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魔法少女はおたずね者  作者: 長門シゲハル
第一章 アンシェリークを追う者たち
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第三十話 十六日目 ペイロの町 天気曇り

 ペイロの町はこれまで立ち寄った港町の中でももっとも小さい規模だ。桟橋は五本しかなく、群がるように中小の船が係留されている。

 訳ありの船も受け入れると聞いていたのでなんとなく町の雰囲気も荒くれた感じに見える。気のせいかもしれないけど。

 港から北に通りが伸びていてある程度の店はあるようだ。とりあえずは宿屋を探そうと北に向かって歩き始めた。


「不思議なメンバーですよね」


 私とイリス、フィクス、アーシェ、シルックの五人だ。大人に見えるのがフィクスしかいないし、何のパーティーか聞かれたら答えられない。


「奥さんに逃げられた父親と四人の子供たちってことで良いのではありませんか?」なんとシルックがそんなことを言い出したので私は思わず大笑いしてしまった。

「ひどいなあ。僕はまだ二十三歳だよ」フィクスが苦笑しながら言った。

「それは失礼しました。私は二百年ほど生きていますので、私の方が年上でした」

「余に至っては何年生きているのか分からぬ」


 そしてたぶん私もフィクスより年上だよ……。でもここは黙っておこう。


 通りの中ほどで見付けた宿屋に部屋を取った。二部屋ちょうど空いていた。


「ふう」


 部屋のベッドに腰を下ろすと思わず声が出た。この部屋は私とイリスだ。シルックは眠る時にはフェアリーに戻るからベッドはいらないそうで、アーシェとフィクスとともに隣の部屋だ。


「なかなか落ち着かないわね」イリスもベッドに座った。

「明日からは嫌でも落ち着くことになりそうですけど」


 リーゼクーム海峡はほとんど徐行状態で進むことになるらしい。トールヴァルドによれば抜けるのに五日はかかるとのことで、船員の皆さんは大変だと思うが私たちは退屈しそうだ。


「ところでイリス」私は二人になったらイリスに聞いてみたいと思っていたことを聞いてみることにした。「イリスの旅の目的はクラウディアだったんですか?」

「半分はそうね」

「半分、ですか?」

「ええ。クラウディアが留学していたダーヴィからいなくなったと聞いて、探す必要は感じていたわ」


 クラウディアはダービィの魔法学校に留学していたそうだ。でも一年ほど前から所在が分からなくなっていたらしい。


「彼女は古代魔法をダーヴィで学んだんでしょうか?」

「どうかしら? ダーヴィはそんなに古くからある国でもないわ。ユニオールは古い国だから何か伝わっていたのかもしれない。レティのいたラスムスには伝わってなかったの?」

「どうでしょう?」私はちょっと考え込む振りをしてレティシアの記憶を探ったけど関係ありそうなことは浮かばなかった。「私はラスムスの魔法学校を出ただけなので……。あまり真面目とは言えませんでしたし」


 そういう意味ではクリスティーナなら何か知っているかもしれない。


 それでもう半分の目的は、と聞こうとしたところで扉がノックされた。昼食に行く約束をしてたんだった。




 いかにも食事処な雰囲気のお店に入り五人で昼食だ。ちょうどお昼時でもありそれなりに混んでいるが上手いこと個室のようになっている部屋に案内された。出てきた料理の味は普通だ。

 店に入ってまで何も食べないのも気まずいということでシルックもスープを飲んでいる。


「シルックは普段なにも食べないでどうやって栄養を摂るんですか?」

「私たちフェアリーは栄養で肉体を維持しているわけではありません」

「どうしてるんですか?」

「空気中の魔力や清廉な水や空気、知識などでも満たされます」

「知識ですか? 本を読むとお腹が膨れるんですか?」

「はい。物理的に膨れるわけではありませんが。人間の書いた本は大好物です」


 シルックは読書家らしい。私の元の世界での趣味も読書だった。なんだかちょっと嬉しくなった。今度二人の時にもっと突っ込んで本の話をしてみよう。


「知識と言えば永遠に生きるドラゴンもたくさん蓄積してるんじゃないの?」イリスがアーシェに訊ねた。

「うむ。それは大地の役割だな」

「大地? 大地のドラゴンのこと?」

「そうだ。変わったやつでの。知識を追い求めているのだ」


 アーシェも相当に変わってると思うけど……。


「もしかして偉大な五体のドラゴン(ファイブドラゴンズ)って変わり者ばっかりですか?」

「ん? どういう意味でかの?」

「いえ、なんでもありません」


 口が滑った。


「ところでこれから先、とくにエールヴァールかドンカークで船を降りたあとは人の多いところも出歩くことになる。襲撃もあるかもしれない」フィクスが真面目な顔で皆を見回した。「狙われているのはレティとアーシェだ。自力でも戦えるレティと違い、アーシェは戦えないんだな?」


 私もできれば戦いたくないんだけど空気を読んで言わない。フィクスが言葉を続ける。


「アーシェは今、どういう状態なんだ?」

「戦えるか、ということか?」

「うん、魔法を使ったり、飛んだりできるのか?」

「余はそもそも魔法は使えぬ。肉体的には今は人間とさして変わらぬ。羽が癒えねば空も飛べぬ」

「なるほど……。例えば攻撃魔法なんかを撃たれた場合に避ける手段は?」

「普通の攻撃はこの体でも効かぬ。あの娘の使っていた古代魔法は分からぬがな」

「そうか、分かった」フィクスはその回答を予想していたようだ。「つまりこの中でもっとも戦闘力がないのはアーシェだね」

「はい」シルックが手を挙げた。「私は簡単な防御魔法でしたら使えます。古代魔法は防げるか分かりませんが」


 私も古代魔法とは、というかクラウディアとはできればもう出会いたくないものだ。


「なるほど。シルックは常にアーシェに付いているとして、陸上での行動中はイリスかレティ、もしくはトールヴァルドの内誰か一人とは必ず一緒に行動するようにして欲しい」

「うむ。分かった」アーシェが頷く。シルックも無言で頷いた。

「そしてこれは後でトールヴァルドにも話しておかないといけないけど」フィクスが私とイリスの方を見る。「できるだけ一人だけでクラウディアと戦わない方が良いと思う。必ず二人以上て当たるべきだ」

「そうね。それは私もそう思うわ」


 イリスの言葉に私も頷いた。


 先がどうなるか分からないけど、こうして原則を決めておくのは良いことだ。もっとも想定通りに動けているとは言えない状況が続いているけど……。


「あ、寝るところはどうするんです? 私たち女性陣とアーシェは別の部屋になることも多いと思いますけど」

「今日みたいに隣の部屋が取れれば大丈夫だろう。そこまで厳密に一緒でなくても大丈夫だよ」

「その場合は女性形になっても良いぞ?」アーシェがニッと笑った。

「……そこまでは大丈夫です」


 どうやら女性にもなれるようだけど、そもそもドラゴンなんだから気にする必要ないよね。


 食事をとった後はペイロの町をぶらぶらしたけど取り立てて見るようなところはなかった。

イリスの目的が少し見えました。


続きは明日です。

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