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魔法少女はおたずね者  作者: 長門シゲハル
第二章 戦争と偉大な五体のドラゴン
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第七十七話 四十五日目 フェヴローニヤ 天気曇り

 ベルトランの後ろを歩きながら、王とどうやって話すべきか考える。戦場では青嵐のドラゴンの意を示すために、ありもしない威厳をかき集めて精一杯堂々と話をしたつもりだ。だがあの喋り方は本来の私の話し方ではないし疲れるんだよね。


「レティシア様、ここが我らが城です」


 門をくぐり、城の中に入っていく。ベルトランの後ろをずずっと広い廊下を進んでいくと広間に着いた。奥の方に王らしき人が見える。歳は六十歳くらいか。白いあごひげを蓄え、頭には王の証であろう冠をかぶっている。王の周りには正装した騎士が控えている。王の前まで進むと、ベルトランが私を王に紹介する。


「国王陛下、こちらが青嵐のドラゴンの言葉を我らにお伝えくださったレティシア・ローゼンブラード様です」


 私が跪いて挨拶した方が良いかな?と考えてる間に、国王陛下の方が近付いてきてなんと私の前に跪いた。


「レティシア・ローゼンブラード殿、フェーディーンをお預かりするイングヴァル・フェーディーン七世です。お見知りおきを」と言うとフェーディーン王は私の手を取って頭に押し当てた。


 ど、どうすれば……。


 いつまでも固まってるわけにはいかないので、どうにでもなれと開き直った。


「私がレティシア・ローゼンブラードです。フェーディーン王、青嵐のドラゴンの言葉が届いたようでなによりです」

「はい。長きにわたる戦いで我らはこの地に伝わる言葉を忘れておりました。ここは青嵐のドラゴンの土地。我らはそれを二度と忘れないよう暮らしていくつもりです」

「青嵐のドラゴンも喜ぶでしょう」


 それにしてもこの体勢は厳しい。偉そう過ぎるでしょ。


「フェーディーン王、頭を上げてください。私はただ青嵐のドラゴンの言葉を伝えるだけの者です。私自身は何者でもありません」

「ご謙遜を。ラスムスの魔女の名は聞いておりましたが、偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)とまで繋がりがあるとは存じませんでした」

「繋がりというほどのことではありませんよ」


 たしかに焔のドラゴンと旅をし、白銀のドラゴンと話をしたし、今これから青嵐のドラゴンと行こうとしている。付き合いは多いな。


「そんなレティシア殿に一つお伝えしたいことがあるのです」

「なんでしょう?」

「我らはこれまで多くの戦いをしてきた経験から、とくに大切なのは情報だと考えています」

「そうですね」

「さまざまな情報を集めている中で、一つ偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)の情報が入ってきたのです」

偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)の、ですか?」

「はい。レティシア殿は輝のドラゴンをご存じですか?」

「……」


 知っているというか、先日白銀のドラゴンから聞いたばかりだ。行方不明と聞いた。


「やはりご存じでしたか。輝のドラゴンはそろそろ成竜になるはず。しかし姿を消してしまった」

「……そうですね」

「攫った者に心当たりは?」

「心当たりは……ありすぎて困っています」私は肩をすくめた。

「ハッハッハッ! たしかにこの時勢です。偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)の力を欲する者は多すぎますな」


 フェーディーン王は豪快に笑って、さらに言葉を続ける。


「これは青嵐のドラゴンの言葉を我らに届けてくださったお礼です。輝のドラゴンを攫ったのはハーフルトのラ・ヴァッレ王だという確度の高い情報があります」

「……ハーフルトですか」


 クリストフェルのところだ。焔のドラゴンを探していたし、輝のドラゴンを欲してもおかしくはない。ただ鵜呑みにはできない。


偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)は幼生の時には普段とは別の場所で成長します。輝のドラゴンがどこで幼生時代を過ごすのかは我らには分かりません。ですが、そのどこからかシルヴェンノイネンに向かう海上で捕らえられたというのです」

「海上ですか」

「はい。どのような手段で輝のドラゴンを捕らえたのか、幼生だったのか成竜だったのかは分かりません。ただそれは五月くらいのことだったそうです」

「なるほど」


 五月ということは私がこの世界に来る前の話だ。ハーフルト沖であれば南方艦隊の司令であるクリストフェルは何か知っているかもしれないけど、バーンハルドで彼は南方艦隊司令に戻ってきたと言っていた。とすると五月には別の者が司令だったのかもしれない。


「情報ありがとうございます。他にはあまり話されないようにお願いします」

「もちろんです。また何かありましたらお知らせいたしますので、お気軽に立ち寄りください」




 私は大量にお礼の品を持たされそうになるのを断り、西門広場に戻ってきた。エサイアスはさぞ怒っているだろうと思ったら、壁にもたれかかってうたた寝していた。寝ている姿は完全に少年だ。


「エサイアス、お待たせしてしまってごめんなさい」


 私が肩を揺するとエサイアスは目を覚ました。


「うむ。問題ない……。では行くか」まだちょっと寝ぼけているようだ。目が開き切ってない。

「そうですね。ここでドラゴンになられては困るので、しばらくは私の飛行魔法に乗ってくださいね」

「……ああ、そうだな。任せる」


 私は飛行魔法を展開し、エサイアスをしっかり私に掴まらせて飛び上がった。周りにいた人々から驚きの声が上がっているが気にしない。あまり人に見せるようなものではないんだけど、わざわざ遠くに離れてから飛ぶのは時間の無駄だ。


「さあ行きますよ。とりあえず北東に飛びますね」フェヴローニヤの町を眼下に見ながらエサイアスに言う。

「うむ」


 飛び始めてしばらくすると私に掴まっていたエサイアスの手が緩んだ。どうやらまた眠ってしまったらしい。落ちても大丈夫だろうけど、念のためしっかりと引き寄せてさらに飛び続ける。


 さて、早急に考えないといけないことができてしまった。輝のドラゴンのことである。白銀のドラゴンから聞いた話ではエサイアスは輝のドラゴンを探しているはずだ。とはいっても人間と交流を持たないエサイアスは情報を集めることは難しい。おそらく私がフェーディーン王に聞いた話も知らないと思う。


 ならば教えてあげないといけないとは思うが、今教えるのはどうだろう?


 ハーフルトにいるらしい、と聞けばエサイアスは何も考えずに突撃するに違いない。そして首都ラ・ヴァッレを灰にしかねない。輝のドラゴンのことは心配ではあるけど、多くの人間が犠牲になるのは避けたい。となれば、ハーフルトに本当にいるのかどうかの裏を取らないとならないが簡単ではない。


 それに私はまずアーシェを助けたいのだ。


 アーシェを助ける以外の話は、ヴィスロウジロヴァー山までアーシェを連れて行ってからにしたいのだ。でもこれは私の気持ちの問題なので正しい選択か分からない。もしかすると輝のドラゴンの方が危機的な状況なのかもしれない。


 ああ、モヤモヤする。やっぱりちゃんと話をしよう。


 まだほとんど飛んでないんだけどいったん降りることにした。


「エサイアス、エサイアス! 起きてください」

「……ん? なんだもう山か?」エサイアスが目をこすりながら言う。

「いえ、違います。まだ全然飛んでませんよ。ちょっと話があるんです」

「話?」

「輝のドラゴンのことです」


 私がそう言うとエサイアスはパチッと目を開いた。


「なんだ?」

「先ほどフェーディーン王から聞いたのです。ある国が輝のドラゴンを攫ったのではないかと」

「どこだ?」

「ハーフルト連合王国です。そこのラ・ヴァッレ王がという情報です」

「ハーフルトか。東の大国だな」

「はい。それで……その、どうしますか?」

「どうすると?」

「はい。……ハーフルトを先にしますか?」


 エサイアスはジッと私を見ると、笑い出した。


「クックックッ、そんなに心配そうな顔をするな。焔の件を片付けてからだ」

「そうですか」正直ちょっとホッとした。

「そんなに心配なら言わねば良かったではないか。あるいは焔のことが済んでから言えば良かったのだ」

「なんかそういうのは嫌だったので」

「フン、正直なのだな」エサイアスはそう言うと東の方を見た。「さあ行くぞ」

輝のドラゴンはハーフルトにいるんでしょうか?


続きは明日です。

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