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魔法少女はおたずね者  作者: 長門シゲハル
第三章 錯綜する想いと交錯する運命
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第九十一話 ユニオール暦八百七十三年八月十日 中央アポロニアの森 天気晴れ

「そっちではない。この方向にまっすぐじゃ」


 先を行く騎士に方向を指示するクラウディア。なぜ分かるのだろう?とローベルトは疑問に思うが、それを口にするより前に草木を切り開き道を造って周囲を警戒しなければならない。ここはモンスターの気配も濃い森の中なのだ。


「クラウディア様、またドラゴンが上空に。こちらの木陰にお隠れください」

「うむ」


 空を見上げればドラゴンが飛びまくっている。クラウディアの側で警戒するマルガレータも気が気ではない。


「たしかにこれでは空からは近づけませんね」

「ここのドラゴンは気が荒いからの」と言ってクラウディアが笑う。


 険しい山脈を飛行魔法で越えて森に入って二日。道なき道を行きながらエルフの里へ向かっている。向かっているとは言っても方向が分かるのはクラウディアだけなので、他の者たちはここがどこなのか、あとどれくらいで着くのかも分からない。


「さぁ進むのじゃ。もうちょっとで着くぞ」


 道を切り開く騎士たちをクラウディアが叱咤しながら進んでいく。途中で昼食をとり、午後も同じように進んでいくと明らかに空気が変わってきたことにマルガレータが気付いた。


「クラウディア様」

「うむ、マルガレータも気付いたか。もはやここはエルフの棲む地じゃ」


 周りを見渡しても今までと同じように草木の深い森の中なのだが、まとわりつく空気に魔力を感じるし、何者かに見られている気配も感じる。マルガレータだけでなく他の四名の魔法使いも気付いていた。


「ローベルトよ、道はもう良い」


 そう言われ、ローベルトと四人の騎士が手を止める。クラウディアがいったん息を吸ってから森に向かって呼びかける。


「エルフの女王エーリカよ。我はユニオール王国、女王クラウディアじゃ。用あってやってきた。道を開け」


 その声を受けてか、森の木々がザワザワと動き出した。ローベルトたちがクラウディアを囲んで周囲を警戒する。


「案ずるな。声は届いたようじゃ」


 クラウディアがそう言うと、前方の森が二つに割れて道ができた。


「おぉ!」

「道が!」


 騎士と魔法使いがクラウディアを守るようにその道を進んでいく。しばらく歩くとエルフの里と思われる場所の入り口に到着した。


「ここが……」


 マルガレータが周囲を見渡して思わず声を上げる。木でできた建物が立ち並んでいて、どの建物も草花に覆われている。道を示すように色とりどりの花が咲き並んでいる。


「エルフの姿は見えませんね」

「そうじゃな。行くぞ」


 その道をクラウディアが進んでいく。慌ててローベルトたちも付いていく。


 しばらく進んでいくとひときわ大きな建物が見えてきた。木製ではあるが城であることは間違いない。二人のエルフが門を守るように立っている。クラウディアたちが門の前まで行くとその一人が口を開いた。


「ユニオール王国のクラウディア女王ですね。中で我らが女王エーリカがお待ちです」

「うむ」


 クラウディアは頷くと振り返ってローベルトたちに言う。


「そなたたちはここで待て」

「しかし、クラウディア様――」

「案ずるな」


 とはクラウディアが言ってもローベルトとマルガレータは気が気ではない表情だ。


「万一の際はそなたらの考えで動け」


 そう言うとクラウディアは門から中に入っていった。




 ユニオール城の広い謁見の間とは比較にならないが、どうやらここが謁見するための部屋のようだ。一段高くなった奥に木の椅子が置かれており、そこに一人の女性エルフが座っている。


「クラウディア・エルマ・ユニオールか」


 椅子に座ったエルフが言う。彼女がエルフの女王エーリカか。クラウディアはその前に立ち、彼女を見る。透き通るように白い肌に長い耳。長く美しい金髪がよく似合っている。


「そうじゃ。初めてお目に掛かる」


 クラウディアがそう言ってエーリカを見つめると、エーリカも興味無さそうにクラウディアを見返す。


「ここは人間が来て良い場所ではない。なぜ立ち入った」

「用があるからじゃ」

「用と?」

「そうじゃ。そなたらエルフは人間に関わらぬはず。そうじゃな?」

「……」

「にも関わらず、なぜアンハレルトナークの女に古代魔法を教えたのじゃ?」

「……」

「クックッ、答えられぬか」


 クラウディアはちょっと笑うとさらに話し続ける。


「そして今度はレティシア・ローゼンブラードに古代魔法を教えるつもりか。それで人間に関わらぬなどよくも言えたものじゃな」

「……答えは分かっておるのだろう? なぜ問う?」エーリカが口を開いた。


「確認じゃよ」クラウディアはニッと笑う。「そなたらエルフは、あの神気取りのトカゲをえらく信奉しているようじゃが、それは間違いじゃ」

「……」

「そなたは分かるであろう? 我が何を言いたいか。人間のことは人間が決めるべきじゃ。そなたらやドラゴンが関わってくるのは迷惑じゃ」


 しばしの沈黙のあとエーリカが口を開く。


「……偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)はこの世界のバランスを取っている」

「クックックッ。世界のためなら人間などどうでも良いか?」

「……」

「まぁ良い。そなたらがそれでもなおドラゴンに従うというのならここで滅んでもらうだけじゃ」


 クラウディアがそう言って口の端を上げた時、城の入り口の方からなにやら騒ぐような音が聞こえた。すると間もなくクラウディアが連れてきた魔法使いの一人が飛び込んできた。


「クラウディア様! イリスレーア姫とレティシア・ローゼンブラードが門前に現れました!」

「なに?」

「そ、それも青嵐のドラゴンが一緒です!」

クラウディアがエルフの里に着きました。


続きは明後日です。

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