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113/144

6月4週 休日

村34 町46

ダ40 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中13 上1

剣100 剣中13 剣上1

回復39

治療76

採取81

草16 花5 実33

料理7

石工4

木工12

漁1

歌3

体55

女7

 馬車を引っ張る馬は、馬と似て非なる魔物である。

 ゆえに、種類によっては、時速100km以上で走る種類も、空を飛ぶ種類も存在する。

 しかし、一般に広く使われる安い馬魔物はそうではなく、馬力も最高速度も持久力も、馬と似たようなものしかない。


 そのため、時にはぬかるみに嵌まり、動けなくなる。

 そんな時には、押す必要がある。


「せーの!」

 俺達と行商人の奴隷は、行商人の声に合わせ、馬車を強く押した。

 服の裾は、既に泥でぐちゃぐちゃだ。


 しかし、それだけ頑張っているのに、馬車は一向にぬかるみから出てくれない。

 ほんの少し前に進むだけで、力を緩めれば、また止まってしまうのだ。


「完全にここの道はダメだな」

「そうですね」

「こりゃあ、このままやってても無理だ。……しばらく頼むわ」

「了解です」

「ピアソ、お前もな」


 だから、俺は行商人の奴隷と一緒に、アイテムボックスから防具を取り出して着込んでいく。

「私の防具もお願いします」

「いや、俺1人で良いよ。アンネは荷台で座ってな。風邪引くし」


 アンネはまだ何かを言いかけたが、他の人がいるからか、人見知りが発動し、あまり上手く喋れない様子。

 荷台に座ろうとはしないが、防具を渡せとも言ってこなくなった。俺はそれ幸いと、自分だけ防具を身に付けた。


 そして、「行きますよピアソさん、せーの」と行商人の奴隷と声を合わせ、荷台の後ろから、グッと押す。

 4人で力を合わせて押していた時よりも、馬車はぐんぐん動き始めた。


「悪いな。ここから……、あの丘を越えたら土も変わるんだよ。そこからは大丈夫だと思うから、そこまで頼むわ」

「はーい」


 防具を身に付けた俺の体重は、ゆうに300kgを越える。押す力は、かなりのものだ。少なくとも人、4人分は上回る。

 流石に馬と比べると、体重だけで見ても半分もないかもしれないが、しかし荷馬車を進める力が1馬力から1.5馬力になったと考えれば、かなりのパワーアップだ。それが2人なら、2馬力になる。

 ぬかるんだ道もなんのその。


 俺達はまた、雨が降りしきる道を進んだ。

 次の町、オキロー町に向かって。


 テトン町を出発したのは、昼を少し過ぎた頃。朝早くから知り合った人々に別れを告げて回っていたのだが、それが終わった後のことだった。


 行商人は俺達が借りるアパートの場所ををどこかで聞いてきたらしく、部屋に戻ろうとアパートの階段を上っていた辺りで声をかけられ、もう出発するぞと伝えてきた。

 部屋に戻ってリュックを持つと、すぐに出発。

 なんだか、1ヶ月過ごした町を出るにしては、慌しい出発だった。


 ただ、アパートから町の出口まで行く際に、よく行くパン屋の店主とバッタリ会い、今から発ちますと言うと、見送りに来てくれたのは嬉しかった。

 向こうが泣くので、危うくこっちも泣きそうになった。

 案外、友情のようなものが芽生えていたのかもしれない。また来ることがあるのかどうか分からないが、その時までには美味いパンを焼けるようになっていて欲しい。選別と貰ったパンは、やっぱり不味かった。昨日売れなかった残り物だし。


 そうして、テトン町を出てから、大体5時間ほど。

 俺達は雨でぬかるんだ道を突き進んでいる。


「おお、もう乗っても良いぞ、ここまで来れば普通に進む。洞窟も近いしな。ここいらの休憩所なんだが、広いから、馬車ごと入れるんだ」

 ただ、そろそろ着くらしい。


「うぇーい」俺はそう応え、装備を脱ぎ、アンネと共に荷台に座った。

「どうぞ」すると、アンネがタオルをくれたので、俺は顔を拭いた。

「ありがとう」と、アンネに返すと、アンネも顔を拭く。


 荷台には、昨日、市で買い物をした後、アンネが作ってくれた雨避けが設置してある。

 木の棒2本ずつをクロスさせ結んだ、バツ2つを足として使い、その上に油を塗って水を弾くようにした皮を張った、屋根のようなもの。

 流石に、足や体は吹きこんで来る雨に当たるが、タオルで拭いた顔が再び濡れることはない。


 顔が濡れないだけで、随分サッパリする。


「良いねこれ」

「雨季の移動では必需品です。知らないとは、やはり異世界とは異なところのようですね。道具の発展が、まだまだ未熟なのでしょうか」

 ……地球の皆さんごめんなさい、僕のせいで地球が原始人に遅れてると言われました。


「ふっ」

 まあ、アンネが勝ち誇り嬉しそうに笑うので、そのままの認識にしておこう。

 いつか度肝を抜く時が楽しみだ。屈服させてやろう。


 そんなことを思っていると、急に暗くなった。

 洞窟の中に入ったのだ。


「到着。ふうー、疲れた」行商人の声が洞窟に響いた。「適当に休んでて良いぞ。泥落としはこっちでやっとくから。ここは入口閉じれば魔物も来ないからな」


 すると、行商人は馬車を止め馬を離した後、入口へ向かった。

 そして周辺に置いてあった板を、どんどん入口に立て掛けていく。

 そうやって入口を塞ぐらしい。なるほど、と感心した。


 行商人は、最後にそれらを紐で結び、鳴子のようなものを括りつけた。

 揺れれば、鳴子が音を立てる。


 板と板の間に、隙間は結構空いているが、入ろうと思うなら、板をどかすか折るかしなければならない。そのため音で気づける、というわけだ。

 夜の間の見張りがいらないというのも納得である。


「考えるなー」

 俺は素直に、再度感心した。

「当たり前のことですよ」

 ただ、またしても地球の文明が下に見られた。すまない。


 行商人がバリゲードを作り終えると、俺達は各々食事を始める。

 この洞窟では火を使ってはいけないと言われているらしく、食事は味気ないものだったが、買っておいたハムはそのままで食べれたし、アンネがサラダを作ってくれた。

 何かの実を、落ちていた石で砕いて、皮を剥いた生野菜にかけただけだが、そのまま食べるよりもかなり美味しかった。

 褒めたら、「ふんっ、別にこんなもの誰でもできる」と言っていたが、顔はにやけていたし、また作って欲しいと頼むと、快く快諾してくれた。


 食事も終えれば、就寝の時間。


「火が使えないとなると、結構寒いね。下は地面だし、体温吸い取られそう」

「布を何重にも敷けば問題ないと思う……ます。ちょっと失礼」

 アンネはそう言って、リュックを開ける。


 リュックは一応、ずっと雨避けの下に置いていたし、革製なので中身は濡れていない、と思う。……なんだか心配になってきたが、アンネが取り出した布団になる布は、濡れていなかった。


 俺はそれを敷いて、寝床を作る。

 アンネもアンネで、俺に渡した以外の布を敷いて、寝床を作っていく。


 俺は横になり、板の隙間から微かに差し込む光を頼りに、そんなアンネを見て言う。「おやすみ」

「おやすみなさい。……エト……様」


 エト様か。……なんかむず痒い。


 いや、まあ……やぶさかではないが……。いやでもなんか恥ずかしい。


 アンネもそうなのか、再び俺の方は見ずに、布団を敷き終え横になった。

 だが、その時。アンネが布団に横になった瞬間、ビシャッというか、じゅわっというか、そんな水音が鳴った。濡れたものの上に座った時のような。


 俺は手を伸ばしアンネの布団を触る。

「な、なんですっ?」

 それは、水に濡れていた。


「……べ、別にいいだろう。革のリュックだとしても、外側は水が染み込む。奴隷がそちらを使うのは当然だ」

「半分やるから、使え」

「断る。ドラゴニュートはこれくらいじゃ風邪は引かんが、ヒューマンは脆い。いらん」

 洞窟の奥で寝ている行商人達を起こさないように、俺達は小声でそんな問答をした。


 どう言っても、アンネは断る。

 アンネは頑固だ。

 多分、筋金入りの。


 いい加減寝たいのに、さっさと説得されろ! 俺はそんなことを思ったので、思わず言った。


「じゃあ、こっち入れ。それなら、2人共使えるだろ?」

「え?」

 言ってから後悔したが、今更引っ込められない。


「ま、まさか……、人が、そ、傍にいるのに……、いるから?」

「違う。人の性癖を歪めるな。何もしない。どっちも風邪引かないため」

「……、……、わ、分かった。……か、体に触れたら殺すからな」

「寝相が悪いくらいは許してくれ」


 俺達は1つの布団で眠ることになった。


 ……。


 ……。


 ……緊張する。


 ……めちゃくちゃ良い匂いがする。初日のあの髪の毛の臭さはどこへ行ったんだ。


 ……。


 ……。やばい、ちょっと反応してきた。

 昨日は結局中断させられたし、欲求不満の状態なんだ。どんどん、大きくなっていく。

 俺のは、課金の結果、とてつもないサイズにまでなってしまった。まず間違いなく、布団は大きく持ち上がる。すなわち……。


 俺はそんなことにならないように、そして良い匂いから少しでも遠ざかるように、アンネの反対を向いた。


「――! や、やっぱり、臭い……のか……。貴様、おい貴様、そんなに私は臭いのか? おい」

 だが、なぜかアンネは追いかけてきた。

 眠っている行商人達を起こさないようにするため、言葉は俺の耳元で発せられる。それがくすぐったくて、そして、アンネは胸が大きいから、背中にぽにょぽにょと……。


 完全に、アンネの方には向けなくなった。


「違う違う。凄く良い匂い、良い匂いだから」

「嘘をつけ、じゃあなぜそちらを向いた。本当は臭いのだろう?」

「良い匂いだって。むしろ良い匂いすぎると言うか……」


「意味が分からんことを言うな。だったらなぜ頑なにこちらを向かない! 良い匂いをと言うのなら、こちらを見て言え!」

「見てる見てる、良い匂い良い匂い」

 俺は顔だけをそちらに向けて言う。


「……なぜ体を向けない。向きたくないのか? 臭いのか?」

「いやそうじゃなくて、向きたくないというか、もうむけているからというか、臭いのが出そうというか」

「何の話だ? こちらを向け!」

 アンネは俺の肩に手をかけ、無理矢理俺を仰向けに、いや、自らの方に向かせようとする。

 そんなことをすれば、言わずもがなだ。


「待て待て待て。これはあれだ、男の、ほら男の」

「男の?」

「そう男の、持病みたいな、あるじゃん」

「全然分からん」


「男のだよ、ほら、男の」

「全然分からん」

「察しが悪いなこの野郎! モロに言ってやろうか!」

「ああ、遠まわしにせず言えることなら言ってくれ。悪いが全然何を言いたいのか分からんぞ」

「ええー」


「言え。何がどうなっているんだ!」

「ナニがどうにかなってるんだよ! 変態! やめて!」

「はあ?」

お読み頂きありがとうございます。

感想ありがとうございます。ちんちんはでかいです。


これからも頑張ります。

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