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魔法少女はおたずね者  作者: 長門シゲハル
序章 転生したら懲役二千五百年でした
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第三話 二日目 牢獄の外、空中 天気晴れ

「きゃああああああああああ!!」


 外に投げ出された私は瓦礫とともに落ちていく。時の流れがスローモーションに感じられる。きっとこれから走馬燈が見えてきて、見終わったら私は死ぬんだろうと思ったのも束の間、


 ……飛行魔法展開(ペトンタス)防御魔法展開(アーミナ)隠蔽魔法展開(アポクリプシー)……


 私の頭に次々と言葉が浮かび、それとともに私はフワッと浮かび上がったような感覚に包まれた。よく見れば、半透明な球の中で私は浮かんでいて、建物だった瓦礫が周りを落ちていく。非現実的な光景に逆に頭が冷めるのを感じた。


「これが防御魔法なのかしら?」


 半透明な球には魔法陣のようなものがいくつも描かれている。魔法陣は赤青黄色とカラフルだ。魔法陣に当たった瓦礫がボンボンと弾き飛ばされている。

 試しにもっと上空へと念じてみると、私を囲う球とともにフワッと上空に浮かび上がった。


「あぁ、建物が!」


 下を覗き込むと私がいたのであろう建物が轟音とともに崩れ落ちていく。周囲では爆発も続いていて、土煙が舞い上がりよく見えない。


 あの看守は大丈夫なのかな?と一瞬考えたけど、そんな場合ではない。


「もっと上まで行ってみよう」私が考えると球はドンドン上昇していく。スカイツリーの展望台より高いくらいまで上に来てみると、ようやく戦場となった牢獄の全貌が見えてきた。


 牢獄だった建物は広範囲で崩れ落ちて土煙を上げている。建物を取り囲んでいた塀は壊されて、二方向からたくさんの兵隊が突入しているように見える。これが、ええとなんだっけ? そうだ、シュタール帝国とハーフルト連合王国の兵隊なのだろう。

 牢獄側、つまりアーベントロート側の兵隊の姿は見えない。もう逃げてしまったのだろうか?


「あちこちで起きてる爆発が魔法によるものなのかな?」


 建物を壊し尽くさんばかりに攻撃が続いている。爆発が起こるたびに、


 ……あれは炎系の攻撃魔法、こっちの爆発は氷系の攻撃魔法……


といった具合に頭に浮かび上がる。そんな解説はいらないんだけど、浮かんでしまうものは仕方ない。


「さて、私はどうしよう?」


 牢獄は完全に落とされ、これでアーベントロートは滅亡ということになるのだろうか。

 シュタール帝国とハーフルト連合王国の両国はレティシア目当てで攻めてきたらしいので、この辺に留まっているとどちらかの国に捕まってしまうに違いない。


「そう言えば、隠蔽魔法とか言われたような気がするけど、今ここにいることはバレていないのかな?」


 ……すぐにはバレなくても、高位の魔法使いがいればいずれはバレてしまう……


 じゃあとりあえずちょっと遠くに身を隠そう。




 しばらく上空を適当に飛んで、山をいくつか越えた先の山中にひとまず降りてみた。もちろんここがどこなのかは分からない。


「方角さえ分からないんだから、レティシアの記憶でも分からないよね」


 靴も履いてないしネグリジェのままなので、飛行魔法を解かずに木々を抜けて地面スレスレまで降りた。奥深い山の中だ。


「たしか、こっちの方角だったよね」


 上空からも山小屋のような建物が見えたのだ。人がいるのかどうかは分からないけど行ってみよう。


「お、あれだ」


 しばらく飛んでいくと木々の間に山小屋が見えた。近くまで行って、私は飛行魔法と防御魔法を解いた。山小屋の前の草地に降りた。山小屋に近づきつつ、周りを伺うと人の気配はないようだ。


「どなたかいらっしゃいますかー?」


 山小屋の扉をノックしてみたけど返事はない。思い切って扉を引いてみると開いた。鍵を掛けてないとは不用心である。


「失礼しますー」


 恐る恐る中に入ると、人が長いこと住んでない家に特有のちょっとカビ臭いがする。誰もいないようだ。

 中はそれほど広くない。ログハウス風の内装に、居間と台所。二階は寝室が二部屋あったけど、布団は収納されている。現状誰も寝泊まりしていないことは確実だ。


「スミマセンけど色々とお借りします」


 とは呟いてみたものの、使えそうな物はほとんどなかった。服はちょっと大きめな作業服ぽい上下があっただけだったので、ネグリジェよりはマシと諦めてそれを借りることにした。綺麗に洗濯されているのがせめてもの救いだが、深緑色の地味な服だ。ダボダボだけど袖と裾をかなり折ればなんとか動けないことはない。靴も大きすぎて歩きにくいけど、何も履かないよりはマシだ。


「はぁ、これからどうしょう……」


 居間のソファーに腰を下ろすと埃が舞った。


「色々ありすぎて混乱してるけど、ちょっと落ち着こう」


 落ち着いて考えてみる。懲役二千五百年、いや後二千四百九十年でアーベントロートの牢獄に収監されていたけど、その牢獄はシュタール帝国とハーフルト連合王国によって滅ぼされた。


「これで私は自由なのかな?」


 そんなことはないだろう。シュタール帝国とハーフルト連合王国はレティシアを欲しがっていたようなので、追手が掛かってもおかしくない。それに牢獄が壊れてもレティシアの罪が消えたわけではないとも考えられる。


「国が違えば法律も違いそうなものだけど、この世界はどうなんだろう?」


 自問しても答えは分からない。レティシアも知らないのだろう。

 どこかに行けば安全に暮らせるのだろうか? 中立で犯罪者を他国に引き渡さない国があれば良いのだけど、そんな都合の良い国があるとは思えない。


「とりあえずこれからどうするか、ね」


 ここがどこなのかはもちろん分からないし、大した距離を飛んできたわけでもないので、追手が掛かっているとしたらあまりノンビリしてられないような気もする。せめてこの山小屋に地図でもあれば良かったのだがそれらしいものはなかった。

 軽く途方に暮れていると、突然頭の中に言葉が浮かんできた。


 ……防御魔法展開(アーミナ)……


 私を包むようにまた球状の防御魔法が展開された瞬間、周囲が閃光に包まれ、大きな爆発音ともに私の周囲を吹き飛ばした。

外に出てもピンチが続きます。


続きは明日です。

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