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7月1週 木曜日

村34 町48

ダ40 討伐1 フ11

人1 犯1

魔100 中13 上1

剣100 剣中13 剣上1

回復59

治療76

採取100

草23 花5 実44

料理7

石工4

木工20

漁1

歌3

体55

女7

 課金は、リアルマネーを使い、ゲームを有利に進めるためのものである。

 ガチャを回す、強力なアイテムを手に入れる、ゲームマネーを増やす。


 様々あるが、そのどれもに共通していることは、それを再びリアルマネーに再変換することはできない、ということ。


 しかし、現実に課金がある場合は、それがリアルマネーとして返ってくる。ATKを上げたり、DEFを上げたり、課金としてはオーソドックスなそれらは、稼ぎに直結してくるからだ。

 だが、課金を使って稼ぐ方法は、どうにも見当たらない。


「じゃあどうぞ。銅貨1枚になります」

「どうも。銅貨1枚お支払いします。いただきます、もぐもぐ。……、……んー、酔いはなくなりませんね、ただのハナミズ味の何かです」

「やっぱそうかー。売れるんならいくらでも金稼げたんだけどなあー」


 アンネと2人、荷台で揺られながら、色々な実験をしたのだが、今のところ成功例はなかった。


「売ると効力が完全になくなるんだなあ。見返りのある譲渡も駄目で……」

「そうですね。1歳若返るなどは、相当な金額で売れるかと思いましたが、この調子では効かなさそうですね」

「まあ、目の前で使ってみて、試しに一つどうぞ、って使わせてみて、それから買わせて二度と会わなければ良いかもしれないけどね」

「犯罪ですね。私がいる限りは許しません」


 冗談で言ったが、アンネの目は怖かった。


「まあ、なんにせよ課金がバレると、危ない目にあうかもしれないから、売るつもりもなかったけど」

「稼ぐ手段としては、やはり地道に少し強化して挑む、でしょうか」

「うーん」


 俺は腕を組み、空を仰いだ。


 努力する、と決めてから、俺は色々なことを考えている。

 大半は日本でもっと頑張れば良かったなあ、という後悔ではあるが、異世界でどう頑張るかも、俺なりに。


「ATKとかDEFとか、身体能力を超強化して、ダンジョンの高い階に挑む、とか」

「きっと、装備が弱ければ、一撃で破壊されてしまいますね。こちらが逆に一撃で倒せたなら、また別だと思いますが」

「そこまでの強化はなあ……、無理だなあ……。治療院みたいなことができれば楽なんだけど……」

「そういった職業には、教会の者か、町の名士がつきますから、参入はできませんね」

「副業的な感じでも?」

「というか、危険ですね。村八分にあう危険性もあります。それに、値段を聞く限り、実際の価格とそこまで大差はありませんから、難しいと思いますね」

「そっかー」


 課金で稼ぐ。俺はそれを手始めに考えた。

 俺が異世界で生きていく上で、稼ぐためにできることの中で、課金が最も重要だろうと思ったからだ。


 ただ、課金は、数は膨大で、様々なことができるのだが、基本的に金を使ってまでするようなことでもないものがほとんどだ。

 何があるかを、すぐに忘れてしまうほどに。

 凄いのとか、緊急時にすぐさま使いたいものとかは覚えてるんだけどなあ、リストのどこら辺にあるかも。


「ですが、HPとやらが減らなくなるものや骨折がすぐ治るものはありがたいだろう? いざという時にそれがあれば命が助かる」

「それは本当に」

 しかし、そういったものを、常にアイテムボックスに入れておくことはしていない。

 なぜなら、それらには賞味期限があるのだ。なんでそんなもんがあるんだよっ。いや、そりゃあ食べたり飲んだりするから、あるだろうけどさ。


「HPヘラナクナールとか、錠剤のくせに、3日だもんなあ。コッセツナオールは液体だから消費期限1日も分かるけど、錠剤はもっと長持ちするだろ」

 うちの母親とかは、去年貰って使わなかった薬とかも出してきてたぞ。

 怖いから隠れて捨ててたけど。


「凄い力だと思いますよ?」アンネは俺が不服を表したからか、そう慰めてくれる。

 それは俺も分かっている。


 課金は凄いものだ。凄い力を持っている。何もない人と比べたなら、凄く恵まれているだろう。

 だがそれは、決して楽ができる力ではない。課金すれば、自動的に人生の勝ちが決まるようなものでは決してない。


 言わば、投資のようなものだ。


 何に課金すれば稼げるのか。

 何に課金すれば損しないのか。


 だが、普通の投資とは違って、投資先が自分である。


 だから、結局は努力がいる。


 こうやって、何をどうすれば良いか、必死で考えなければ、成功なんて夢のまた夢だ。

 今もまだお金は、金貨は50枚ともう少しあるが、考えなしに使っていれば、すぐになくなるだろう。


 神様は課金で楽に暮らせと言ったが、一体どうやって楽に暮らせと言うのか。

 確かに凄いけど。凄いけどっ。


 凄いけど……。


 異世界は、課金じゃどうにもならない。

 才能と、そして努力だ。


 結局何も変わらないなあ……。


「はあー」

 俺は思わずため息をついた。


「何をため息ついている――のですか。頑張るのでは?」

 すると、アンネがすかさず横からそう言ってきた。

 俺は、疲れ落ち込んだ顔をしたまま、アンネを見る。アンネは、とても綺麗だ。


 ああ、なら、頑張るか。

 こんな子が期待してくれてるんだから、俺の人生もそうそう捨てたもんじゃない。頑張る価値はあるだろう。

 そりゃあ、頑張っても頑張っても、運が良くないだけで、何にも手が届くことはない。でも……。


「しかし貴さ――、エト様は、随分学は高いように思います。文字は書けますし、言葉もよく知っています。計算も人一倍できていました。冒険者でなくとも、働き口はあるのでは?」

「そういうところは、コネで決まるって聞くよ?」

「それはそうですが、エト様なら問題ないでしょう。テトンでも随分馴染んでいましたし、行商人ともすぐ親しげになります。紹介して貰うくらいはできると思いますよ?」


 アンネは言う。

 俺が特別、人と親しくなるのが上手いとか、そんなわけは、別にないと思うが、まあでも確かに、働き口を紹介してくれと言えば、もしかするとしてくれるかもしれない。

 以前木こりに誘われたこともあるし。


 でも……、俺は冒険者として頑張りたいんだ。

 だってアンネは冒険者をするんだから。


 俺が別のところに就職したら、アンネは別の人と冒険に行くのだろう。

 もしそんな時、アンネがピンチになっても、守れない。別の奴が守るかもしれない。

 そして、俺が頑張っても、その姿を見てもらえない。


 アンネには、良いトコ見せたいじゃん?


「いや、俺は、冒険者で頑張るよ」

 俺は言う。


「そうですか。分かりました、そうですね、私もそうしてもらえるのが、一番助かりますね」


 だって、アンネに、好きになって貰いたいじゃん?


「まあ、その割にはもう随分情けないところ見せた気がするけど……」

 泣いてるとことか。泣いてるとことか。


「? 何か言ったか? エト様」

「あ、いやいや、なんでもない。頑張ろう頑張ろう。とりあえずはそうだなあ、兎とって……、解体、してみるか……」

「……ふふっ。そうか。ああ、良いんじゃないか?」

 アンネはそう、面白おかしそうに笑った。

お読み頂きありがとうございます。


頑張ります。

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