表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/144

6月3週 土曜日 その1

村34 町38

ダ33 討伐1 フ8

人1 犯1

魔100 中12 上1

剣100 剣中12 剣上1

回復39

治療41

採取77

草16 花5 実33

料理7

石工3

木工11

漁1

歌3

体55

女7

 ダンジョンで稼ぐには体力が必要だ。

 心肺機能、そして筋持久力。


 どちらも鍛えれば伸びるものであるが、しかし、それはダンジョンに入ったとしても、満足できる分まで伸びることはない。

 なぜなら、どちらも疲れて伸びるものだからだ。


 ダンジョンでは疲れないことが理想である。

 疲れればその分、死に近づく。

 それゆえに、ダンジョンでは疲れたなら帰る選択をとらなければならない。心肺機能や筋持久力、ひいては体力が伸びるわけがない。


 だから、それらを鍛えるのなら、別の場所で鍛える必要がある。

 俺は、分かりやすく言えば、朝早くに町の中を走ることを、毎日の日課にしていた。


「はあ、はあ、はあ」

 30分ほど走ったと思う。

 もちろん時間は計れないので、本当に思うだけだが。まあ、大体そんなものだろう、走った距離で言えば、10kmくらいになるはずだ。


 毎日これだけ走れば体力も徐々についてくる。

 距離をここまで伸ばし連日行い始めたのは、ここ最近の話だが、最近稼ぎが上がったのは、きっとこれのおかげだ。


 俺は荒い息を整えるように、歩いてクールダウンを行う。ながらではあるが、ストレッチも一緒に。

 アパートへの道すがら、井戸水を一杯貰い、再び歩く。


「脈拍は……、大体80? よく分からん。でもこんなもんか」

 そして俺はアパートに戻ってきた。


 扉を開けると、部屋の中からドタバタと慌てて走るような音がした。

 泥棒か? ベットの下を見られるとマズイ、いやそもそもアンネが大丈夫か? そう思って俺は慌てて部屋の中に入った。


 しかし、部屋の中が荒らされた様子はなかった。朝出て行った際と変わらない。

 アンネも間仕切りの向こうにいるようで、何がドタバタ鳴っていたのか分からない。いや、この状況なら、完全にドタバタ音を鳴らしていたのはアンネだろうが。


「え、どしたん」

 俺は半ば呆れたような形で聞いた。


「別に……。ど、どこへ行っていたのですか?」

 アンネは間仕切りの向こうから、そう聞いてきた。

「もしかして、起きて俺がいなかったから、なんか不安になってたとか?」

「――っ」


 間仕切り越しでも感情が分かる。

 アンネはやっぱりポンコツらしい。


「言ってなかったかもしれないけど、朝は走りに行ってるんだ。早起きして。だからいなくても心配しなくて良いよ、ちゃんと帰ってくるし」

「心配などしていない! 帰ってこなくても私は一向に構わん! しかし……走っているだと? 何のために」

「体力つけないといけないからね」

「……ふんっ、冒険者は体が資本だぞ? その日稼ぐために使う分の力を、走って消費してどうする。

 アンネは言う。


「異世界の人って皆そう言うよね。俺は絶対走った方が良いと思うんだけどなあ」

「……異世界?」

「異世界」

「……?」


「ま、今日は装備買ったら、そのままダンジョン入るから。ほら準備準備!」

 そして俺達は出かけた。


 走ったことでかいた汗を、真っ裸になって拭いている最中に、アンネが間仕切りから出てきたため、そこでひと悶着あったが、2人暮らし2日目としてはおおむね順調である。

「ううう、見てしまった……男性のを……」

 あっちがどう思っているのかは知らないが。戦闘体勢ではなかったんだから、気にするなと言いたい。言わないが。


 しばらく歩くと、武器屋についた。

 テトン町にはいくつか武器屋はあるが、ここは俺が片手剣を購入した店であり、日々のメンテナンスをお願いする店でもある。

 馴染み、と言えるほどでは、まだないかもしれないが、他の店よりは入りやすいし、相談もしやすい。


「こんちにはー」

「失礼する」

 主人と奴隷の挨拶が逆じゃないか? と少し思った。


「おう。研ぎは――、武器買うのか? まいど」

 店主は何かを言いかけ、アンネに気づくと、武器を買いに来たことに気づいた。

 すると、自由に探してくれと言わんばかりに、こちらを見なくなった。別の客の武器のメンテナンスを行っているから、買い物客に関わる暇はないのだろう。仕方ないので2人で武器を選ぶ。


「アンネは……槍だっけ?」

「ああ。私は槍一筋だ」

「じゃあ、どれでもどうぞ」

「え? ど、どれでも? な、なら、この鋼鉄の槍を……」


 鋼鉄の槍鋼鉄の槍、これか。

『鋼鉄の槍

  ランク:1

  ATK:53』


「……君は一体何階に入る予定だい?」

「だ、貴様がどれでもと!」

「15階辺りので選べ! ATK30くらいのね」

「ATK?」

「ATK」

「……?」


「あ、でも階を上げてく予定だからもうちょっと強くても良いのか」

「じゃ、じゃあ鋼鉄の――、……、な、なんだ!」

「……。えーっと、このどれかにして」


『フェローイの槍

  ランク:1

  ATK:35』


『ホワイトウルフの槍

  ランク:1

  ATK:34』


『硬鉄の槍

  ランク:3

  ATK:36』


「硬鉄の槍しか知らんな。15階で使う武器だろう? 他のも同じくらいか? いや、上の階を目指すと言っているのだから、もっと強いか」

「硬鉄の槍が一番強いね、こん中じゃ。ランク3だけのことはある」

「ランク?」

「ランク」

「……?」


 アンネに硬鉄の槍を渡して、少し振ってみるように言った。

 店は、武器を手に取った人が振り回しても良いように、かなり広い作りになっているため、アンネがポンコツでも心配はいらない。まあ、槍に関してはポンコツさはでないようだが。


 アンネは槍を装備すると、突き、払い、その2つの動作を数度行った。


 それはとても美しい動きで、自分の体の隅から隅までをコントロールしていることが分かるような所作だった。

 槍で戦う者として、実力の高い者の動きなのかどうかは分からないが、遥か先が見えている者の動きではあった。俺には到底真似できない。


「……」

「……なに? 黙って」

「なんでもない。これを買うのか?」

「気に入ったやつ買ったら? アンネの武器なんだし」

「そうか。ならこれで良い。気に入った」


 お値段は銀貨80枚。確か同じ種類の硬鉄の盾はもっと安かったよなあ、これが需要の差というやつか。高い……。


 次は防具売り場。


「きさ……エト、さ……、貴様は」防具売り場に入って少し経った頃、アンネが俺に話しかけてくる。「ジョブはなんだ?」

「ジョブ? 異世界民」

「異世界民?」

「異世界民」

「……?」


「で、それが?」

「え、ああ、普通、奴隷を新しく買った場合は、主人の装備を貰い、主人が新しい防具を着ける場合が多い。武器は剣と槍で違うからできないが、防具はできるのではと思っただけだ。しない方が私に都合は良いが、言わないと後々面倒になるかと思ってな。しないのか?」

「あー、なるほど、そういう」

 以外と考えてくれてるんだな。


「その異世界民なるジョブが装備できる防具を、私は知らん。私は槍士だから、軽い防具も重い防具も装備できん、何を装備してるんだ?」

 アンネが聞いて来るので、俺は一旦アンネを店の外に連れだし、アイテムボックスから防具一式を出す。

 ちなみに店から出たのは、店の中でアイテムボックスを使うのはマナー違反であるため。アイテムボックスを使えば泥棒は簡単だから、致し方ない。


「足の装備以外は装備できるな。しかし、重防具も装備できるのか、異世界民……、戦士ジョブではないのか?」

「違うんだよねえ。スキルも違うし、めちゃくちゃ長いのしかないし」

「どんなスキルだ?」


 アンネは聞いてきた。

 なので俺は、異世界民ジョブのスキル、第一段階の発動を試みる。

 基本的に大体第一段階のスキルと言えば、詠唱が10の音。第二段階で15音必要となる。しかし異世界民は……。

「○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○×○×○○×○×○○××××××××××、アポート」

 長いわ!


「失敗した。後半はほとんどミスかな? でもこれが一番簡単なやつ、詠唱が難しすぎてまだ成功したことないし、効果も知らない。なんだろ、知ってる?」

「聞いたことがないな。上級ジョブはあまり多く知らん。まあいい、ならこの装備は私がする。15階で使うには、少し弱い装備のようだからな」

 そう言って、アンネは道端に置いていた防具を手に取り、土を払いながら身につけ始めた。

 俺とアンネは身長も体格も随分違うが、装備品にそんなものは関係ない。装備者に適した大きさとなる。


 体のラインに沿って、俺がつけていた防具はアンネにフィットした。

「ふむ、悪くない」アンネは満足した様子で言う。


 ……だが、俺には少し残念だった。

 体のラインにフィットすると言っても、胸は少し潰してしまうらしい。確かに胸部分の膨らみは他の女冒険者の胸防具に比べて大きいように思うが、鎧の範疇に収まる膨らみになってしまった。


「……」

 アンネは黙って手で胸を隠す。

「苦しくないのかな、ってちょっと思っただけだから、他意はない」

「……」

 蔑みの目で主人を見るんじゃない。


「じゃあ、俺の防具と、アンネの足防具か」

 俺は話をそらすように、店の中へと入った。


 アンネが買う防具を、DEF7の中から選ぶと、今度は俺の防具。アンネに勧められるがまま、重量系の防具を購入していった。

 重い装備はその他の装備に比べ高いから嫌なのだが、ダンジョンの先輩の言葉を無視するほど、俺は愚かではない。例えその子がポンコツだとしても。


「さて、ダンジョンに行きますか。最初は15階。行けそうなら、16階17階ってどんどん進んでく感じで」

「ああ。問題ない」


「じゃあ、よろしく」俺はそう言って右手を差し出す。

「……」アンネは一瞬固まるも、それがパーティーを組む所作だと分かると、その手を握った。「ああ」

 俺達はパーティーになった。

 これから、ダンジョンをゴリゴリ進んでやる。

お読み頂きありがとうございます。

ブックマーク、評価、そして感想も頂き、誠にありがとうございます。

これからも頑張る励みに致します。


今日中におそらくもう1話投稿致します。頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ