4月1週 金曜日
ダ2
魔25 中2
剣25
筋肉を過剰に使用すると、筋肉痛という現象をもたらす。
メカニズムは解明されていないと聞くが、数百数千年前から、その事実は何一つ変わらない。
それが例え、異世界であっても。
宿屋の部屋の中。
ベットの上。
「ぐうう……、ぐうう……」
これは、いびきなどではない。
俺は眠ってなどいない。
眠ってなんか、いません。
意識はむしろ、覚醒している。
俺は、立ち上がろうとしていた。
ベットの上で、うつ伏せの状態から、腕に力をいれ、上半身を起こす。
足を折り曲げるようにして、膝をつく。
そこから、半端に曲がった腕を伸ばしきり、顔を上げる。
膝を、ベットについて、シーツにシワをつけていた膝を、胴体の方へ寄せることで、足の裏をベットにつけ、体重を支える。
「ぐうう、おおおお……」
いつもであれば、一つ一つを意識することもなく行えっている行動。
だが、今の俺にとっては、一つ一つを意識して気合を入れなければ、到底行えない無理難題。
なぜなら、俺の腕は、力を入れれば、プルプルと震える。
胴体は、体のどこかしらを動かす度に、激しい痛みの信号を、脳へ毎秒送りつけてくる。
足なんて、まるでエンジンが焼ききれたかのように、高温だ。
そう、これは、まさに。
全! 身! 筋! 肉! 痛!
「ぐうう、ああ、もうダメだああ……」
そうして俺は、転げ落ちるようにベットに仰向けに寝転んだ。
「まさか……、筋肉痛で、ここまで動けなくなるとは……」
異世界生活6日目。
どうやら、今日はベットから起き上がれそうにない。
昨日、筋肉痛なのに、頑張ってダンジョンに潜った結果だろう。
「肉離れとかじゃないよね、マジで痛い……」
心配だ……。
筋肉痛自体が久しぶりなので、こんな痛みだったか覚えていない。なんだか凄く痛い気がする。
肉離れだったら、数週間は安静にしてなければいけない。
稼げなければ、衣食住の、何も賄えない。俺は間違いなく死ぬだろう。死因が肉離れ。か弱い、儚すぎる。
天井を向いている顔を、ベットの横に置かれたテーブルに向ける。
その上には、俺の全財産が置かれていた。
銅色の硬貨が、なんと6枚。
少ない……。
とは言っても、これでも、昨日から倹約生活をしていたのだ。
いやしかし、節約してよかった。
食事をまともに取らなかったおかげで、今日も宿に泊まることができたのだから。
泣き喚くお腹の虫と、地球へ帰りたがる心の泣き声。
俺は、眠ればきっとどちらも叶っているはずさ、と、そんなことを思って、夢の世界に旅立った。
お読み頂きありがとうございます。
何でもない日はこのように、とても短いです。
頑張ります。