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Christmas

作者: どこぞの街角

 十二月二十五日。

 何を隠そう、クリスマスである。

 それぞれがどんな思いを抱え、どんな状況と隣り合わせでいようと、世間は、人々は、クリスマスという特別な時を行く。

 

 お互いに好意を伝えあった人と温かい時間を過ごす人もいれば、そんな人々を言葉で呪う人もいるし、そんな悪意に疲れた人も、同性の友達と馬鹿騒ぎする人もいる。

もちろん、一人で聖夜に思いを馳せる人もいるだろうし、みんなのそんな特別な幸福な支えるために仕事を頑張っている人だってたくさんいるのだ。

 

 それぞれが、それぞれの日。

 そんなことを言うと、何だか、ただの日常みたいだ。

 少し街と人が煌びやかになる、そんな日常。


 僕の頭上に雪の精たちは舞い降りてこないし、サンタだって、ソリを走らせて駆けつけては来ない。買ったチキンは温度を保つことはないし、寒風は僕を避けては通らない。


 そりゃそうだ。

 でも、特別な日なんだから、せめて、何か。

 

 道行く人たちの楽しそうな声に、幸せの比較をしてしまうときもある。SNSで流れる遠い友人たちの笑顔に、何となく黒に染まり行く空を見上げたくなる瞬間もある。


 でも、ひたすら僕はこの日が好きだった。

 

 僕らは決して敬虔なクリスチャンではない。雪も降らなければ、何か偉業が為されたわけでもない。有名人が揃いも揃って街を練り歩いたわけでもなく、アニメのあのキャラクターが画面から飛び出したわけでも、もちろんない。

 

 だけど、人々はこの日を特別な日だと思って、定義づけて、笑顔を咲かせるのだ。

 だけど、今までを超える幸せを願って、喜びを求めて、笑顔を歌うのだ。


 それはまるで、祈りに似ている。

 敬虔な、どこまでも真っ直ぐな、祈りに。

 いつもは心の底に眠っていた幸せという願望が、この日は胎動を始める。

 みんな、嫉妬に塗れながらも、本気で幸せを掴みたがる。


 そんな愚直な、だけど、美しいような。

 

 だから、こんなにもクリスマスは美しい。

 だから、こんなにもクリスマスは眩しい。


 あの人も、その人も、街だって、空だって、みんなが、みんな。

 

 どうか、この日が思い出としてその輝きを失わないように。

 この日がどうか、あのときは良かったと笑い合えるように。

 この日を振り返ったときに幸せの味が巡るように、どうか。


 過ぎ行くこの日を背に、僕らは笑う。


いつもとテイストが違う書き方になってしまいました。

それもこれも、今日が12月25日なのだからでしょう。

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