

 俺は確定した情報に、思わずゴクリと唾を飲みこんだ。


「まあ、この辺りの盗賊なんて、どっかの村の若い連中だからな。荷袋が1つ2つ盗まれるだけで、別に大したことないんだが」

「あ、そうなんですか」

「逆に、馬の前に出てきて、ひき殺しちまう方が、俺は怖いよ。馬がこけて怪我したり、馬車が壊れたりするかもしれないしな。大損だ」

「な、なるほど」


 異世界の人は皆、強いなと思った。ひき殺すってマジで怖いな。

 盗賊も中々命がけのようだ。


「安心しました。別に襲われるってことはないんですね?」

「おう。護衛がいる馬車に、わざわざ手はださねえだろ。石でも投げてくれりゃあどっか行くさ。本格的に盗賊がいるところって言うと、やっぱりトルポより向こう側だろうなあ。あっちには結構出るらしいぞ? キュレトンに向かうんだったら、覚悟しといた方が良いな」

「え、マジすか」

 どうやらこの先、盗賊と戦うこともあるかもしれないみたいだ。


 トルポ山道町に向けての出発は、明日。

 昨日までずっと雨に濡れてきたため、休んだ方が良いだろうということで、わざわざ明日出発する人を選んだ。

 課金で体力面は回復できるものの、お金を使わずに済んだらそちらの方が良いに決まっているし、正直体を元気にするお薬は怖いし。以前は、テンションに任せてよく使っていたが。まあ、あの時も結局失敗してたか。


 目的地は、お隣のトルポ山道町。

 サンリュー村にいた行商人のほとんど全員が、キュレトン方面の次の町、トルポ山道町よりキュレトン側には行かない。

 トルポが、ここいら一帯の物流の拠点であり、そこで行商人の派閥のようなものがプッツリ分かれていることが原因らしい。

 俺を乗せて行ってくれる人も、「キュレトン方面に向かう知り合いはいねえ。あんま仲良くすると、こっちで物とか情報を売ってもらえなくなるからな。紹介はできねえ」と言っていた。


「男の嫉妬ってのは厄介っすねえ」

「若いのに分かってんじゃねえか。将来有望だぜ」


 行商人と2人、大きく笑った。


 さて、しかし、トルポに着いたらどうしようか。紹介がないなら、乗せてもらうための交渉が面倒だな。

 まあ、ここも、紹介無しで見つかったから、なんとかなるか。


 行商人と、それからも少し雑談をして、会話が途切れた頃、俺は別れを切り出した。

「それじゃあ、また明日。よろしくお願いします」

 まだまだ、買い物をしなければならないからだ。


 行商人も、商売をしなければならないため、俺に構っているばかりではいられない。俺の別れの挨拶に応じた。

「おうよ。あの亜人の姉ちゃんもな」

「はい」

「あ、つーか、これから明日まで休むって言ってたな。冒険者なら、ダンジョンに行っても良いんじゃねえか?」

 いや、応じなかった。


 お喋りだなコイツ。

 というか、ダンジョン?


「あるんですか? ないって聞きましたけど」

「あん? 誰から?」

「いや、行商人の人から。結構遠い町でですけど」


「だったら知らねえだろうよ。俺も他の町にダンジョンあるかどうかなんて知らねえもん。キュレトンにあるのは知ってるけどよ」

「……行商人って、情報とか集めるんじゃ」

「なんでそんな無駄なことを」

「え、でも商人ってそういう……。ダンジョンがあるから、人の流れが、とか」


「お前さんだって、物売る時の相場とか知らねえだろ? 他の職のことなんざ知ったこっちゃねえよ」

 ……そんなもんなんだ。

 商人はなんか……情報を仕入れてそれで戦ってるってイメージだったけど。まあ、確かに今思い返すと、大体の人らは他の村とか町の情勢には詳しくなかったな。


 そこら辺のおばちゃんの方がよく知ってたくらいだ。

 ちょっとガッカリした。商人が悪いわけではないが。


 ダンジョンは、聞くところによると、全く管理されておらず、騎士団すらいないのだとか。

 冒険者ギルドこそあるものの、全く稼げないとかで、ダンジョンに入る冒険者はおらず、フィールドで稼ぐ方の冒険者ばかり。村付き冒険者だけはたまに入るが、それくらい。


 人が入らないとダンジョンは、1階の魔物を外に出すのだが、しかし弱い魔物しかそのダンジョンにはいないため、出てきても全く問題なく、だからこそ管理もしなくて良い、と。


 そこまで弱い稼げないと言われてしまうと、行きたい気持ちがあっても行く気にはならないのに、元々行く気がなかったのなら行くはずもない。

 休む方が良いなと思い、俺は断った。

 行商人も思いつきで言っただけのようだったから、特に気を悪くした風もなく、会話は今度こそそこで終了。


 俺は買い物を再開した。


 途中でアンネと出会い、トルポまでの道すがらで必要なものを、相談しながら買って行く。

「そういえば、盗賊は大したことないらしいよ」

「そうなんですか。それは良かったですね」

「石を投げてくれってさ。投石は多分俺、めっちゃ得意だわ。ピッチャーだったからね」


 アンネと出会ってから、2週間と少し。期間でいえばそう長くないが、四六時中一緒にいるため、共に過ごした時間は長い。

 噛み合わないことは、もうほとんどなくなった。


「そうなんですか? 私は投石は苦手なので、教えていただきたいですね。では、投石紐でも作りましょう」

「投石紐?」

「……投石が得意なのでは? まさか手で投げるおつもりで? ああ、そう言えば、あまり栄えていない世界から来たのでしたね。投石は、手でやるものではないんですよ」


 噛み合わないのは、たまにだけだ。

 ……いつか、アンネにも、俺が科学技術に優れた世界から来たことを教えてやらなければならない。何か、何か俺に作れそうなものはないのか……。


 買い物とは別のことに頭を悩ませながら、俺は市を回った。


 そして、宿に戻り、購入した荷物を置いて、夜ご飯を食べ、眠りについた。

お読み頂きありがとうございます。


これからもがんばります。

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